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「おい、助手。そんなところで何をぼさっと突っ立っている。探したぞ」

 後ろから遊間の呼ぶ声がして、私は我に返った。

「すみません、少し頭がぼーっとして。調べものは済んだのですか?」

「ああ、万事順調だ。今から、この場所へ向かう」

 遊間は胸ポケットから小さく折りたたまれた印刷用紙を取り出すと、それを広げて私に手渡した。神府町西部の地図のコピーだ。地図上には一か所だけ赤いサインペンでバツ印がつけられている。

「恐らく、ここが記事にあった殺人事件の現場だ。ここへ行けば、きみの記憶について何か手がかりを得られるかもしれない」

 遊間はその赤いバツ印を指さして言った。

「もう事件が起こった場所まで特定できたんですね」

 私が驚きの表情を見せると、遊間は得意げに答えた。

「なに、大したことではないさ。事件現場は小学校の裏山と記事にあっただろう? 二十年前の地図を引っ張り出して見てみたら、当時、近くに裏山があった小学校は、神府町には二校しかなかったんだ」

 遊間はそういうと、「文」の記号が描かれた場所を二か所指さした。

「あとは、その二校を中心に、周辺の地理についてネットで調べていたら、小学生の霊が出ると噂になっている場所が一か所だけ見つかってね。ほら、よく、火のない所に煙は立たぬ、っていうだろう? 恐らく、その場所こそが、かつて殺人事件の起きた現場なのだろう」

 そこまで話すと、遊間は地図から目線を外し、帽子のつばを軽く持ち上げた。

「ところで、助手。きみは車の免許を持っているかい?」

 遊間は唐突に訊ねた。

「そりゃ持ってますけど……それがどうかしましたか?」

 私は質問の意図をはかることができず、訝しみながら答えた。

「いや、僕は車を運転できなくてね。そこで、助手であるきみに、車を運転して僕を現場まで運び届ける名誉な仕事を与えようと思って」

 遊間は腰に手を当て、ふんぞり返って答えた。

「自分で運転できないだけのくせに、なんでそんなに偉そうなんですか……いいですけど、私、車は持ってないですよ」

「なに、問題ない。車はマスターのを借りればいい」

 またこの人は勝手に物事を進めて……。

 私は、今日何度目か分からぬため息を吐いた。

「そうと決まれば、一度、事務所に戻るとしよう」

 遊間はそういうと、地図を丁寧に折りたたみ、胸の内ポケットにしまった。

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