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デッドリィ・ストライプ  作者: 鳩峰浦
第一章 デッドリィ・ストライプ
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39/59

38 ナツ/クマ

 「小松坂隊長を、殺す?」

 

 「別にあなたに手を下せと言ってるわけじゃないわ。ただ、余計な手を出さないで」


 「英理さんを追いつめれば良いんじゃなかったのか?」


 「命令通り、粛々とやるだけよ。分かってるでしょう」

 

 ナツは、口をつぐんだ。

 

 「もう一歩で「アマテラス」の鍵が手にはいるの。私たちのずっと求めていたものよ。そうでしょう?」

 「でも……ナツ……」


 「何? 情でも移った?」


 「小松坂さんの命を奪ってまで……そこまでして……」


 「いまさら一人や二人,何だってのよ!今までの全てを無駄にするの?!」


 ナツが叫ぶ。

 

 「ずっとずっと、探していた答えよ。私たちが何なのか。どこで産まれたのか。誰が産んだのか。どうして施設に預けられたのか。私たちは知らないといけない。それを知ることで、やっと私は全てを始められるの。あなたも、そうでしょう。私は……」

 

 ナツが下を向く。

 

 「私は嫌よ。自分が何なのかも分からずに、このまま政府の犬として生きるなんて。あいつらが持っているあたしたちの情報を手に入れる。そして……」

 

 突然、ナツが僕の襟元を両手で掴んだ。


 「全部取り返して,そして,めちゃくちゃにしてやる。そうでしょ?!」

 

 ナっちゃんの爪が僕の首に食い込む。


 「私を一人にする気? あたしより、小松坂や西園寺を選ぶの? 約束したじゃない。一人にしないって……」

 

 「ナツ……僕は……」


  ナツは、僕の胸元を両手で突き飛ばし、背中を向けた。

 

 「組み手も現場も、気をつけなさい。松井さん、あなたの本当の力に気づきかけてるわよ。それから、あの変なファンクラブのチラシ、止めてくれる? 定期集会の連絡、別の暗号にして。気持ち悪い」


 ******


 「どうした、風間。体調でも悪いのか? 俺の栄養ドリンク飲むか?」


 あなたはいつもそうだ。

 自分だって疲れてるくせに。最初に部下のことを気遣う。

 何も知らないで。


 「大丈夫です。少し緊張が続いてるので、顔色に出てるんです。小松坂隊長こそ、大丈夫ですか?」


 「隊長だからな」


 「答えになってませんよ」


 「やっぱり何かあったのか。篠崎に冷たくされたか? ああいう美人は、難しいからな。今回の件が終わったら、飲みに行くか」

 「隊長……」


 小松坂隊長の目の下には、うっすらクマができていた。


 「隊長は怖くないですか。現場で戦うこと。装甲具と渡り合うこと」

 「怖いさ、死ぬかも知れない。でも、誰かがやらなきゃいけないことだ」


 体調が僕の肩を叩いた。


 「ま,お互い,残念ながら向いてるみたいだし,やるしかないさ。それに,お前らのことは俺が守る」


 隊長が笑う。


 「前も言ったろ。部隊は、家族みたいなもんだからな」


 家族。


 心臓を鷲掴みにされたように苦しくなる。


 「なーに、そんな顔すんな。まじでやばくなったら自衛隊呼んでくれるみたいだし。ま、お偉いさんは絶対にやりたくないだろうけどな」

  

 隊長はそう言って笑った。


 一人になるのは、怖いことだ。


 幼いころの自分が少し顔を出す。


 装甲具を着たときの、鉛の臭いがしたような気がした。


 小松坂隊長。


 僕は……。あなたを殺す手伝いをするんです。


読んでいただいてありがとうございます!

なるべく毎週数回の更新をしています、もしよければ評価・ブクマいただけたらとっても嬉しいです!

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