その17
◇◇◇◇◇◇ その17
#小沢刑事
まんまと二人に逃げられた小沢は諏訪西部署へただちに連絡し非常線を張った。同時にマンションの家宅捜索を緊急に実施した。
「それらしい物は特に見つかりません。」
部下の報告を受けた小沢は
「ふーむ。」
と考え込んでしまった。
「珍しい金庫を見つけました。見たことがない鍵がついています。」
小沢が見るとその金庫はカギとパスワードを入力してようやく開くタイプで、既に中は開いていた。
「こんな厳重な金庫は本部でしか見た事がないぞ。」
小沢は首を傾げたがそれ以上調べても新たな発見はなかった。
小沢は署へ帰るとテレビをつけた。
「女性経営者殺害事件の重要参考人宅の家宅捜査では特に発見はなかった模様です。逃亡した参考人の行方はさらに警察が追求中です。」
「えっ。」
まだ署長にも正式な報告をしていないのにもうニュースに結果が流れている。捜査した当の本人がきつねにつままれた心境になった。
「署長、どういうことです。」
小沢は署長室に駆け込んだ。
「私もびっくりしているんだ。」
「誰かが、情報をマスコミにリークしているんじゃないですか。」
小沢はかっかしている。
「一番この事件に詳しいのは君だぞ。」
署長に言われて小沢ははっとした。
「東谷夫婦は犯人にはめられたのか。」
「小沢君、この事件は情報社会の弱点をついた新しいタイプの犯罪のようだな。」
署長が思案顔で小沢に言う。