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森の中の戦闘

さわさわと、耳に優しい音が聞こえてくる。

それと同時に、頭の上に何かが乗っている感触がある。

目を開ける。


「葉っぱ?」


葉っぱだった。葉っぱの塊だった。

でもそれは動いていて、さわさわと葉っぱ同士が擦れあう音が聞こえる。


僕は頭の葉っぱを手で押さえてから横たわっている体を起こす。


「緑が多いなぁ。山……いや森?」


見渡す限りの緑。

高い木と木の間から見える空は青かった。

と、そこで頭に押さえつけている葉っぱを見てみる。


「キュ?」


生き物だった。葉っぱで覆われている、いや葉っぱで身体が構成されているような生き物だった。

手の代わりに翼のあるトカゲのような生き物。

トモヒロに借りたゲームの中に、これと似たような生き物がいた。

それはドラゴン、竜。

いや、呼称はどうでもいい。そんなことは重要なことではない。

問題なのはドラゴンなんてゲームの終盤に出てきそうな強敵が、僕の目の前にいるということだ。


ウゲツも安全な場所とは限らないみたいなことは言っていたけど……


「はは、ちょっと、ヤバイかも」


暖かく感じていた温度が、急に冷たくなったかのように感じた。


「キュ!キュ!」


手の中にいる、葉っぱドラゴンを見る。

コイツは別に脅威になるとは思えない。

むしろ……


葉っぱドラゴンを撫でる。

キュ~と、気持ち良さそうな声をだす。


「……」


むしろ、かわいい。ペットにしたい。

地球むこうでは動物と戯れる機会なんてなかったからか、この葉っぱドラゴンがとてもかわいく思える。


「よし、飼おう」


「キュ?」


「名前は……リーフ、は安直か。リーフドラゴン……リードラ……リーラ。うん。リーラだ」


「キュゥ?」


「君の名前はリーラだ。よろしく」


「??」


まあ、別に言語が通じるとは思っていないけど。


リーラを頭の上にのせる。

体長30センチ位で丁度良く乗る。

重さはほとんど感じない。まるで羽のように、いや葉っぱのように軽い。


「なんとなく、リーラのおかげで気が紛れた、かな?ああ、武器を出しておかないと……<鏡は鏡。鏡で鏡。自分ボクを写す鏡の鏡>」


右手に半透明な短剣が現れる。


「神、異世界、ドラゴン、魔法……トモヒロが喜びそうなところだなぁ。あとトモヒロが望みそうなものはチートかな?」


なんて事を呟いていると、ガサッと草むらから音がして、僕より大きなイノシシが現れる。

顔が引きつるのがわかる。


「は、ははっ、イノシシって……確かにゲームの序盤に出てきた敵だけど、こんな装備で勝てる気はしないなぁ」


現在の装備は血塗れの制服上下と、切れ味も強度もわからないガラスのような半透明の短剣一本。ついでにいうと、強キャラ(?)のリーラもいる。


イノシシは僕に向かって駆け出した。

イノシシの初速度は思ってたより速くなかった。

でも、けして遅くもなかった。

イノシシとの距離は短かったけど間一髪で避ける。

ちゃんと見れば、避けれるレベルだ。

イノシシは突進し続け、僕は避け続けた。

見慣れてくると、余裕が生まれてくる。

避けると同時に短剣で攻撃してみたけど、なんとなく予想していた通り、刃は通らない。切れ味が悪いのか、僕の力が足りないのかはわからなかったけど。


「……無理か。なら目、口、尻、かな?」


柔らかい場所なら刺さるし斬れるはずだ。

イノシシが数十回目の突進を繰り出してくる。

短剣を構えて、目に刺、刺……。


「む、無理!」


「キュッ!?」


身を横に投げ出す。

頭の上のリーラが落ちて変な声をだす。

心のなかで謝りつつ、拾ってすぐに立ち上がる。


……真っ正面から、なかなかの高速で迫ってくるモノにピンポイントで目を狙えるはずもなかった。


イノシシを見ると、幸いなことに木に牙が刺さって身動きがとれない状態だった。


そのチャンスを逃さず、前に回って目を刺す。

ズブリというあまり良くない感触とイノシシの悲痛な叫びにちょっと顔をしかめて短剣を抜く。


赤い血に濡れた半透明の短剣は、血をその中に取り込み、色をイノシシと同じ焦げ茶色に変えた。

それと同時に僕の身体が軽くなった気がした。


短剣のことに気を取られていると、痛みに狂ったイノシシが暴れ、そばにいた僕は吹き飛んだ。


イノシシの力は強かったらしく、ノーバウンドで数メートル先の木に叩きつけられた。

痛い。でもそれだけだ。痛みだけ。外傷はないし、骨も内臓も異常はなさそうだ。


「これは……防御力が上がってる?なら攻撃力も……」


さっきより少し離れている、牙が抜けたらしいイノシシに向かって走り出す。


「へあっ!?」


思わず変な声が出てしまう。

なぜなら予想していたより脚力が強くなっていたから。強くなりすぎて、リーラは地面に落ちて僕は木にぶつかったから。


「なーんか、僕の本質……この剣の能力わかってきたかも」


イノシシが突進してくる。

僕もイノシシに向かって突っ込む。

通りすがる時、強くなった力で短剣をイノシシに刺し、腹を捌く。


まるでマンガの1シーンみたいに僕が短剣の血を振り払う瞬間、イノシシの腹から血が吹き出し、絶命する。


「はは、チートなのかな?これ」


落ちたリーラを拾いながら、そう言った。

血塗れの死体イノシシを見て、そう言った。

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