その14
◇◇◇◇◇◇ その14
涼子は健一と一緒に席を立ち、寝室へ着替えに入った。
「どうぞ、ごゆっくり。」
ここはマンションの三階である。とうてい逃げる事はできない。それが分かっているので小沢刑事は余裕しゃくしゃくである。
#逃走
涼子は寝室内にあるクローゼットに入ると着替えを始めた。その間に健一は寝室のベッド下にある金庫の鍵穴に鍵を差し込み扉を開けると、中に入っている道具を取り出す。涼子にも渡すとそれらを身に付けた。
「時間がないぞ、急ごう。」
健一は寝室の窓を開けるとロープを下までたらす。
「涼子から降りろ、早く。」
荷物を先に下ろすとと涼子を先に行かせた。続いて自分もロープを掴んだ。ロープの下には車が止めてある。そのとき、小沢がドアに体当たりして中に入って来た。
「畜生、逃げたぞ。下だ、追え。」
二人が逃げたことを知った小沢刑事は慌てて部屋を出て下へ降りた。
「刑事さん、ばいばい。」
健一は余裕で車を発車した。二人は涼子の微笑みを残して、ゆうゆうと小沢の前から姿を消していた。
#ラブホテル ローヴ
小沢の前から姿を消した二人は50kmほど離れた松木市にあるラブホテルローヴにもぐりこんだ。部屋に入り、扉を閉めた後、健一は涼子に向かって言った。
「涼子、お前は犯人と断定されたらしいな。」
「第一発見者をまず疑えとよくいうけど、最後に会った人間も疑われるのかしら。」
涼子は不思議に思った。
「それに昨日の夜死んだみどりの捜査を始めるにはちょっと早すぎるんじゃない。日本の警察ってそんなに迅速だったかしら。」
一息ついてようやくいつもの冷静さを取り戻した涼子は探偵として頭が回転を始めたらしい。
「私とみどりの接点は、」
「いいぞ、いいぞ。」
健一が合の手を入れる。
「中学以来の同級生であること、そしてSNS!。」