入学式2
無事、入学式が終わり、私は生徒達を先に教室に戻らせ、国王と対峙した。
「久しぶりだな、ヨウイチ。」
「ああ、ずいぶんと久しぶりだな。もう30年くらいか?老けたな、ヴェスタ。」
「其方は変わってないな。本当に人族なのか?」
「あー、どうだろう。ステータスにはまだ『人族?』って書いてるぞ?」
「なんで?が付いてるんだよ、、、。まぁいい。ここに残っていると言うことは何か聞きに来たのだろう?」
「あぁ、その通りだ。なぜ勇者集団を召喚したんだ?一人の方が強くなるのはお前も分かっているだろう?」
勇者召喚をした際、勇者は女神からチートと加護を貰うのだが、女神の加護は与える人数が多いほど効果が薄くなるのだ。
例えば、女神から範囲魔法の効果範囲が1000㎡ 広がる加護を貰うとする。
一人であればそのまま1000㎡
二人であれば一人900㎡ ずつ
三人であれば一人800㎡ ずつ
といった感じだ。今回は分かりやすくこう説明したが、実際はチートより強い加護のほうが多いのだ。
だが、今回は28人も召喚したのだ。加護の強さは戦闘力に大きく関わる。今代の勇者個人の戦闘力は一人で召喚された場合の戦闘力の1/28程度だ。
問題はソコであってソコでは無い。一番の問題はなぜ勇者召喚する際に一人ではなく沢山召喚したのかってところだ。
私が聞くと国王は左手で後頭部をかき、申し訳なさそうに
「いやぁ、俺もそう思ったんだけどな?ステイシアがな?」
と言った。
ステイシアとは目の前にいる国王、ヴェスタの娘。つまり第一王女である。性格は我儘で自分勝手。正直なところあまりお近付きになりたくない苦手なタイプである。
「はぁ、おおかたお前が勇者召喚の準備を終え、召喚の儀式をする前夜にステイシアがやらかしたんだろ?」
「弁明の余地もない。」
彼女のことだ。勇者を沢山呼べば魔王なんて簡単に倒せるんだろうと思ったんだろう。
「はぁ。お前も分かっているだろう?そろそろだと言うことが。」
「分かっていたんだが、まさかやるとは思わなかったんだ。、、、どうしよう?」
「、、、、まぁ、なんだ。世界が壊れないよう私も少しだけ動くから。その他のことは知らん。」
「だよなぁ、、、はぁ。」
「じゃ、もう行くから。次会うときまで死ぬなよ?」
「ストレスで死にそうだ。」
「ははっ!」
深々と椅子に座り、こめかみを押さえている国王を置いて私は教室へと向かった。
教室のドアを開けると勇者たちが何か言いたそうにこっちを向いていた。が、誰も口を開くことなく私は教卓の上に立っている副担任、セレスのもとへ向かった。
「ご苦労さ「遅い」、、、ん」
セレスは夕焼けのようなオレンジ色の長い髪の間から真っ赤に燃える目で私を睨んだ。
「悪いな、今度何か奢るから。」
「、、、、許す」
「ありがと。ってことでその魔法解いてくれないか?」
「、、、ん」
セレスが魔法を解除したのを見て私は口を開いた。
「私はアリス・タナカ・ヨウイチ。元日本人だ。」