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デッドリィ・ストライプ  作者: 鳩峰浦
第一章 デッドリィ・ストライプ
29/58

28 睡眠/毒を持って

 宿直室で仮眠を取った。出動に向けての体力を蓄えるためだ。風間君は眠れないと言って,医務課から睡眠導入剤をもらってきていたみたいだった。あんなの飲んだら,かえってだるくなると思うんだけど。あたしはどこでもいつでも寝れる性格なので,こういうときは困らない。


 目を覚ました後に,枕元のアラームが鳴った。いつもより少し緊張しているのかも知れない。

 制服に着替えて廊下に出ると,小松さんに遭遇した。


 「早いじゃんか」

 「大事な現場ですから」

 「これ,作戦のオペレーションチャート。イザナギにも飛ばしてあるけど,ペーパーも渡しておく」

 「ありがとうございます」


 小松さんも気合いが入っている。こういうときは,やっぱり隊長って感じがする。


 「小松坂隊長」

 

 「ん?何だ?」あたしの改まった言葉に、少し警戒したような表情でこっちを見る。

 

 「やってやりましょうね」

 「なんだそりゃ」

 

 小松さんが少し笑う。

 

 「当然だろ」


 ******


 一通り書類の確認を終えた。時間が結構かかってしまった。

 

 発砲と,リミッター解除。

 

 この二つは,できれば使いたくないが,必要があれば仕方がない。

 ため息をついたところに,冬見ちゃんが近づいてきた。

 

 「リミッター解除から2週間経ってるわね。西園寺」

 「基本的には使いたくないよ。あれはやっぱり,装着者への負担が大きすぎる。毎回怪我するし,精密検査が必要だし、記憶が飛んでるのだって変な話だ。本庁は推進派だが……いつか取り返しのつかないことになるんじゃないか」


 「……そうね。」


 冬見ちゃんも何を考えてるのか。


 リミッター解除というのは,考えれば考えるほど不思議な機能だ。もともと人間は,自分の体を自然と守る本能がある。生き物なんだから当然だ。例え機械の力を借りても,自分の限界を超える動きを,脳や神経が許すはずがない。

 

 その越えてはいけないラインを越えさせる,そういった,極めて危険なシステムが,イザナギには組み込まれているということだ。

 

 まるで,酒や薬物でタガが外れた人間のように。

 

 薬物か。

 

 毒を持って毒を制すといったところか。

 

「そういえば,あれだけ形式にうるさい課長が,リミッター解除に関してはあまり口を挟まないな」


 冬見ちゃんの表情が一瞬だけ,確かに引きつった。錯覚だったのではないかと思うほどだったが,間違いない。


 「……確かにそうね」

 

 何か知ってるのか,それとも何かに気づいているが,口には出せないのか。

 

 つれないなぁ。

 

 「何にしても,使わずに済めば,それに越したことはないわ」

 「その通りだよ」


 全くもってその通り。


 そして,それは作戦指揮者である自分達の采配による。

 


読んでいただいてありがとうございます!

なるべく毎週数回の更新をしています、もしよければ評価・ブクマ、感想等いただけたらとっても嬉しいです!

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