その16
◇◇◇◇◇◇ その16
「私とうとう念願のルポライターになれたようね。でもこれじゃ私のことだってすぐにわかっちゃうじゃないの。」
涼子は一人歩きする事件に恐怖を覚えた。SNSを使えば無実の人間を犯罪者に仕立て上げるくらい造作のないことである。
#活動開始
「私許せないわ。」
涼子は健一に向かって言った。
「健一さん、徹底的にやりましょう。久しぶりでわくわくするわね。」
「じゃあ、お仕事スタート!!。」
健一はタブレットを操作し、仕事用サイトに接続する。
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>ID:suisei
>PASSWORD:PG??????
健一は本部に承認要求を行う。
>M機関諏訪西部支所 活動開始承認要求
>了解
「これでよし。」
健一は涼子に向かっていった。
「さあ、M機関として仕事を始めよう。」
健一は随分とあごに蓄えたしまった無精ひげをそり、シャワーを浴びた。さっぱりすると仕立てのいい上品なスーツを着用し、ネクタイを絞め、髪を整えた。するとさっきまでとは別人の健一が出現した。
涼子もスーツを取り出すと感触を楽しみながら着替えた。時間をかけて念入りに化粧をし、普段は雑に結んでいる髪をふわっとさせるヘアーメイクを施すと立派な出来る風OLの誕生である。
サングラスをかけると健一でも涼子とは判別できない位の見事な化けっぷりである。
二人はホテルのフロントに電話するとタクシーを呼んでもらった。
「どちらまで?。」
運転手の問に健一が行き先が書かれたメモを渡すとタクシーは勢いよく走り出した。