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デッドリィ・ストライプ  作者: 鳩峰浦
第一章 デッドリィ・ストライプ
45/58

44 

 あたしが黒い奴に手こずっている、ほんの数分間の出来事だった。

 

 9機の装甲具を、風間君が一掃したのは。


 信じられない光景だった。


 最後の一機のバッテリーを引き抜いてすぐ、風間君は倒れこんだ。

 

 どうして?

 立ち上がらない……。


 「風間君!」


 通信が繋がらない。

 「うぁあぁぁぁぁ!」


 小松さんの頭を、2機目の黒い奴が両手で掴んでいる。

 「こっの……くそ……」

 

 稲光が宙に浮いた小松さんの身体を照らす。

 

 「小松さん!」

 


 嫌だ。


 嫌だ嫌だ嫌だ。 


 まただ。


 またあたしは、目の前の奴を倒せない。


 子供みたいに、無力。


 雨と風が一層強くなる。


 力が欲しい。


 嫌だ。


 小松さん。


 死なせたくない。


 あたしは昔のあたしじゃない。


 力が欲しい。力が欲しい。あたしに力を……。

 

 「……補佐!」

 「……西園寺。頼む」


 ******


 信じられない動きだった。

 あれが風間の本来の力なのか。

 しかし、その風間が応答しない。

 

 感電した? いや,そんなデータじゃない。

 状況が全く分からない。

 

 いずれにせよ、あの状態で襲われればひとたまりもない。

 小松坂のダメージも深刻だ。

 

 全滅する。

 

 第一小隊の到着まで,あと10分。

 他に選択肢はない。


「課長代決権行使! 西園寺のリミッターを解除!」

「了解です」


 待ち構えていたように篠崎が動き出す。

「2号機のリミッターを解除します」

 気のせいだろうか。


 ほんの一瞬だったが,モニターの光りに照らされた篠崎の目に,喜びのような輝きが宿ったように見えた。


 「リミッター解除。解除限界時間1分30秒です。」


****


 さぁ。

 この先を。

 リミッター解除の2段階目に進もう。


 小松坂を生贄にして。


****


 世界の動きが遅くなる。

 雨粒がゆっくりと落ちていく。

 遅くなった世界の中で,あたしだけが自由になる。


 雷光みたいに。


 黒い奴の蹴りが止まって見える。

 

 蹴りをすり抜けて,駆け抜けざまに,黒い奴のバッテリーを力づくで引き抜く。

 倒れた風間君に襲い掛かろうとしていたリキラクのバッテリー部分を蹴り飛ばし,バッテリーごとバックパックを破壊する。

 

 解除限界時間1分20秒。

 風間君に向かおうとしていた6体の装甲具があたしに群がってくる。殴りかかってきたアックスⅡをカウンターの張り手で弾き飛ばし、ロッドレーバー3体のバッテリーを次々に引き抜いていく。

 地面に落ちているケーブルが放電して火花を放っている。あたしはケーブルの根本を掴んで、残りのアックスⅡに投げ込む。感電して倒れる装甲具。


 小松さんを掴んでいる黒い奴に向かう。


 サイクロンがあたしの進路に飛び込んでくる。あたしがかわした先に急激に方向転換して踏み込んでくる。それもかわす。サイクロンの後ろに回りこむ。


 コワシテヤル。


 力任せに,バッテリーの入ったハッチを殴りつける。サイクロンの装甲がひしゃげるが,バッテリーまでは破壊できず,サイクロンがよろけながらもこっちに向き直る。

 

 限界時間1分10秒。

 

 サイクロンの頭部に右足で上段蹴りを入れ,よろめいたところに,あたしはコマのように回転して左足で回し蹴りを重ねる。サイクロンが吹き飛ぶ。

 それでもすぐにこっちを向き,立ち上がろうとする。


 じゃましないで。


 限界時間1分。

 サイクロンに飛び掛り,地面に押し倒す。馬乗りになって,頭部に打撃を重ねる。

 補佐の声が聞こえた気がした。

 

 もう良いとか、そんな言葉。

 良いわけないじゃない。


 こいつら、小松さんを殺そうとした。

 

 限界時間45秒。

 

 あたしはサイクロンから離れた。

 

 小松さん小松さん。

 小松さんを助けなきゃ。

 

 黒い奴の両手が、小松さんの頭部にめり込んでいくように見える。

 

 その後ろからアックスⅡが小松さんに迫る。

 あたしはさらにその後ろからアックスⅡに接近し,一気にハッチを破壊してバッテリーを引き抜く。

 

 「残時間30秒」

 

 「小松さんを離せぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 黒い奴の脇に回り、薙払うように左の蹴りを放つ。黒い奴は小松さんを掴んだ手を離して蹴りをかわす。

 

 黒い奴が間合いを詰めてくる。

 

 黒い奴の右手が放電しているのがよく見える。 

 右手の打撃をかわす。

 

 自由になった小松さんが横から黒い奴に蹴りを入れ,黒い奴がよろめく。あたしはそこに畳み掛けてさらにとび蹴りを入れる。黒い奴は両手でガードしたが,そのまま吹き飛んで地面に倒れる。

 

 「残時間15秒。」

 

 警報が大きくなる。

 頭が痛い。


 うるさいうるさいうるさい。                       うるさい。



 はやくこわす。

 黒い奴の上に馬乗りになる。またさっきみたいに拳を振り下ろす。

 腕でガードされる。しつこい。


 じゃまだ


じ  ゃまだ。

 「ざん 時間 8 びょう。」

 あったま    いたい…。

 ガードの すきまに右腕を振り下ろ  す。黒い奴の  両腕 が左右に  はじけ  る。

 続け  てもう一発    左 腕を   振り下ろ       す。



 「ざんじ間3びょう。」


あた               ころす

         まが

 いたい。

 

 ころす


 み      ろす。

 

  た     す


 「ざん じか         ん0。」


   ころ  す


 し   こrす      そ

       ま r。











                  あ

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