その2
◇◇◇◇◇◇ その2
涼子は探偵物のアニメや推理小説の影響を受けて、高校生の頃から探偵の真似事が大好きである。友達から頼まれて解決した事件もいくつかある。夫の健一とは国を揺るがす数々の事件を通して知り合い、意気投合して結婚したのである。
*フォーチュン
シャワーを浴びて寝室で着替えると涼子は大判のタブレットに向かう。涼子はSNSにログインするためにアイコンを指でクリックする。ネットを見るだけならスマートフォンを使ってもいいが、画面が小さくて見にくいときがある。そんなわけで家にいるときは、タブレットを使うことが多い。
タブレットは健一が買ってきた。夫の健一は帝都大学主席卒業の秀才だ。趣味にもしている情報系はお手のもので、タブレットやパソコンなどの情報ツールは大得意である。そんな健一は大学卒業後は国家公務員キャリアとして財務省あたりに華々し就職する予定であった。まあいろいろあって、今はM企画長野県諏訪西部支所所長である。所員は妻の涼子と御鏡静奈の二人である。御鏡静奈はふらふらと勝手な行動をすることが許されており、通常業務は夫婦二人でこなしている。
M企画は政府から依頼された統計業務を主な収入源とし、健一の裁量でそのほかに探偵業務も行っている。浮気調査が多いがパソコンの知識を買われて産業スパイの追跡調査依頼もある。警察から極秘で頼まれて調査する事もある。これでも健一は優秀なのである。
健一が涼子専用にブラウザを設定してくれたので涼子のタブレットはすぐにネットワークに接続した。ネットワークへの接続はwifiから光ファイバ経由で行う。wifiと光回線は光モデムと呼ばれるボックスを介して接続されているが、通信が始まるとモデムの状態を示す色とりどりのインジケータランプが明滅し、幻想的な雰囲気を醸し出す。涼子はこのランプを見ているのが大好きである。
涼子が主に利用するSNS=ソーシャルネットワークサービスは「フォーチュン」という名前のサービスで国内でも最大手だ。友人も多数フォーチュンを利用しているので、連絡にはフォーチュンを使うと電話より確実で便利である。
SNSにはメッセージと呼ばれるサービスが大抵使えるようになっている。メッセージは自分のタブレットに打ち込んだ短い文書を手軽にやりとりできるサービスである。確認すると既読マークがつくために読んでもらえたかどうかを確実にチェックでき、利便性は高い。今では必需品となっている機能の一つである。