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棋正宮奇譚〜饅頭の恨み〜  作者: ナナミ ヨシカ
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ぐちぐち攻め

よっぽど饅頭の恨みは深いらしく、部屋に戻ってもなおぐちぐちと言われます…。

ろうそくの明かりが照らす飛車殿の一室で、彗月は一言も喋ろうとしなかった。


なぜならそれは深海と一緒の部屋だからである。


飛車に所属している藍、紅、白、黒、緑という五つの軍の兵たちは、結婚や特別な理由がない限りは飛車殿で生活することになっている。


兵の数も多いために、八人一部屋が基本だ。


だが金将銀将はどんなに相性が悪かろうと性別が違わない限り、二人仲良く相部屋になる。


「こら、いつまで拗ねている」


部屋に戻ってから、隣り合う寝台に座ったまま動こうとしない彗月に、呆れた深海が声をかけた。


彼の存在を無視することは、彗月の精一杯の抗議の姿勢でもあった。


果たしていつまで続けるつもりかは知らないが、彗月は鍛錬後部屋にもどってから一言も発さずにいた。


彗月は深海へ恨めしそうな目線を向け、それまで閉じていた重い口を開いた。


「知っているか?本当なら僕は今、ここに座りながら饅頭を食べているはずだったんだ」


しかも美味いと評判のまあゆ堂の饅頭で、1日限定20個しか生産されないという超貴重品だったのに。


「そこに座りながらは行儀が悪いと思うぞ」


深海は仕方なくそばに行って、子供にするように目線を合わせるが、彗月はそっぽを向いて目をそらす。


「饅頭のたかが一個か二個で意地汚い。お前、二十一だろ?」


その仕草にカチンときた深海は、両手で彗月の顔をはさみ、無理やり視線を合わさせた。


「うるさい。僕がアレを手に入れるのにどれだけ苦労したと思っているんだ」


朝、四つの鐘が鳴る前から棋正宮を抜け出し、町へ出て店の前の行列に並び、七つの鐘が鳴り開店と同時に購入。


朝市の出店で軽い朝食を済ませてから飛車殿の自室に戻り、朝の鍛錬後に行われる、各軍の金将たちの会議の後に食べようと、戸棚にしまって部屋を後にしたのだ。


「そしてお前が僕の饅頭を食べた。…食い物の恨みはこわいぞ」


いつまでも恨みがましい彗月を一瞥すると、深海は盛大なため息をついた。そして彗月の両頬をつまみ、左右に引っ張った。


彗月の整った顔が歪み、なんとも言えない間抜けヅラになる。


「いつまでも男のくせにうじうじしてるんじゃねーよ、うっとおしい」


チッと舌打ちして頬から手を離し、自分の寝台に腰を下ろした。


「他人のおやつを盗み食いしてその言い草!ご立派ご立派〜!さすが二十七歳、経験が違うのかな〜?お、じ、さ、ん、だもんね〜?」


数字ほど歳をとって見えない深海は、六つしか年が離れていない彗月におじさん扱いされるのが大嫌いだった。


もちろん、彗月はわかっていてわざと、そういう風に言っている。


それがわかるから余計に腹立たしいらしく、深海は乱暴に頭を掻いた。


「うるせーな、二十歳過ぎの男がおやつとか言っていつまでもごねるんじゃねーよ。寝坊して朝飯食いっぱぐれたんだから仕方ねぇだろうが」


「寝坊?」


驚いてその言葉を繰り返した彗月から深海は気まずそうに顔をそらした。


彗月は面白いことを聞いたという目をして、顎に手を当てて大きくうなずき、その言葉を反芻した。


「時間に厳しいお前が、寝坊。珍しいな」


朝の全軍合同鍛錬をサボって饅頭を買いに行った彗月は、どうせ深海が代理をしていてくれていると思って顔だけ出しに行ったのだが、藍軍だけいつもより早く鍛錬を終えたということでその場にいなかった。


「入れ違ったんだろうな」


彗月が戸棚に饅頭をしまってから、会議のために部屋を出た後、深海が戻ってきたらしい。


その後朝食まで時間があったので、少し横になっていたら寝てしまったのだという。


それから目が覚めて食堂に向かったところ、もう昼も近いじかんだったため、文官や手続きに来た一般人たちでごった返しており、そこでの食事を諦めて仕方なく部屋にもどった。


しかし小腹が減り、何かないかと戸棚を物色したところ、戸棚の中にしまわれた饅頭を見つけたというのだ。


「あれは頑張り屋の俺に神様がくれたご褒美だと思ったのにな」


「ちーがーう!!あー、やっぱりしまったりしないで食べておけばよかった…!」


なんでこいつと相部屋になってしまったんだと枕に顔を押し付け、さめざめと泣いた。


書いてて本当に彗月はしつっこいなーとおもいました。


まだぐちぐちします、

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