Replete2
選択肢が少ないと文句を言う。
選択肢が多すぎると文句を言う。
選択をしないのが楽なのか。
選択をする方が充実した現実なのか。
遠くの方を見ながら、常に考えていることはそんなことだ。
「もう一度言うよ」
目の前にいる。人は違うが、別に違いなどない。
同じにしか見えない。
「君のために言っているんだ」
世界は選択権を与えない。世界は選択権を用意するだけ。
窓の外は茜色の空が見えて、繰り返しの景色が見えるだけだ。
「すみません。今日は帰っていいですか。考えるんで」
目の前の人はため息をついて、いつもの言葉を一字一句違わずに言った。
「!!!」
何度目になるか、聞くのも面倒で内容は覚えていない。
繰り返しそのことを聞いていると覚えるらしい。しかし、自分は繰り返し聞く退屈なことは聞かないことにしていた。
だから、内容は覚えていない。
途中まで聞いていて、それから先はただ終わるまで特に興味もなく聞き流す。
「それじゃあ、また明日聞くからな」
一番最後のこのセリフしか途中から最後までのセリフで覚えていることはない。
ドアを開いて外に出る。
窓が何枚も並んでいるその道は、ずっと同じに見えた。
まるで、レールが円を描いていて同じ場所を走っているみたいだ。
誰もいない。
どこにもいない。
一人だ。
「また呼ばれてたの?あんた、あんなの適当に答えておけばとりあえず終わるでしょう。」
いきなり横の扉が開き、カバンが飛んできたと思ったら説教まで飛んできた。
「一人だと思っていたんだが、いきなりモンスターがやってくるとは...」
「誰が、モンスターだ!! あんた、いつまでもうじうじしてないでさっさと書けばいいじゃない」
「なんて?」
「進学」
「?」
「進学って書けば先生だって何も言わないわよ。どうせ私たちのことを真剣にみているわけじゃなくてみてるふりをしてるだけなんだから」
そういえば、前もそう書いた。そう書いたら次の日からは何も言われなくなったんだっけ。
「どうしてだ?」
「?」
「どうして、進学って書けば何も言わなくなるんだ?」
そう言うと、目の前の人はため息をついて目の前にまで顔を近づけてきて
「あんた、バカ。そんなの進学って書いてくれればそれであいつらの仕事は終わりだからよ」
「どういうことだ?」
そうすると目の前の長い髪の人は頭を掻きむしって、それからこちらを見て。
「...そういえば、そうだった。あんたはそういうやつだもんね」
何を呆れているのか。僕にはよくわからない。
「そもそも、何なんだお前は?」
始めてあったと思うのだが、色々と自分のことに対して文句を言ってくる目の前の人をよく覚えていない。
「全く!どうしようもない人。本当に...」
その後は意識がなくなっていった。
「....」
最後のその言葉は....