その49
◇◇◇◇◇◇ その49
「それは・・」
浅野和子の余裕の表情がみるみるうちに曇り、険しくなる。
「今度こそ、観念しなさいね。これは某国では合法品でも日本では違法なドラッグじゃないかしら。」
「・・・」
現物を示されて言い逃れができないと観念したのか、和子は下を向いたまま返事をしない。
「浅野和子、輸入規制法および薬物取扱法違反容疑で逮捕する。」
涼子が和子に近づき、手錠を両手にかけようとした。
「ふふふ、何度もわなにかかる彗星伝説って相当のおばかさんペアなのね。」
浅野和子はそういうと、健一と涼子を突き飛ばして、コンテナの外に出た。
「待て、逃げてもすぐに捕まるぞ。」
健一はそういうと和子を捕まえようとしたが、するりと逃してしまった。
「じゃあーねー、お二人さん。」
そういうと浅野和子はコンテナのドアを締めた。
「がちゃん。」
外からドアをロックする乾いた音が倉庫内に鳴り響く。
「くっそー、はめられた。」
健一の悔しげな叫びがコンテナ内に響き渡った。罠にかかってコンテナに閉じ込められるとは、M機関員として彗星伝説としてこんな不名誉はない。
「健一さん、じたばたしてもしょうがないよ。なんとかなるよ。」
「涼子がそう言ってくれると助かるけどね。」
あっさり閉じ込められた二人は悔しいには違いないが、自分たちを誘拐して何の得があるか、疑問を感じた。
「あっ、コンテナが動き始めたようだ。」
がちゃんと大きな音と衝撃音が響いた。二人を閉じ込めたコンテナはフォークリフトに載せられたらしく、若干傾いたまま、ゆっくりと移動を開始した。
#N国に向けて
着の身着のままコンテナ内に閉じ込められたので、二人の持ち物は没収されていない。浅野和子はよほど自信があるのか、所持品を取り上げなかった。おそらくすぐに海外へ連れ去るつもりなのであろう。




