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ユウトとヒビヤ

「クソッ!! どこにあるんだよ!!」


もう少しでトンネルに着く、というところで大声が聞こえてくる。


少し進むと金髪の大柄な男と茶髪のスラッとした男の2人組がいた。おそらく先ほど声をあげたであろう金髪の男は相当イラついているようで声を大きく荒らげていた。もう一人の茶髪の男はその光景を目の片隅にとらえながら風に吹かれる髪の毛を手で弄んでいる。こんな場所にいる理由はひとつしかない。


「まぁまぁ落ち着きなよ。もう少し歩いたらあるって」


「めんどくせーな。これでつまんなかったらタダじゃおかねーからな!!」


……やっぱり。



しかし、態度が悪いな。

こんな場所であんな奴らに態度だのマナーだの言っても無駄なのだろうが、というかここにいる時点で彼らが肝試し目的だと言うことは簡単に推察できる。

本当に殺人事件が、それも最近起きたところを心霊スポットにするなんて……


こんなところで関わりたくないな。

僕はできる限り道の端をゆっくり通った。

でも……


「おい、お前!! 地元の人間か?」


やっぱり絡まれたか……まあ今までもこんな奴らに何度か絡まれたし、仕方ない。


「はい、そうですけど……」


僕は何の用かわからない、といったとぼけた感じ、それでいてできる限り怒らせないように、嫌悪感を出さないような表情と声で答えた。


「えっと、あれだ……あそこ、あぁっ、くそ!!

 おい、ヒビヤ!!」


なんだこいつ……本当に短気だな。なんでこんな奴に絡まれないといけないんだ。


「まぁまぁ、ユウト。落ち着いてよ。

 ……連れがごめんね。名前は?君何歳?ここらへんの地理詳しい?」


茶髪の方はヒビヤと言うらしい。その名前に、茶髪で軽薄で、薄ら笑い。見た目も相まって僕のなかではホストのイメージが完全に定着してしまった。僕が忌み嫌う性格だ。こいつはこいつで関わりたくなかったな……まぁもう1人の金髪よりはよっぽどマシだけど。とりあえず質問には答えとかないとな……せっかく家を抜け出したのに、トンネルにいけないなんて困るし。


「ヤヒトっていいます。16歳です。一応地元人だからある程度は」

「よし、なら何とかの殺人トンネルまで案内しろよ!!」


うるさい。こんなに近くで大声出さなくても聞こえるって。気安く肩を組まないでくれ。汚らわしい。それに僕の用事なんて微塵も気にしてないんだろう。本当に不愉快でしかない。ユウト……だっけな。この金髪は完全に第一印象通り喧嘩早い脳筋野郎みたいだ……。本当にめんどくさい2人組に絡まれた。


「……はい、わかりました」


僕はなるべく普通な表情を保って返事をした。ヒビヤはごめんね、と笑顔で言ってきたが本心ではなんとも思っていないのだろう。そしておそらくあいつは本心から謝ってないのを僕が知っていることを知っている。それがまた……いらつく。


「じゃあボウズ、案内よろしく!!」

「……はい」


諦めて先頭にたち歩みを進めていく。実際もうすぐトンネルにはつく。あと数分も進めばその不気味な外見が見える。だが、これだけ草が生い茂っていれば不安にもなるだろう。僕も来るごとに驚く。…みさき姉ちゃんが死んでも世界は変わらず時間を刻んでいることに大きな悲しみを感じる。


「そういえば事件の時に一緒にいた男児のあだ名知ってる?」


ふと後ろの会話が耳に入る。新聞記事には書いてなかったはずだけど、どこで仕入れたんだろう。やっぱりこういうことを調べればいくらでも見つかるのかな……。


「ああそれ見たぞ。“役立たずの騎士”だろ? ウケるよな。しかもそう呼ばれた理由はそのガキの名前がナイトだったかららしいぜ。ナイトとかどんだけキラキラネームだよ」


なんで腹を抱えてまで笑うんだよ……そんなにおかしいか?

確かに僕のいた学校でもナイトは役立たずの騎士とバカにされていたが、一応知り合いだ。何も知らない他人に言われるのはさすがにむかつく。ナイトは自分なりに頑張っていた。どうやったらみさき姉ちゃんを救えるか。ただその行動を誤っただけ。こんな奴らよりはよっぽど立派で……


「おい、ガキ!!」

「ヤヒト君、どうかした?」


しまった……完全に歩みを止めて奴らを見てた。不快感が出てなかったかな。今不信がられるとめんどうだし……


「いえ……あっ、見えました。ここです」


相変わらずトンネルは木々に囲まれひっそりと不気味な雰囲気を醸し出していた。何度来てもこの恐怖感は変わらない。来る度にみさき姉ちゃんと過ごした楽しい日々、そしてその唐突な終わりを思い出す。みさき姉ちゃんはどんな気持ちで殺されたんだろう…… 必死にかばってそれすらも疎ましく思われて。 僕が救ってあげたかった。もしあの時僕が

「ガキ!! 先に行ってるからな!!」


気付いた時には2人はトンネルに足を踏み入れていた。

先にって……僕は一度もトンネルに用があるだなんて言っていないのに。どうせ帰りも僕に案内させるつもりなんだろう。


「誰が一緒に行くかよバーカ」


彼らがトンネルに入っていき、その姿が影でしか認識できない程度のものになったことを確認して僕は呟いた。確かに僕もトンネルに用事があったが元から一緒に行く気なんてない。あんな奴等と一緒にトンネルを回ってもみさき姉ちゃんと会えるはずがない。あいつらと合流するのはトンネルの終盤、みさき姉ちゃんが殺された場所だけでいい。

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