35話補足:古事記とマグロの日
日本史に出てくる水生生物の名前で有名な人といえば、蘇我 入鹿。
この人の名前はイルカからきていると言われています。
昔、一時期、海の動物の名前をつけるのが流行っていて、平群 鮪という人なんかもいます。(シビ=マグロの古い呼び方)
この平群鮪さんは武内宿禰の子孫ですが、日本書紀と古事記では微妙に扱いが異なります。
古事記では平群 志毘と書かれ、大魚姫を巡った恋争いで出番があります。
歌垣(昔の合コンみたいの)でイラっとした顕宗天皇にその日のうちに夜襲され、サクっと殺されます。志毘、いとあわれ。
日本書紀では平群 鮪と書かれ、すでに付き合っている鮪と影媛の間に横恋慕した武烈天皇(顕宗天皇の甥)に殺されます。影媛、いとあわれ。
(武烈天皇は直系が絶えた関係で悪く言われがちなんで、どちらかというと古事記のほうが信憑性があると思います)
ところで、10月10日はマグロの日でした。
日本鰹鮪漁業協同組合連合会が1986(昭和61)年に制定したものです。
マグロの日の由来には、万葉集の歌が挙げられますが、そのなかにはのマグロの歌が2首。
このうちの片方、大伴家持の歌は上記の事件に出てきた歌を本歌としているという説があります。
『鮪突くと 海人の燭せる いざり火の ほにか出でなむ 我が下思ひを』
現代語訳(鮪を突くとて海人が灯している漁り火のように、表に出してしまおうか、私の秘めた心を。)
※大伴家持は、この事件に巻き込まれた大伴金村の子孫。