表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デッドリィ・ストライプ  作者: 鳩峰浦
第一章 デッドリィ・ストライプ
48/58

47 1号機

 ぼんやりした頭に,松井さんの怒鳴り声が響いた。

 

 「うるせーな……くそ……」


 二言目にはバカバカと……。


 こいつ,強えーんだよ。あんたより強いかも。

 英理にも助けられちまったし。


 命のやり取りとか,そういう柄じゃねーんだ。もともと。


 配役ミスだぜ。

 

 俺はさ、喘息持ちの,プラモオタクの瘦せ男なんだよ。


 向いてねーんだよ,こういうの。


 

 でも,な。

 

 約束したからさ。

 

 黒い奴の両腕を掴み、出力を最大まで上げる。徐々に黒い奴の締め付けが緩む。

 

 「ぅおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 黒い奴の両手を頸部から外し、がら空きになった胸部を突き飛ばす。黒い奴が体勢を崩した隙に立ち上がる。

 

 ちゃんと帰るさ。

 

 俺は俺の部下をみんな連れて,ちゃんと帰る。

 

 「殺されるわけにはいかねーんだよ」


 俺が守らなければ。


 俺の部隊だ。


 俺が守って,連れて帰る。


 ちゃんと帰るんだ。


 よく見ろ。


 逃げるな。


 黒い奴が雷のような速度で踏み込んでくる。


 右足の蹴りをかわす。 

 

 体を回転させて放った左の回し蹴りは空を切る。

 

 黒い奴の右腕が光る。

 

 びびってんじゃねぇよ。

 恐れるな。引き付けろ。

 

 やるんだ。逃げるな。

 目じゃない,覚悟だ。

 

 そうだったな,松井さん。

 

 モニターを黒い奴の右腕の光が覆う。

 恐れるな,覚悟しろ。

 

 

 世界が、やけにゆっくりと感じた。



 俺はその光りに重ねて右拳を叩き込む。


 「!」


 雨で濡れた地面が俺の足を取る。


 鈍い衝撃が顔面に走る。

 全身に電流が流れる。


 ******


 「小松坂! 立て! 起きろ!」

 松井小隊長の声が響きわたる。

 

 佐藤補佐官の目が大きく開く。

 

 実験計画通り、西園寺さんの前で、死んでもらう。

 

 あの機体の損害状況でルシフェルの電撃。


 心拍数も下がっている。


 もう再起動はできない。

 

 後は、ルシフェルに、二号機の前に運ばせて、目の前で……。


 ?

 え?


 ******


 ……ざけんな……

 ……けるもんか……


 …負けるわけにはいかねーんだ。


 だから……

 「力を貸せよ! イザナギ!」


 ******


 小松坂の絶叫が、響きわたった。

 その後は、スローモーションの動画を見ているようだった。


 きしむようなモーター音が、小松坂の着用する1号機から放出された。


 ゆらりと立ち上がった1号機に、黒い奴が飛びかかった。


 黒い奴の右拳が、小松坂の1号機にめり込んだように見えた。


 その瞬間。


 クロスカウンターの形で、小松坂の右拳が黒い奴の顔面にめり込み,黒い奴はその場に崩れ落ちた。


 小松坂は、地面に倒れ込んだ黒い奴の背中のハッチに手をかけ,バッテリーを一気に引き抜き,宙に投げた。

 バッテリーが地面を転がる、乾いた音が響き渡った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
こんにちは。東雲明です。作品拝読させて頂きました。バトルシーンの主人公の心情描写がリアルで、より主人公の気持ちに引き込まれました。このような素敵な作品を生み出して頂きありがとうございました。これからも…
2025/08/22 07:22 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ