その54
◇◇◇◇◇◇ その54
「我が国のパオ代表がお会いになります。」
健一と涼子は、
「そんな大物が何の用があるんだ。」
と思ったが、口に出すわけにはいかない。やがて、堂々とした体躯の男が現れた。
「N国のパオです。よく来てくれました。いささか強引な手を使って済まなかった。」
「我々をここまで連れてきた理由はなんなのでしょうか。」
「それは、信じてもらえないかもしれませんが、女神様をお招きしたかったからなのです。」
「それなら日本に正式に依頼すれば済むことではないでしょうか。」
「お願いしたのだが、日本の正式回答は女神など存在しない、よって依頼をお受けすることはできない、という回答でした。」
「ふーん、そうなんだ。」
「それで誠に失礼だったのですが、女神様に絶大なる影響力のあるとされているあなたがたにこちらにおいで頂き、しかる後に交渉しようと考えたのです。」
「それで我々を誘拐したと。」
「誘拐と言われると心外ですが、事情はおわかり頂けたでしょうか。」
「まあ日本政府は誘拐か拉致と考えるでしょうね。いずれにしても、日本と大きな外交問題になる可能性があることが予想できるのに、なぜそこまでして女神様をお招きしたかったのですか。」
「それは、このN国には八百万の神という思想はありません。その思想を持つ日本がとてもうらやましかった。本物の神に会いたかったのです。」
「パオ代表の気持ちはわかるます。しかし、こんなやり方をすれば、大変なことになりますよ。」
東谷健一と涼子を拉致したN国は、大胆にもM企画諏訪事務所を訪れた。そしてN国エージェントは彗星伝説の二人の身柄をN国が拘束したことを御鏡静奈に告げた。一通り事情を聞いた静奈は、
「二人に会いたいな〜、どうすればいいの〜。」
と冷静に聞き返した。
「N国には静奈様を国賓待遇でお迎えする準備があります。我々と同行していただければお友達に危害が加わることはありません。」
「そっか〜、ならすぐに行きましょ〜。」
と即決即答でN国エージェントの提案に同意した。。




