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41.王弟殿下の追及 その1

サブタイトル変更しました。

 王弟殿下に『聖魔の書』の呪いの力を使ったことがバレないよう少し離れた場所に転移するはずが、僅か1メートルという本当に()()()()離れていない場所に転移してしまった私は、イマイチ状況が呑み込めずにいた。



「えーと、これは一体どういう事でしょう……?」


「それは、俺が聞いてんだよ」


「……………」



 着地に失敗し、不様にも地面に倒れ込んでしまった私を見下ろす王弟殿下からは、怒りのようなものがひしひしと感じられる。

 下手に言い訳しても火に油を注ぐだけなのはわかるが、本当の事を言うわけにもいかない。


 とりあえず当たり障りのないことから答えよう……。

 最初に聞かれたのは、何でこんな真似をしたのかということと、何で遅くなったのかってことだったよね……。


 遅くなった理由もあまり言いたくないが、使った魔法についてよりはまだ説明しやすい。


 しかしその前に、まず謝罪をするべきだということにようやく気付いた私は、身体を起こすと王弟殿下の前に跪き、軽く頭を下げた。



「戻ってくるのが遅くなってしまい、申し訳ございませんでした」


「謝罪はいい。──で?」



 わぁ、怖い……。

 王弟殿下は相当怒っていらっしゃる模様。

 絶対に顔は上げられない。



「実は小枝拾いに夢中になるあまり森の奥深くまで入り込んでしまいまして……」


「──それで?」


「……ここに戻るためにずっと森の中を歩き回っておりました」


「……はぁ……。──お前アホだろ?」



 盛大なため息と共に呆れたようにそう言われたが、本当の事だけに返す言葉も見つからず、ただ黙って俯くしかなかった。



「顔を上げろ」



 その呼び掛けに、私はビクリと肩を震わせる。

 本格的な説教が始まる気配に怯えながら、私は仕方なくおずおずと顔をあげた。


 ところが、私の予想に反して王弟殿下の表情は意外にも怒っている訳でも馬鹿にしている訳でもなく、至って真面目なものだった。



「俺を真っ直ぐ見ろ。アーサー・ロイド」



 青い瞳に真っ直ぐ見つめられ、こんな時だというのに不覚にもドキリとさせられる。

 再会してからの王弟殿下は口を開けばチンピラのようだとしか思えなかったが、こういう表情を見せられるとさすがは見た目だけなら理想の王子様との呼び声高い王弟殿下。私の中の無くしたはずの恋心がまたしても少しだけ疼いてしまった。



「いいか。知らない処で勝手な行動をするな。無駄死にするのが嫌だったら、絶対に一緒にいる奴の指示に従え。万が一はぐれたり迷ったりしたら下手に動かずに、その場でじっとしてろ」



 あれ?それって山で遭難した時の方法じゃなかったっけ?確か下手に動き回って体力を無駄に消費するのを防ぐためだったような……。


 私が今言われた事を頭の中に蓄えてある知識と照らし合わせていると。



「言っとくが、これは一般的に知られてる体力の温存のためってことだけじゃねぇぞ。じっとしててもらったほうが探す側も見つけやすいんだ」



 確かにお互いに動き回ってたら、出会う確率よりもすれ違う確率のほうが高くなるだろう。


 もしかしたら私が歩き回っている間にもクルトさんは必死に私を探し回ってくれたのかもしれない。


 申し訳ない気持ちになりながら、顔は動かさず視線だけでクルトさんの姿を探したが見当たらなかった。


 もしかして、まだ森の中で私の事を探してくれてるとか……?


 その可能性に思い至り、青くなる。



「殿下、クルトさんは……」


「あぁ?アイツならもうすぐ戻ってくるだろ。お前がここに来たことはわかっただろうしな」



 あっさりとそう言われ、私は意味がわからず内心首を傾げた。

 今の言い方だと、ここにいないクルトさんにも何故か私が戻ってきたことが伝わっているような感じに聞こえるのだ。

 もしかして私が知らないだけで、魔法を使った特別な通信手段とかがあるのかもしれない。



「お前がとんでもない方向に歩いて行ったことはわかってたんだが、自力で戻ってくることも修行のうちだと思ってしばらくほっといたんだ。でもこっちに戻って来るどころか、どんどん違う方向に歩いて行くもんだから、仕方なくクルトに迎えに行かせたんだよ」



 どうやら私が迷子になったこともバッチリ把握されていた模様。

 一体どんな方法が使われたのか物凄く興味があるが、とてもそんな事を聞ける雰囲気ではない。


 今私が口に出来る言葉は謝罪一択だ。



「本当に申し訳ございませんでした」



 とんだ手間を掛けさせてしまったクルトさんには、後程心の底から謝罪しよう。



「なのにお前はあんな非常識な方法で戻って来やがって……」



 話の流れが非常にマズい方向に向かっていることを瞬時に感じ取った私は、会話を元の流れに戻すために慌てて言葉を発してみた。



「あの……っ!何でクルトさんは僕がここに戻って来たことがわかるんですか!?」


「は?──お前、何言ってんだ?」



 王弟殿下は不機嫌そうに眉根を寄せて、私を見下ろす。


 もしかして王族の言葉を遮るような真似をした事で不興を買っちゃった!?


 内心ビクビクしながら王弟殿下の顔色を窺っていると。



「魔術師なんだから、魔力の探査をすれば位置くらいわかって当然だろうが」



 当たり前のようにそう言われ、私は馴染みのない言葉にキョトンとしてしまう。


 魔力の探査……って、魔力を探るってことだよね?一体どうやって??


 そんな方法は今まで読んだ本にも載っていなかったと思うし、強制的に魔術師となる予定になってからも教えて貰った覚えはない。



「魔術師は相手の持つ魔力を感じ取ることで、そいつがいるだいたいの位置がわかったりするもんなんだ。お前もそれが出来たからここに戻ってこれたんじゃねぇのか?」


「えーと……」



 そんな方法など微塵も思い付かなかったと正直に言ったらどうなるんだろう?


 少しだけ考えてみたが、言いたくないことを言わなければならなくなる事は目に見えている。

 王族相手に嘘を吐くわけにいかず答えに窮していると、突然王弟殿下の大きな手が私の頭に乗せられた。



「どんな隠し事をしてるのか知らねぇけど、さっさと全部喋ったほうが身のためだぞ」



 黒い笑みを浮かべた王弟殿下を見た瞬間、私は素直に自分の仕出かした事を喋ろうと心に決めたのだった。




お読みいただきありがとうございます。


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