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魔法少女は魔法を使えない  作者: アーナ
魔法競技大会編
8/10

第七話

そんなこんなで、大会初日。


地力の強さが生かされる形となり、私達は順調に勝ち進んでいた。

カフィル君のノーコンがある程度見れる形になったのも効いている。威力はあるので、狙いが多少大雑把でも余波だけでそこそこのダメージを与えられるのだ。


防御は途中から私に一任され、補佐に付いていたオナモミさんも攻撃に回っている。それだけでも他チームにとっては脅威である。なにせ、通常、攻守のバランスは半々、あるいは4対2である。それが、5対1。攻撃人数が多すぎる。守備側の手が回らないのは当然だ。


結局、試合展開は殆ど一方的と言ってもいいものだった。

敵チームが私の防御を抜けず、まごついている間に柱を壊される。その繰り返しだった。


回が進んでくると、戦略を練られる事も有ったが、結果は変わらない。


いっそ無駄な程に硬い防御壁はどんな魔法攻撃も物理攻撃も通さない。

とはいえ、杖に乗って空を駆け回る機動力の無い私は、試合開始と同時に柱の上に陣取って防御壁を張り続けているだけである。なので、後ろから全体を見据えて少し指示を出したり、少しばかり皆の援護をしたりする。


「ミモザ先輩、右翼が押されています。援護をお願いします。」


カフィル君に迫っていた水の刃を魔力弾で叩き落としながらミモザ先輩を誘導する。


「ありがとうございます、シトラスさん!」


律儀にお礼を言うカフィル君に軽く手を振って答える。


オナモミさんも攻撃に上がっている今、我がチームの布陣としては、右翼をイケマ君とカフィル君、中央をミモザ先輩、左翼をオナモミさんとマロウさん、そして後方に私という各所のバランスを重視した隊列を組んでいる。


私の防御の硬さは既にチーム内に刻み込まれているので、五人は多少攻撃が抜けて行っても気にしない。むしろ、受け切れないと判断すると(わざ)と流す事もある。無理に受けて怪我をされても問題なので妥当な判断だ。事実、これまでの試合で我がチームは損傷ゼロという脅威の記録を叩き出している。


ピーーー!


試合終了の笛が響く。


今回も私達は損傷無しで乗り切った。


「勝者、エルダロッサチーム!」


審判の声が勝者を告げ、会場が湧く。


「すげえ!あのチームまた完勝だ!」


「硬すぎるだろ、あの防御魔法!?」


「一体何級なの、あの子?!」


湧き上がる会場の空気に当てられるようにして私達も勝利を噛み締める。


「やりました!凄いです!」


「さすがシトラリーシェ。危なげもありませんわね。」


「いや、本当にすさまじいな、君は!国家Ⅲ級とはここまでのものか!」


仲間内からの称賛に苦笑いで答える。


「これ以外にはできませんから。」


「だとしてもすごいですよ。その量の魔力を制御しきるのは並大抵の努力ではできません。シトラスさんはもっと誇ってもいいですよ!」


その自嘲にカフィル君が食いついてくる。


「そうだぞ、シトラリーシェ。それほどの技量を持ちながらどうして君はそんなにも自己評価が低いのだ。」


さらにマロウさんまでもが食い下がる。


「あー、何と言いますか……。一応、自覚はありますよ?」


「皆さま、次の試合があるのですから早くお下がりなさいな。次はいよいよ決勝ですのよ。」


ミモザ先輩がおしゃべりに興じる私たちに注意する。確かにコートの端でおしゃべりしていては次の試合のためにコートを整備する係員に迷惑である。


大人しく控室へ下がる私たちを観客のいまだ興奮冷めやらぬ声が見送った。





控室へ戻り、備え付けのテレビへ目を向ける。コートの様子が映し出されているそこでは、ちょうど別ブロックの準決勝が始まるところだった。この試合で勝った方が決勝で私たちと当たるのである。


「全体的にバランスの取れたチームですのね。珍しい。」


ミモザ先輩の言うことももっともである。

この大会、チーム編成がランダムであるために結構尖ったチームができることが多い。チームメンバー全員得意魔法が同じだった、とか、割とあるのだ。


その中で、そのチームは攻守のバランスも、個々の得意魔法の属性も程よくばらけており、堅実に強い、という印象を与えた。


「ああ、それにあの者は強いぞ。」


マロウさんが見据えるのは中衛位置で攻守両方をこなしているマルチプレイヤーだ。一撃一撃が重く、魔力がよく込められているのが分かる。そのプレイヤーの魔法が当たると、相手方の防御が大きく削れるのが画面越しでも伝わった。


「そいつだけじゃなくて、他のプレイヤーもレベル高いな。」


イケマ君の言葉に頷く。


「大体戦略Ⅰ級かⅡ級、ってところですかね。問題のプレイヤーは国家Ⅰ級だと思います。」


使う魔法の規模から推察した相手チームの魔法級はそんなところだろう。


「ひええ、国家級が二人もいるんですか、この大会……。」


国家級の魔法使いは全魔法使いの1%と言われている。それが二人もいるとはなかなか珍しい事だった。


「国家級って特別研修みたいなのありますわよね?知り合いだったりしませんの?」


ミモザ先輩が問う。


国家級の魔法使いはその力の強大さから危険視されがちで、年に何度か研修を受ける義務がある。人数が少ないのもあって王都近辺の国家級同士は大体知り合いなのだが……。


「うーん、知らない人なんですよねえ、それが。まあ一般の部ですから外部の人も当然来るんですけど、私大体把握してるんだけどなあ。」


「そうですの。まあ、試合に素性はあまり関係ありませんわ。シトラリーシェ、防げます?」


端的な問いには気軽く返す。


「はい、それは大丈夫です。実力隠してて実は国家Ⅲ級です、とか言われない限り抜かれはしないと思います。ただ、念を入れるなら何本か捨てるっていうのも手だとは思いますね。他のプレイヤーも強いので皆さんの支援と両立させるのが試合の運びによっては難しくなるかもしれません。」


「そう……。なら、それは貴女の判断に任せますわ。ひとまずの戦術は今までと変わらず、数で押し切るということで。ただ、これまでの試合と違って相手の魔法の威力が無視できませんから、場合によっては一発で試合不能判定を出される可能性もありますわ。」


プレイヤーにはそれぞれチームの番号が振られたワッペンが配られている。これには身代わり魔法が付与されており、攻撃を受けるとワッペンにダメージが蓄積する。そのダメージ量が一定を超えると試合続行不能、という判定を下され、その後試合に参加できなくなる。ダメージ量は試合ごとにリセットされるが、もともと少人数でやる競技であるが故に、一人でも抜けるとその穴を埋めるのは難しい。


その後、順調に進んだ試合は予想通り、国家級魔法使いを擁するチームが勝った。


「順当ですね。」


「ええ。ですがわたくし達がこのまま順当に勝ち上がれるかどうかはわかりませんわ。皆様、気を引き締めてくださいな。」


私の呟きにミモザ先輩が頷き、気合を入れる。





コート整備を含めた20分の休憩が終了し、私たちは再びコートに立つ。これまでと同じ、前衛をイケマ君とオナモミさん、中衛をカフィル君とマロウさん、中央で右翼と左翼のどちらも支援するミモザ先輩に、最後衛で防御に専念する私、という今まで通りのポジションを取る。


対する敵チームも先程見た試合と変わらない配置である。前衛、中衛、後衛それぞれ二人ずつの最も基本的な配置。


九本の柱のうち、前列中央の柱に登って全体を俯瞰する私と、敵チームのプレイヤーたちの視線がかち合う。


ポーン、と電子音が鳴り、試合開始のカウントダウンが始まった。


3、2、1……ピーーーッ!!


高らかな笛の音と共に、決勝戦の火蓋が落とされた。

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