2 やはり現実(リアル)は厳しい
「…ろ。」
あと五分…いや、十分…
「…起きろ。」
うるさいなぁ…あと十五分だけ…
「おい!いい加減起きろ!」
「んな!…うわっ!金髪野郎!」
私の好みは断然ディーヴァだ。黒髪黒目のしっかりとした顔つき。まさに、精悍な青年!金髪碧眼、割と薄い顔つきで王子様ーって感じの金髪野郎には全く惹かれない。しかも俺様。ただ、ここ5日位金髪野郎を見なかったし、ディーヴァを顎で使ってたから身分の高いヤツなんだろうなーと思っていたもので…。不覚にも驚いた。
「…あのなぁ。」
「なんで牢獄に?」
「なんでって、お前に用があるからに決まってんだろ。」
「用?」
「ああ。お前に聞きたいことがある。」
「は?聞きたいことって、処刑方法とか?」
処刑!どうしよう。え、磔刑とか、火炙りとか?痛いのはキライだよー。最近、金髪野郎とディーヴァのあんなことやそんなことを妄想してたからスパイ扱いだってこと忘れてたぜ!
オーマイゴッツ!
「なんでお前を処刑しなきゃ…おい聞け。」
「聞いてる聞いてる。」
「チッ、お前なぁ。全く…。」
全く聞く気のない私を見てか、舌打ちされた。イケメンはこういうのも絵になるから嫌だ。でもまあいいや眼福だ。ポジティブ、ポジティブ!
「あ、でも拷問…もあるかぁ…。」
「はぁ…ったく。」
ポジティブ、ポジ…。前世で妄想していた拷問、監禁エンドが浮かび、ネガティブ思考に落ちていく私を金髪野郎が呆れた目線で見てくる。イケメンがそんな顔したからってめげるな私!
「で、なんのよう?」
「だから…はぁ。お前、どこから来た。間者にしては迂闊過ぎる。あそこを王族の森だと知っていながら入るなんてこと、間者はやらないだろ?もう一度聞く、お前は何者だ?」
「桜木舞亜。18歳。日本人。一回死んで、ここに来たからあなたが誰かも、ここがどこかも知らないし、何者かも分からない。」
「それだけか?」
「うん。」
「お前、ヤンデレ監禁エンドもいいなぁ!とか学園設定もいいなぁ!とか言ってたが?」
「ん?何のことかな?」
「俺様×クーデレか、クール×俺様わんこか、とか大きな声で独り言を言ってたが?」
「んん?な、何を言っているのかな?」
「一人で金髪野郎×ディーヴァか、ディーヴァ×金髪野郎か、とか言ってたが?」
「…ああああああ!黙れ!黙れ黙れ!」
耳まで熱い。恨むぞ金髪野郎。何故聞いていた。私の性癖を馬鹿にするなぁ!
「クックック!お前面白いよなぁ!気に入った!」
何この急展開!面白いだと?!
「聞こえてるぞ?あははは!やんでれ、が何か分からんが、監禁ならしてやる。」
「しなくていい!」
「本当か?遠慮しなくていいんだぞ?」
「してない!」
「でもお前。そういうのが好きなんじゃないのか?」
「見るのはね!されるのは嫌だ!」
「そうかそうか。っ!ふふふ。」
ふふふってどこのご令嬢だよ。やっぱり俺様わんこだな。
「だから聞こえてるぞ。わんこ?俺はそんなんじゃない。」
「なんでもいいでしょ。」
「良くねぇよ。」
「…王子様がそんな言葉づかいしていいの?」
「お前こそ女の癖してそんな言葉づかいじゃねぇか。」
「っ!これが素なんだよ!」
「俺もだ。」
うっしゃあ!話を逸らしたぜ!
「それでだ。やんでれ監禁エンドとか、俺様わんことか、よく分かんないけど、俺はお前を気に入った。」
うん、急に話変わるよね。こういう人ってアレだよね。電話かけたら「俺だ。」って言うタイプ。あれ意味わかんないよねー。俺って誰だよ。オレオレ詐欺だと思われても知らねえぞ。
「また違うこと考えてる。」
「チッ。」
何故バレた?解せぬ。
私が一人、解せぬを使えた喜びに浸っていると金髪野郎が爆弾を落とした。
「とにかく!俺はお前を気に入った。だから、後宮に入ってもらうぞ。」
「高級な後宮。なんつって。って後宮?!スパイなのに?」
「文字化しないと分からないギャグはやめろ。」
あ、ギャグは分かるんだ。ヤンデレは分かんないのに。
「…お前は人の話をちゃんと聞く癖をつけろ。」
「嫌だね。後宮とか、女の戦場じゃん。舞亜、そーゆーのキライ。」
「お前がやっても可愛くない。侍女として後宮にいればいいんだ。」
「…」
世界中の乙女よ、聞くがいい。
現実ではそんな簡単に上手く行かないんだ!コレが現実だ!
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