夏のブレイブストーリー
指定キーワード「異世界、指輪」
夏にまつわるキーワード「祭り」
夏休みに入り、僕は友達3人を連れて近所の祭りへとやって来た。
僕らは祭り祭り言ってるけど、じいちゃんから聞いた話だと、この祭りの正式名称は「異界祭り」らしい。
僕は、薄っ気味悪いな、と心の中で呟いたけど、実際やって来ると、そんな不気味さは全然感じなかった。
会場では、オレンジの提灯が至る所にぶら下がっていて、たこ焼きとか、焼きそばとか、金魚すくいの出店とかが道の脇に並んでいる。
浴衣を着た人らが行き来する中で、僕は親からもらった500円を握り締めて、どの店に並ぼうかと考えていた。
すると、
「おい、アレ、やってみね?」
友達のカブが、クジ引きの店を指差して言った。
僕は、あのクジに当たりがないことはユーチューブの検証動画を見て知ってたから興味無かった。
けれど、他の2人が乗り気になってしまったので、買わざるを得なくなった。
「ちぇ~、ハズレだってさ。 ウミ、ぜってー当てろよ!」
しかし、ウミもハズレ。
結局、僕に全ての期待がかかることとなってしまった。
内心、どうせハズレだよな、とクジの入ってる箱に手を突っ込み、折れ曲がった用紙を手に取る。
それを開いて確認すると、ハズレ、の文字で無く、3番、と書かれていた。
「3番」
「おっ、当たりだよ!」
おっちゃんが棚から掴み取ったのは、PS4…… と見せかけて、その横の小さい指輪だった。
「今年の挑戦者はボウズか。 コイツをはめると、異世界へ行ける。 はめる時は、よく考えてからはめるんだ」
僕らは出店の並ぶ通りの裏へと行って、提灯の明かりの下で指輪をまじまじと見つめた。
古ぼけた感じの指輪で、不思議な模様が彫ってある。
カブが、誰があんな話信じるんだよ、と言ったけど、僕はすぐにその指輪を投げ捨てたかった。
じいちゃんの、異界祭り、という言葉と、指輪が繋がったからだ。
「で、誰がはめる?」
突然、ウミがそんなことを言った。
「そりゃ、持ち主のナツだろ」
ギクッ、として、僕は首をブンブン振った。
「や、やだよ」
「じゃあ、俺がはめるよ」
僕は、この指輪は本物だと半分信じてしまっていて、絶対にやめた方がいい、と言った。
それでも、ウミは乱暴に僕の手のひらから指輪を奪った。
それから数日後、特に変わった様子も無く、ウミとプールに行くことになった。
自転車をこぎながら、僕は後ろに続くウミに尋ねた。
「そういえば、あの指輪、結局ウソだったの?」
「ああ、アレ? ハナに上げちまったよ」
「えっ……」
ハナ、とは、クラスのマドンナ的存在で、僕ら3人はみんなハナを彼女にしたいと思っていた。
僕は、ウミが抜け駆けした事に一瞬、腹を立てたけど、それよりも、とてつもなく嫌な予感がした。
自転車を止めると、ウミも、うおっ、と言いながら急ブレーキをかけた。
「……ハナは、指輪をはめたの?」
「それ、聞いちゃう?」
「ふざけんなよ! はめて、どうなったの?」
「……消えたよ」
ウミが、逃げるように自転車をこぎ始めた。
僕は、ドクドクと動く鼓動の音を聞きながら、その場から動けなくなった。
終わり
読んで下さった方、ありがとうございました!




