その11
◇◇◇◇◇◇ その11
「おい、おい、ちょっと待てよ。わかるように説明してくれよ。」
涼子はボンから続く興奮がまだ収まっていないようであった。涼子は手短にみどり、和子とのやりとりを健一に説明した。
「ふーん、それはマルチまがい商法じゃないのか。」
話しを聞き終わると健一は涼子に言った。
「私も十分警戒はしていたんだけど、洗剤を顔に塗ったあたりでめろめろになってしまったの。」
「SNSを使った新手の商売だな。」
健一は分析を続けた。
「勧誘はSNSのメッセージを使って家に居ながら行う。」
「そうそう、私のように昔の同級生なんかはいいターゲットだよね。」
「これぞと思った相手は直接会って最後の駄目押しをする。」
「私はどうしてターゲットにされたの?。」
「将来はみどりのシステムの幹部にしようと思ったんじゃないか。」
「それは光栄だわ。」
「涼子が引き込まれそうになるなんて和子さんもなかなかの商売上手じゃないか。」
「本当に話しが上手だったわ。それに楽をして儲かりそうな気がしてくるんですもの。」
涼子は健一と話しているうちに大分落ち着いてきた。
「こんなに疲れたのは久しぶりだわ。さあ、寝ましょ。」
健一はぎくっとした。涼子がこういう時は決まって激しく燃える時なのである。
「本当に寝るんだぞ。」
涼子を牽制しながら二人は寝室へと消えて行った。
#小沢刑事
次の日、昼近くまで眠っていた二人は突然の
「ピンポーン。」
というチャイムに起こされた。
「おい、涼子。お前出ろよ。」
パジャマのままの健一に言われて、運悪く着替えたばかりの涼子はしぶしぶと玄関に向かった。
「はい、どなたですか。」
涼子はインターフォンに話した。
「諏訪西部警察署です。ちょっとここを開けてもらえませんかね。」
相手は若い男のようだった。
「何のご用ですか。」
「開けてもらえれば直接話しますよ。」
慇懃無礼の見本のような話し方をする男だ。本当に警察官だろう。
「しばらくお待ち下さい。」
涼子は急いで寝室に戻ると健一を起こした。
「健一さん、警察が来たよ。」