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Blackstorm Ship's log  作者: ノアール
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第4話:誤解と和解

 ポートロイヤルに戻ったシンはエメラルド・アイのマスターからヴィンセントの計画を聞く。

その後、ゴートから魔石を救い出したシンはマスターの元へ向かう。

 シンはエメラルド・アイに到着すると開店準備をしていたマスターに事の次第を説明した。

「そうか。それは大変だったな。まぁ、自我が有るならその石の言う通り、安静にしてれば治るんだろう。居場所を提供したい所ではあるが、俺の部屋のベットは女にしか貸し出してないんだ。クラリスの元に行くのはどうだ?少し距離はあるだろうが、お前の部屋もまだあると思うぞ?」

マスターの言葉を聞き、シンは頷くと歩き出す。

「マスター。ありがとう。また来るよ」

「あぁ。疲れただろうからお前もゆっくり休め」

マスターと話し終えたシンは島の坂を登って行き、北へと進む。頂上にある古代の王城をそのまま利用した商業管理所を迂回すると今度は長い下り坂が現れる。

「シスター、怒るかな。うーん。でも、行く場所も無いしな」

シンはそう呟きながら坂を下って行く。シンが坂を下って行くとひっそりと佇む小さな教会が見えてくる。

シンが教会の扉を叩こうとすると中から美しい金髪を陽の光に輝かせながら一人の修道女が現れる。

「キャッ!ビックリした!!何か用?」

修道女に訊ねられたシンは狼狽えながらもこれまでの事を話す。

「なるほどね。で、居場所が無いから帰ってきました。って事ね?全く。そう言う事でも無いと帰ってこないってのは酷いんじゃない?血の繋がりは無いと言っても家族でしょ?何、ボサっとしてるのよ?部屋に上がって少し寝なさい。表の掃除が済んだらお風呂の準備と何か食べる物作るから」

「ありがとう。シスター」

シンはそう言うと礼拝堂を経由してから居住スペースに向かうと階段を上がり、扉を開けて部屋に入る。

そこはシンが子供の頃を過ごした部屋のままだった。

「ここに来ると子供扱いされるからなぁ。まぁ、他に行く宛ても無かったから仕方ないか」

シンはそう言うとコートを脱いで、ハンガーにかけると内ポケットから魔石を取り出し、ブーツを脱ぐとベットに倒れ込む。

シンの重みを受け止めた枕からも毛布からも埃は舞う事無く陽だまりの香りをシンに届けた。

もっともシンはその香りを受け取る前に意識を無くしてしまったが。

シンは夢を見る事無く眠り続けた。そして、意識を取り戻したかの様に目を開ける。

「随分寝てた気がする」

シンが起き上がろうとすると自分の上に何か居るのを感じる。

その重みは決して苦痛を感じるものでは無く、触感は柔らかく、甘い香りを漂わせている。

シンは自分の上に居る存在の姿を見て戸惑う。

「は?何だよ。これ」

その存在は一糸纏わぬ姿でその身全てをシンに託すかの様に抱きつく姿で眠り続ける。

「え?は?俺、一人でここに来たよな?」

シンが狼狽えるとシンの上で心地良く眠っていた存在が目を覚ます。

「んー。ん?ふぁ~っ。あら?起きてたの?」

鈴が転がる様な美しい声でシンの耳元で優しく囁くとその存在は起き上がり、シンの前で腰元まで伸びた美しい黒髪を震わせながらその肢体を惜しむ事無く露わにする。

「お、お前誰だよ?」

シンが戸惑いながら訊ねても目の前の存在はまだ眠いのか欠伸を続ける。

「あら?昨日会ったのにもう忘れちゃったの?海賊って案外記憶力悪いのね?」

シンは目の前の裸の女の姿をした存在が自分をからかう様に話すのを聞いて反論する。

「昨日?それなら人違いだ。俺は昨日、色々大変だったんだ」

シンの言葉を聞くと目の前の女はニコニコと微笑む。

「知ってるわ。私の事助けてくれたもんね」

シンは女の言葉を聞いてもいつ助けたのかわからず、首を傾げる。目の前の女も流石に飽きたのかシンに顔を近づけると唇が触れるか触れないかの距離で言葉を紡ぐ。

「鈍いのね。目の前で船にでもならなきゃわからない?」

女の言葉を聞いてシンは目を見開き、周囲を見渡して魔石が無い事を確認すると目の前の女に視線を戻す。

「お前、あの魔石か?」

シンの言葉に微笑むと女はシンに抱きつき、首に腕を回してくる。シンが背中を3回ギブアップの様に叩くと魔石は悲しそうにシンの顔を見つめる。

「お礼しようと思ったんだけど、好みじゃ無かった?」

シンはきちんと起き上がると魔石に背を向ける。

「そういうのは好きな奴とやれよ。お礼とかでしても俺も何か嫌だ」

シンがそう言うと

「ごめんなさい。男って皆こういう行為が好きなのかと思ってた」

魔石の言葉を聞くとシンは振り向き

「お別れの時にしたキスでそう思ったのか?それで誤解させたなら悪かったよ」

シンの言葉を聞いて魔石は首を横に振る。

「その前よ。貴方、私に魔力を流し込んだじゃない」

魔石の言葉を聞いてシンは首を傾げる。

「確かに流し込んだけど、それがどうした?」

シンが訊ねると魔石は唖然とする。

「貴方、女性の自我が宿ってる物品に魔力を流し込むのがどういう意味か分かってる?」

その頃、クラリスは市場での買い物を終えて居住スペースに戻って来ていた。

「シンも久しぶりに帰って来たし、今夜は沢山ご飯作らなきゃね!」

気合を込めながらキッチンに来たクラリスはテーブルの上のサンドイッチが手つかずで置かれているのを見て

「シンはまだ寝てるのかしら。疲れてるのかもしれないけど一回起こして風呂にだけは入れるか」

クラリスはそう呟くと2階に上がり、シンの部屋の前に立つと中から女性の声がする。

クラリスは訝しみながらも聞き耳を立てる事にした。

「あんなに熱くて濃いのを私の奥に延々と流し込んでおいて今更無かった事にするの?今だってこんなになってるじゃない?」

「バカっ!これは寝起きだから!良いから服着ろよ」

「ここには服なんて無いもの。だから、貴方が脱いで頂戴?そしたら、それに身を包むから」

クラリスは聞いている内に怒りが湧き上がるのを感じる。

「神様。今日のこの日まで私はあの子の判断がどんな結果になろうとも許す気ではいましたが、もう良いですよね?」

クラリスは胸元のロザリオに呟くが当然返事は無い。

「返事が無いってのは承諾って事よね。ありがと。神様」

クラリスはそう言うと2丁のリボルバーマグナムを構えて扉を蹴破る。

「シン!あんた、ウジウジしてんじゃないわよ。お前にとっては一度のつもりでも女は命削るんだ。死ぬまで頭に銀の弾喰らい続けるか、責任取るか選びな!」

クラリスがシンに銃口を向けたのを確認した魔石は魔力でクラリスを斬ろうとするが、シンがクラリスを庇って斬られてしまう。

シンが倒れると2人はシンに駆け寄る。

「とりあえず、話聞け」

シンは起き上がるとベットに座り、動揺する魔石をなだめながらクラリスに今までの経緯を説明する。

「じゃあ、さっきの会話はあんたがこの人に魔力を流し込んだ時の事をふざけて言ってただけって事?」

クラリスが戸惑いながら確認するとシンと魔石の2人は首を縦に振る。

「え?じゃあ、何で裸なのよ?」

「…お礼しようと思って。大抵の男はこういうの好きですし」

魔石の言葉を聞いたクラリスはため息をつく。

「確かにそうだね。でも、シンは私が面倒見てた時期が有るからそこら辺のゲス野郎と一緒にしないで欲しいな。で、何で私を斬ろうとした訳?」

クラリスが訊ねると魔石は一瞬、俯くが顔を上げてクラリスを見て口を開く。

「シンに。私の命の恩人に銃口を向けたから」

魔石の言葉を聞いてクラリスはため息をつくと笑いだす。

「アハハ。ごめんごめん。そっか。そっか。シンの事を守ろうとしてくれたのか。それなら私が悪いかな?ごめんね?えーと。そう言えばまだ名乗って無かったわね?私の名前はシスター・クラリス。クラリスって呼び捨てで大丈夫だよ」

クラリスが名乗ると魔石は困ったように首を横に振る。

「……ごめんなさい。私は魔石だから名は無いの。本当にごめんなさい」

魔石が申し訳なさそうに俯くとシンが口を開く。

「じゃあ、俺が名前やるよ。お前の名前はブラックな」

シンの言葉を聞いた魔石が顔を上げるとすっかり傷の癒えたシンが魔石を見つめていた。

「嫌か?」

シンが訊ねると魔石は泣きながら首を横に振る。

「嫌…なんか…じゃない…」

魔石が泣くのを見たシンは首を傾げる。

「嫌じゃないなら何で泣くんだよ?」

シンが訊ねると魔石は顔を上げる。

「今まで名前を貰った事なんて無かったから。…ありがとう」

ブラックが礼を述べると

「で、その名前の由来は?」

クラリスがシンに訊ねる。

「ん?石の時は真っ黒なのと、この間なってもらった船の名前がブラック・ストームって言うからだな」

「単純じゃない?もっと凝った名前にしてあげたら?」

「良いの。ありがとう。シン。大切にするわ。私だけの宝物ね」

ブラックが微笑むとシンは首を横に振り

「礼は良いよ。だから、早く服着ろって」

シンがそう言うとブラックはクスリと笑うと魔力を何枚もの布の様に纏う。

すると、黒のスーツ、パンツスーツ、黒のハイヒールを着た姿になる。

「どうかしら?以前の主の持っていた服とかを真似てみたんだけど」

シンとクラリスは思わず拍手してしまう。

「とっても似合ってるわよ」

「女物の服はよくわからないけど似合ってると思うぞ」

「ありがとう」

シンの方を向いたブラックは有る事に気づく。

「あら?シン。貴方、服破けて無かった?」

ブラックが訊ねるとシンは頷き

「あぁ。俺の服は特注品でね。俺の髪の毛を織り込んでるから治るのさ」

そう言うとシンの腹が鳴る。

「腹減ったな」

シンの言葉を聞いたクラリスは思い出した様に

「そうよ。今晩、何食べたいか聞こうと思って上がって来たのよ。二人共何食べる?」

クラリスの問いにシンは

「多分全部食い尽くせるくらいには腹減ってると思う」と答える。

「そう。言ったわね?残したら怒るからね?」

クラリスはそう言うと上機嫌で下に降りていく。

「あ。何か手伝いましょうか?」

ブラックも後を追う様に階段を降りていく。

シンは2人を見送ると背中からベットに倒れ込む。

「腹も減ったけど朝まで寝れる位には疲れた」

シンが呟くと階下から声が響く。

「シン。ご飯の前にお風呂入っちゃってー!」

「わかった!」

シンはそう言うと起き上がり、楽な恰好を選択してから部屋を出て階段へと向かう。

「やっぱり、ここに来ると子供扱い受けるな」

そう呟くと浴室へと向かうのだった。

 4話目読了感謝です。

今回に関しては友人の趣味も私の趣味も全快なシチュエーションでした。

多分R-15で出して問題無いと思うのですが、「ここヤバいよ」って箇所があったら教えてもらえると助かります。

今回はほのぼのしましたが、次回以降は冒険へ向かいますのでご期待ください。


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