その19
◇◇◇◇◇◇ その19
警察組織も例外ではない。警察に採用され、警察学校に入学すると最初に教えられることがある。
「M機関からの命令や要請は全て最優先で行うこと。」
二人は既にいくつかの国家レベルの事件を解決した実績がある。難事件が発生した時に現れて見事に解決する二人を関係者は密かに彗星伝説と呼んでいた。
署長は初めてのM機関からの要請に戸惑いつつも、
「担当刑事を紹介します。」
とようやく正気に戻り、小沢を呼んだ。小沢刑事は、
「今、署長室を出たばかりなのに。」
とぶつぶついいながら部屋に入って来た。
「小沢君、M機関のお二人だ。彗星伝説は知っているな。」
健一と涼子はスーツのポケットからM機関手帳と拳銃をを出し、小沢の前に並べた。
手帳にはM機関員証がさんぜんと輝いている。拳銃も小沢がこれまでに見たことがないタイプである。二人がマンションで金庫から取り出したのはこれらの道具であった。
あこがれの彗星伝説の二人を紹介された小沢刑事は改めて二人の顔を見て、腰が抜けないばかりに驚いた。二人は東谷健一と涼子だったのである。
「お二人が彗星伝説だったのでありますか。」
小沢刑事は放心状態で尋ねた。
「いや、一人足りませんけどね。」
健一が答えた。
「彗星伝説は3人なのでありますか。」
「まあ、今は実質二人です。」
なぜか歯切れが悪いように聞こえた。
「いずれにしても、今までのご無礼をお許し下さい。」
「小沢刑事の洞察力と熱心さには脱帽しました。」
健一が小沢をなぐさめた。
「この事件にはSNSが深く関係しています。今後のSNS犯罪の撲滅のために全力を投入するつもりです。」
涼子がすましてアピールしている。健一はソファに腰を降ろした。
「署長さんはお忙しいと思いますから、この辺で結構です。今後、この小沢刑事は私達の直属で動いてもらいますがよろしいですね。」
「いくらでもこき使って下さい。では失礼します。」
署長はあわてて退室した。