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どうやら俺は、魔王を倒した英雄の両親より強いらしい。~でも、学園生活は強くてやさしいだけではやっていけない。  作者: ポンジュレ
Ⅰ 両親が英雄だなんて聞いてない

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1-1a.

「斬った……オリハルコンの測定器を……斬った」

「うぎゃあ───っ、大変だあ───っ!」

 

 やってしまった。

 ブレイビオス王立学園の入学試験。屋外演習場にて、俺は剣の力を見るための測定器を、木刀で真っ二つにした。

 世界最硬の金属で作られた、この黒光りのトルソーを。

 

「なんかすみません。たぶんヒビが入ってたんじゃないですかね」

「〝斬れない〟からオリハルコンなんだぞ!」

「これひとつで、貴族の邸が幾つ買えると思ってるの!」


 スキンヘッドの先生が叫び、ブロンドの女先生は頭を抱えてのたうちまわっている。順番待ちしてる後ろの同い年っぽい子にも謝ったら「ひっ」って引かれてしまった。


 春先の肌寒い風が、時間の止まった演習場の土をぴゅう~と巻き上げる。

 

「あの~、もう帰っていいですか」

「脈略なさすぎだろお前っ。それよりなんで木刀が折れてないんだ?」


 それはまあ俺の技能で。

 しかしこのままではまずい。こういう時は落ち着いて、おかんの『セイ』に言われた通りにやろう。


「ほんとすみません。おかんに重々言われてますんで、すぐ直します」

「へ?」


 二つに分かれ、ごろりと重そうに転がっているトルソーに手をかざし、おかん伝授の【聖光】を放ってみた。ぴたあっと、気持ちがいいほどきれいに合わさった。


「……え? くっついてる。オリハルコンが……くっついてるぞ」

「うきゃあ───っ、もう、わけがわからない───っ」

 

 せっかく元に戻したのに、先生二人とも、泣き笑いながら踊っている。人間って常軌を逸するとおかしくなるっておかんも言ってたな。それは聖魔術でも治らないって。

 

 そうこうしてたら、ラメ入りのきらきらとしたジャケットを着た眼鏡の先生が、なぜかびくつきながら近づいてきた。まるで行商人が森でドラゴンに遭ったように顔を引きつらせて、腰が引けている。


「『ケイ』君だね。ちょ、ちょっとばかり学園長室に来てもらっていいかな」

「謝罪ですね。でも俺、弁償はできないですよ。お金を持ってないので」

「ま、まあ、とにかく行きましょうか。学園長をお待たせしたらいけない」


 身震いしている。おそらく、おとんの『ケン』が言ってた中間管理職の人だ。試験も終わってない学生未満の俺と、この学園で一番偉いであろう学園長って人の間に挟まって、困っているんだ。

 

 人間、あんまり困らせるとストレスで胃に穴が開くらしい。そういえば……俺は山の生活において、おとんのシゴキのせいで胃ではなく頭に丸いストレスハゲができたことがある。そのときはおかんが治してくれてたっけ。もし弁償代を請求されたら、さっきのスキンヘッド先生の髪を生やして許してもらおう。


 暗い影を背負いながらずっとブツブツ言っている眼鏡の先生。後をついて学舎の中をそこそこ歩くも、珍しいものばかりで、ちょっとした観光気分を味わう。

 ほどなくして『学園長室』って書いたサインボードが突き出た部屋の前にたどり着いた。


「学園長、失礼します。ケイ君をお連れ致しました」

「そうか。入ってもらってくれっ」


 扉が厳かに開く。

 正面、でっかい文机(ふづくえ)の向こう、とんがり帽のおじいさんが座っていた。


「───! 黒髪に、そ、その顔立ち……そっくりだ。間違いないっ」

 

 俺を見るなり突然がばあっと飛び上がって、目の前にスライディング土下座するおじいさん。

 あまりに綺麗に決まったんでつい見惚れてしまったが、そこじゃない。

 いや……何で俺に土下座? いったい、何が起こってる?

 

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