入学式
「一人じゃない?じゃあ、何人だ?」
「それが、全部で28人だそうです。」
28人か、、、クラス転移ってやつだろうなぁ。
「つまり、そういうことだろう?」
「はい、そういうことです。」
私の確認にユー坊ことユーリスト・ワーグナー学園長は笑みを浮かべて頷いた。
つまりはそういうことだ。私が勇者達の教師になれと。
「失礼しまぁす‥‥」
1人の生徒が誰もいない教室へと入り、その生徒を皮切りに他の生徒も全員が教室へと入った。
それぞれの席には生徒の名前が書いてあり、机には白いペンと紙が置いてあった。生徒たち28人はそれぞれ自分の席に座って、置いてあるペンと紙を手に取って見てみた。
「なんだこれ?書けねぇぞ?」
クラスのムードメーカーである焔 勇太がペンの試し書きをしようとしていたのだが、書けなかった。
他の生徒も勇太の声を聞いて紙に書こうとペンを滑らせてみたが、インクが出る気配がなかった。
「何これ、不良品?」
「いやいや、一クラス全部不良品って事はないでしょ‥‥」
「じゃあ、なに?嫌がらせ?」
「いや、そんな訳ないでしょ。この大陸で一番だって王様も言ってたじゃない。」
「いや、それよりもこのペンの形状に突っ込もうよ!」
「「「あっ!」」」
1人の生徒の声で全員が気づいた。このペン、地球にあるペンと形がもの凄く似ているのだ。
「これって私たち以外にもこの世界に来た人がいるって事だよね。」
「だろうな。」
「その人って元の世界に戻れたのかな?」
「どうだろう。王様達は魔王を倒せば帰れるって言ってたけど。」
そのとき、教室のドアが開いた。
「はい、席に座れ〜」
銀髪碧眼の女性が気怠げにドアから入ってきた。この人がこのクラスの担任なんだろうと生徒は思った。
「うん、全員座ったな。このあと、入学式があるから、少しだけ話をしようか。おはよう、若き勇者たち。私はアリスだ。家名は今は伏せておこう。さて、君たちの自己紹介は入学式の後にやってもらうよ。
この後の入学式の動きについてだがーーーーー」
「ーーーとまぁ、ここまで長々と話したが、簡単に言うと入場した後、司会の合図で座ったり立ったりを繰り返すだけだ。」
私が話し終えると同時に教室のドアがノックされた。
「アリス先生、お時間です。」
「わかった。んじゃ、これから入学式の会場に行くから並んでついて来てくれ。」
そう言って私はドアを開け、会場へと向かった。その後を勇者たちが二列で並んで付いてきた。流石日本人というべきか、綺麗に並んでくれている。
入学式が恙なく終わり、最後に勇者たちクラスの担任の紹介をした。普段はこんな事しないのだが、この国の運命を決めると言っても過言ではない者たちを育てる為、その役割を担う者が誰なのか皆、気になるとようだ。
「それでは最後に今回、勇者たちを育てる役割を担った教師を紹介します。今回、勇者たちを育てるのはアリス・タナカ・ヨウイチ先生です。アリス先生、こちらへ。」
私の名前が呼ばれたことで様々な所から驚きの声が上がった。貴族たちからは学園の守り神である私が教師を担当することを知り、この国は安泰だと安堵し、平民からは面倒くさがりの私が教師をすると聞いて不安に思い、勇者たちからは私の名前が日本人に居るような名前なので驚いたのだろう。
「彼女は数十年前に災厄、スタンピードが発生した際、魔物陣営の9割を壊滅させるなど、数々の歴史に名を残すような快挙を成し遂げた方です。今回、勇者たちを育てるのにこの方以上の適任はいないでしょう。では、彼女に一言いただきましょう。」
司会は私が壇上に上がった後、私の説明を軽くした。
「えーっと、アリスだ。あまり言うことは無いけど、これだけは言っておく。『勇者』にあまり頼るなよ。以上だ。」
それだけ言って私は頭を下げた。




