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デッドリィ・ストライプ  作者: 鳩峰浦
第一章 デッドリィ・ストライプ
23/58

22 SP/北島博士/美人さん

 イザナギのクーラーをガンガンに効かせて,それでも少し暑いくらいだった。


 「小松さん……もう限界……もう帰る……」


 「何言ってんだ。しゃきっとしろ。あと二時間」


 「もーやだー……こういう仕事,性に合わないのよ……ずっとじっとしてるだけなんて……」

 「大臣の護衛だぞ? ありがたく思え。それに、風間を見ろ。微動だにしない……あいつめ……」

 「あれ、寝てんじゃないすか?」

 「寝てません」

 うわ、通信傍受された。全く、可愛くない……。


 「SPがいるでしょうに。なんであたしらがこんな張り付き護衛しなきゃいけないの? あたしらの留守中に何か事件があったら,どうする気よ」

 「第1小隊がやるに決まってるだろ。気が散るから、もう、お前、少し黙れ」


 うー。むかつく……。


 滅多にない仕事だが,装甲具国際学会のテロ警備の名目でなぜかイザナギが借り出された。何でも日米の大臣クラスも出席するから,有事の際のために……とのことだった。

 でも,普段大臣の警護なんていう仕事は,警備部警備課のSPの仕事だ。

 あそこはあそこで,自前の装甲具を持っているし,ちゃんと研修所を卒業した警察官が揃っている。うちほどじゃないけど、遜色ないくらい強い。


 それなのに,今回はSPに加えてあたしたちも警護に回るように話が回ってきた。いくつか理由があるが,経済産業省の大臣や,有名企業のお偉いさんが多数来ていることが最大の要因のようだ。


 つまり,イザナギを見せ物にしたいってこと。各企業や経済産業省に見せて,予算話などにつなげたい思惑が,広報部の方で働いているみたい。

 それもあって,どうもこの仕事は気乗りしなかった。

 パンダじゃないぞって感じ。


 「?」

 あれ。何か,見たことがある人……。

 「こ……こまつさん……あれって……」

 「あ。あれは。北島博士じゃないか」


 や,やっぱりか……!! 写真では見たことがあったけど……。

 まずい。まさか,こんな形で初対面になるとは……。


 現武田重工専属装甲具アドバイザーにして,某有名私立大学の工学部教授。世界中で数々の装甲具の開発に携わってきた装甲具開発界の神様,世界の北島。もちろんイザナギの設計に関わった人だ。

 そして,まだ40代独身でこれがまたすらっとした長身の美形!

 ……まぁ、あたしのタイプではないんだけど……世の中の女性受けは高く、フォロワーもたくさんいるそうな。 

 イザナギのこととか、色々、一回聞いてみたかったんだけど……。


 国際会議場入り口に向けて,数名の助手か生徒と思われる人を引き連れて,グレーのさらっとしたスーツを涼しげに着こなして歩いてくる。イザナギのカメラでズームして見る。

 「本物!」

 「英理,あれだ。顔だけでもイザナギの装甲外して挨拶するか。滅多に会えないだろ」

 「え。いや,ちょっとまって小松さん。あたし今日ほとんどすっぴんだし,スーツも汗くさいし……印象ってものが……」

 「は? 何言ってんだお前? そんなのいつものことだろうに」

 「ど、どういう意味よ! 何? 小松さんいつも人の汗の匂い嗅いでるわけ?! き,気持ち悪い……」

 「あー、もう本当にうるさい。俺は行くからな」


 うわ,本当に顔出すの?


 それに気づいた北島博士がこちらに向かってくる。

 「おや,これは…イザナギじゃないか」

 「初めまして,北島博士。警視庁特殊装甲部装甲機動課第2小隊隊長,小松坂と申します」

 「ああ,あなたが小松坂さん。イザナギの装着者ですね。噂はかねがね聞いてますよ。一度あなたの解体技術を見たかったんだ。今度是非,研究室に来て欲しい」

 あー! 名刺を差し出してる! 

 

 しかも研究室ですって?

 

 思わず足が一歩前に出る。

 「おや,あちらは,イザナギの2号機……」

 「2号機装着者の,西恩寺です!」


 あー,顔出してしまった。よくよく考えたら,こういう可能性もあったんだから,少し身なりを整えてくれば良かった……。

 気にしだしたら,なんだかすごく汗くさい気がしてきた…。

 でも名刺は欲しい……。

 

 「あなたが西恩寺さんか。話はいろいろと聞いてはいたが……。こんな美人さんだったとは」

 「へ?」


 何て言った?

 

 思考回路が止まってしまいつつ,目の前にさしだされた名刺を、反射的にイザナギの手で受けとった。

 

 「あなたにもとても興味がある。是非,一度研究室でお話を。メールアドレスはそこに載っているから」

 「博士,口頭発表の時間が……」

 「分かってる。急ごう」

 

 すっと身を翻して会場の入り口に向かう博士。ふっと一瞬振り返り,笑顔で「待ってるよ」と。

 何か、思ってたよりキザな感じだなぁ。

  

 それを見ていたあたしに,小松さんがあろうことか蹴りを入れてきた。

 

 「イッタ! ちょっと! 何すんですか?! 装甲法違反なんじゃないですか? 訴えますよ!」

 「いつまでもぼけっとしてんな! 警護に戻るぞ! ったく。お世辞言われて浮かれてんなよ!」


  はぁー?? まったく,何だっていうんだか,かりかりして…。


読んでいただいてありがとうございます!

なるべく毎週数回の更新をしています、もしよければ評価・ブクマ、感想等いただけたらとっても嬉しいです!

 作中と同じで、最近の夏は暑すぎなので、身体に気を付けましょー……(先日、日焼けしたら熱中症気味になりました……)

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