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全ての想いを君に  作者: ねこのけ
第二章
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第三十六話 月明りの下で


 訓練室でのある日の夜の事。僕とライサは同じ月を見上げ一緒に座っていた。


「とうとう明日だね~」


 僕の隣に座るライサは、崖側に足を下ろしてプラプラとさせていた。最近は髪を伸ばしているのか肩下まで栗色の髪の毛がかかっていた。


「心配じゃないの?」


 僕含めラースとかは、明日の決闘の日が近づくにつれて明らかに緊張していた。それなのにライサはあまり気にしてないようで、僕のそんな疑問にも落ち着いたように微笑んでいた。


「ん~まぁフェリクスがいるからね。大丈夫でしょ?」


 ライサが僕に同意を求めるように髪を揺らして、視線を向けてきた。昔の不安手気味だった時に比べて、なんとなく雰囲気が大人になったような気がする。


「僕というかブラッツさんが頑張ってるけどね」

「ん~~そうじゃなくてさぁ!!」


 ライサが不満を表すように足を大きくパタパタし始めた。さっきは大人っぽくなったと思ったけど、これを見るとそんな事は無かったらしい。

 そんな事を思っているとライサが更に不満気な顔をして、僕を覗き込むように近づいてきた。


「ねぇ!!聞いてるの!?」

「わ、分かったから。危ないから姿勢戻して・・・」


 すぐ下が崖なのによくそんな動き回れるなと思う。僕は未だに怖くて端っこから少し離れて胡坐掻いてるし。

 そんな僕に対してライサは、立ち上がって僕を見下ろすようにして言い聞かせるように言った。


「任せとけ!とか、守るよ!とかそういうので良いの!!!」

「は、はぁ。なるほど?」


 そう言われても、特に自分が何もしてないのに、自分の手柄みたいにそんなキザなセリフ言うの恥ずかしいんだけどな・・・。まぁ会話の流れ的にそうした方がいいのかな?

 

 そんな一応は納得をした僕を見てライサは座り直したけど、未だに不満そうだった。


「ほんとにフェリクスのそういう所変わんないよね!!」


 偶に僕の回答が気に入らないのか、こうやって怒ってくる事あるけど、何に怒ってるのかもよく分からない。僕の言い方とか気になるのかなぁ・・・・?


「ほぉ~ら、何考えてるの~??」


 考え込んでしまっていた僕の頬をライサは突っついてきた。座ったと思ったらまたこっちに寄って来たり、せわしなく動き続けているようだった。


「そうやってすぐ考え込んでさ~、そういう所も変わんないよねぇ~~!!!」

「き、気負付けるからその指離してって・・・・」


 こんな風に会話していると、ライサは昔に比べて安定するようになったと思う。会った頃とか情緒とかも不安定で、他人に依存しやすかったけど、最近は色んな人と話すようになったおかげか外向的で明るくなった気がする。


「言った傍から・・・・」

「ん?あっごめんって。その指向けないで」


 ライサが僕から一旦は離した指をまた僕に向けてきていた。やっぱりこうやって考える癖はライサとは合わないkな思う。これでちゃんとライサが僕の心読めたら、もっと大変だっただろうなぁ・・・・。


「私ね。最近フェリクスの心の声が分かるようになってきたんだよ」

「・・・・え?あ、そうなの?」


 ずっとライサは僕だけが心の声が分からないって言ってたから、転生者である事とかが関係しているのかと思ってたけど、どうやらそんな事は無かったらしい。

 てかそうなら近いうちに僕が転生者って事もバレるのかな。上手い説明考えとかないといけないか。

 

 そんな言われた傍から考え込んでしまっていた僕をライサは、またのぞき込んできた。


「焦った?嘘だよ~」


 僕をからかうようにライサが目の前で笑っていた。僕をからかうためで、ただ単に冗談だっただけらしい。


「いやまぁ焦ったけど、なんでそんな嘘を・・・」 


 そう僕が言うとライサは改めて向き直って言った。


「ま~いつも何か考えてるでしょ?だから少しぐらい私を頼ってほしいな~って」


 そう言ってライサは僕の頭を撫でてきた。身長も越したしそろそろ撫でられる事も無くなると思ってたんだけど。

 そんな状況に恥ずかしがって手を振り払おうとすると、ライサは頼ってくれと言わんばかりに立ち上がって自信満々に胸を叩いていた。


「これでも4つも上のお姉ちゃんだからね!」


 最近のこうやってライサは自分を頼ってくれと言う事が多い気がする。ライサなりの僕に対する思いやりなのだろう。


「でもあんまりライサはお姉ちゃんって感じしないよね」


 基本の言動とかの雰囲気もそうだけど、最近身長も抜かしたし尚更そんな感じがする。するとまたライサの指が僕の頬を直撃した。


「そうやってすぐ余計な事言う~」

「ごめんごめん」


 まぁそういうの関係無く、ライサがこうやって人と笑って話せる様になって良かった。これなら最悪僕が居なくなっても大丈夫そうかな。最近は他の子とも良く話すようになったし。


「・・・?どしたの?」

「いや、なんでもない。それよりも前のさ、、、」


 そうして月明りが少し眩しい夜は、ライサと他愛の無い話をして過ぎていった。


ーーーーー

 

 あたしは訓練室のドアに背中を預けて、ライサとフェリクスの会話を聞いていた。偶に寝れない時にこういう事をしているけど、ライサは何も言ってこないから、この位置ならあたしの心の声は聞こえないのだろう。


「・・・・・ッフ」


 相変わらずライサは、フェリクスと話す時は声が高くなって楽しそうな声になる。昔は人と関わるのも嫌がってたのに、あーやって今は楽しそうにしていてくれるのは私としても嬉しい。本当にフェリクスには感謝しかない。 

 

 最初こそはフェリクスの事が気味が悪いガキだと思っていた。でもそれはあいつなりの処世術で、自分や仲間を守るために得たものだと分かると、どこか昔のあたしみたいに思えてそんな事思わなくなっていった。 

 でもそうやって振舞ってるけど、同じようなガキだったあたしだから分かる。あいつ自身かなり抑え込んで我慢をしている。周りから軽蔑はされるし理解もされない。それになんせ親の仇のあたしがすぐそばにいるんだからな。もう気にしてないとか言っていたけど、あいつは大人だからラースみたいに反発しないだけで、恨んでるだろうし言いたい事もたくさんあると思う。

 

 そんなあいつを見ると捨てたはずの心が痛む。自分の為みんなの為、思考を止め心を捨てて誰かの大切な人を殺してきたのに、それを後悔してしまいそうになる。それをしたら今までのあたしが否定されてしまうのに。

 だからそんな罪悪感を直視しないために、あたしは薄っぺらい同情と心配をフェリクスに押し付けてきた。あいつからしたら親殺しのあたしからの心配なんざ、いい迷惑だろうけどな。


「ッチ、頭いてぇ」


 やっぱ考え事はあたしには向いてないらしい。人の気持ちなんざライサじゃあるまいし、いくら考えてもあたしには分からないって事だ。

 あたしはただ償いたい守りたい、そう思ってしまっただけなんだ。理屈なんてこねなくてもそれだけ良いんだ。

 そう思うとふと、懐のナイフが気になった。


「あの給仕服の奴のナイフか・・・・」


 一回だけ使ったことあるけど、かなり年季の入った手入れされていた良いナイフだった。なんとなくフェリクスにも渡しづらいし、捨てるのも気分にならなくて持ち続けていた物だ。


「そういや、あいつに頼まれたんだっけか」


 たしか死に際に敵であるはずのあたしに、なぜかフェリクスを頼まれた。あの時は理解できなくて気味悪かったけど、それがここまであたしに刺さり続けるとは思わなかった。


「明日返してやるか」


 逃げれたらの話だけど、そこであたしの役目は終わりだからな。その時にフェリクスにこのナイフを返してやればいいしな。そもそもあたしが持ってても仕方がない物だし。

 そうしてあたしは音を立てないよう立ち上がり、やるべき事をやるかと歩き出した時ガチャとドアが開いた。


「そんな所にいないでイリーナ姐も来なよ!!」


 そんな声に後ろを振り返ると、ドアからライサが顔を覗かせていた。


「いやあたしはいいよ。やることあるしな」

「え~~いいじゃん今日ぐらい」


 そうやってごねるライサと後ろで困ったような顔をしているフェリクスを後にして、あたしは再び歩き出した。

 そんなコツコツと足音だけが響く通路の途中で、ふと気づいたことがる。


「そういえばなんであたしいるのバレたんだ?」


 もしかして今までバレてないと思ってたけど、あたしが偶に二人の会話聞いてるの気づいてたのか?なんでわざわざそんな事黙っていたんだろうか。盗み聞きみたいな物だしライサからしたら、嫌がって当然だと思うんだが・・・。

 ライサの意図が掴めずまた頭を悩ませていると、今度は広場に人影が見えてきた。


「ブラッツか。どうしたんだこんなとこで?」

「お、そっちにいたのか」


 どうやらあたしに用があったらしく、ここまで探しに来ていたらしかった。そしてあたしは、話があるらしいブラッツと広場の一角に腰を下ろした。立っていると身長差があるけど、互いに座ると比較的目線が合いやすい気がする。


「いやぁ明日だな」


 天井から差し込む月明りを見上げてブラッツが呟いた。満月が近い事もあってかかなり部屋は明るく感じた。


「だな。準備は大丈夫そうか?」


 あたしがそう聞くと、ブラッツは自信満々そうにこっちを向いて親指を立てていた。


「おう!完璧よ!明日は任せてくれ!」


 ここ最近は理由は分からないが、ブラッツもどこか明るくなった気がする。あたしとしても昔から頑張っているこいつが楽しそうならそれでいいのだが。


「ありがとな。っと、あたしはもう少しやっておきたい事あるから行くな」


 あたしにはまだやる事がある。そうブラッツとの会話を早々に切り上げて、目的の場所へ向かおうとした。だがそんなあたしの手をブラッツが引き留めた。


「ちょ、ちょっと待ってくれ。まだ話はある」


 あたしが振り返ると、ブラッツは引き留めた割に戸惑った様子と言うか迷っているようだった。


「話って?」

「えーっとだな。その、あれだな」


 あたしがそう催促しても、ブラッツは要領を得ないような回答しかしてこなかった。

 何か計画に不備があって言いずらいのかと思い、こっちから助け舟を出してみるが。


「い、いや、そう言う事じゃなくてな」


 こんなブラッツ珍しかった。いつもはもっとはっきりした奴かと思ってたんだが、顔を赤くして視線も泳いでいた。やはり何かミスをして言い出せないんじゃないかと思っていると、ブラッツは自分で頬を叩いてあたしと視線を合わせてきた。


「あ、あのな!あの時の事謝りたくてさ!」

「あの時?」


 そうブラッツが言うが、あたしには特に思い当たる節が無いのだが、何を謝ろうとしているのだろうか。そう疑問に思っているとブラッツは、あの時の事だよと必死になって訴えてきた。


「俺と初めて外に出た時だよ!」

「・・・・・・?」


 いつ頃の話だっただろうか。確かにあの辺はあたし自身周りと話そうとしてなかったし、空気が悪かった気がするが、ブラッツと何かあったけか。


「・・・覚えてないのか?」

「すまん。何のことか分からないから教えてくれないか?」


 せっかく勇気を出して言ってくれてそうなのに、あたしが覚えてないのは罪悪感あるな。でもブラッツと喧嘩したような記憶なんて無いし、記憶にないもんで謝られてもなぁ。


「で、でもあの時からなんか俺に対して距離無かったか?」

「そうか?どっちかと言うとお前の方から、あたしと距離置いてなかったか?」


 あたしがそう言うとブラッツはポカンとしていた。でも実際あのあたりの時期は皆から距離置かれてたし、ブラッツも私の事を嫌っているのかと思ってたんだが。


「普通に嫌われたんだと思ってたんだが」

「え、え・・?は?なんで俺が嫌うんだよ」


 ブラッツは相変わらず状況が掴めないようで混乱しているようだった。かく言うあたしもなんでブラッツが謝ってきているのかが、分からず話が見えてこなかった。


「・・・・俺が気にしすぎてたってだけなのか?」

「まぁそうじゃないのか?あたしは特に何とも思ってないぞ」


 あたしがそう言うと力が抜けたのかブラッツは、へたり込んでしまった。まぁ何かしら互いにすれ違いがあったらしい。


「ま、まぁそうだよな。イリーナってバカだしそこまで考えないよな・・・・」


 突然そんな失礼な事をブラッツが言い出した。


「お前謝りたいのか煽りたいのかどっちかにしろよ」

「いやぁもう何か勝手に悩んでた自分があほらしくなってさ。すまんすまん」


 だからと言って今の煽りは許せないんだが。こっちが頑張って慣れない気を使っていたのにバカってなんだバカって。

 あたしはそんなブラッツに呆れたように腰に手を当てた。


「ほんとにお前はいらん事しか言わないなぁ」


 するとブラッツは調子が戻ってきたのか、頭を掻いて飄々とした感じで言った。


「それが俺の取柄ですから」

「うるせ」


 あたしはブラッツの頭をこつんと叩いて、二人して笑い合った。そんな空間がなんだか懐かしい感じがした。

 あぁそうだ確か昔こいつの家族と夕飯を食べてた時もこんな感じだった気がする。あの時もこんな感じで笑い合ってたけど、ここに来てからはそんな事無かったから懐かしく感じたんだ。

 そう感傷に浸っているとブラッツが立ち上がった。


「ま、いいや。イリーナが笑ってる所見れたし悔いはないわ」

「んだよそれ」


 ブラッツは憑き物が取れたように、晴れた顔をしていた。どうやらもう悩みや心配事は無いらしい。そんなブラッツはもう私に用は無いらしく、お別れだと軽く手を振ってきた。


「じゃあ行ってきな」

「あいよ」


 あたしはナイフの位置を確認して、蝋燭を持って暗い通路を照らしながら進んでいった。

 

 そうして静かになった広場で。

 俺は必死に顔を作って先を行く女を見送っていた。そんな女が見えなくなった頃俺はポケットから瓶をとり出した。


「これが役に立てばいいんだが・・・」


 あの頭を止めるには正攻法じゃなく、こういう奇策じゃないと通用しない。遠方から頭が取り寄せたものらしいが、一定条件下で火をつけると爆発するらしい。実際に使ったことは無いが、最終手段として使うために倉庫から一部を盗んで用意した。


「まぁどっちにしろ俺は死ぬだろうけどな」


 これを使おうが使わまいが、結局あいつらを逃がすには頭含め他の奴らを足止めをする役が必要だ。この事を言うとイリーナがやりたがるから、黙って俺がやるしかないんだがな。


「ま、惚れた女の為に死ねるならそれはそれでいいか」


 こんな事面と向かって言ったら、イリーナはどんな反応をしただろうか。

 あの俺に笑いかけてくれた笑顔がどんな変化をするのか。恥ずかしがるのか、バカにしてくるのか、俺にはもうそれを知ることは出来ない。


「・・・・だっせぇな俺」


 一人の男が少しの後悔を抱えて、顔を誰にも見られないよう月の浮かぶ空を見上げていた。


ーーーーーー


 それから少し月が傾いた時。ある一人の男が剣の手入れをしていると部屋の扉が開かれた。


「今大丈夫ですか?」


 そこに立っていたのは、私が昔から目を掛けてきた青髪の女の子が立っていた。


「イリーナかぁ。こんな時間にどうしたんだい?」


 ロルフの話だと逃亡を企てているんだっけか。まさかこの子が私に牙をむくなんて思いもしなかった。まぁそれでも寧ろ好都合で、私としては大歓迎な展開なんだけどね。


「なんで止めないんです?」


 やはりずっと私の傍にいただけあって、私がもう計画に気づいていると踏んでいるらしい。まぁ当たりなんだけど、反応見てみたいしとぼけてみよう。


「・・?止めるって?」

「分かってるんだろ。お前が何も気づかないわけがないだろ」


 おぉ随分と私を買ってくれているようだね。それにいつの間にか敬語もなくしてるし敵意マシマシだね。

 てかそれにしてもこの子も良い目をするなぁ。せっかくこの目を潰せるチャンスが来たんだから、計画を止める訳が無いのにこの子は何言ってるんだか。やらせた上で潰した方が楽しいに決まっているのにさ。


「もし私が気づいてるならどうするの?」


 すると私の質問に対して目の前の女の子は、言葉ではなくナイフを取り出した。


「ここであたしが決着をつける」


 そう言ったかと思うと一気に距離を詰めてきて、ナイフを私の首元に当ててきた。後ろには机があるから逃げれないけど、どうせ私を殺せないだろうし、まだ話を聞いてみようかな。


「っと、随分積極的だねぇ。どうしたのさ」

「なんで避けない」

「いやぁもう年だからねぇ」


 私の回答が気に入らないのか、首元に突きつけられたナイフの先端が皮膚に当たって血が流れた。でも強気には見せてるけど、ナイフが震えていて怯えが隠せてないけどね。


「何も言う事が無いならここで殺す」


 それでも昔はあんなに私に怯えてたあの子がここまでするとは感慨深いねぇ。これが子育てってやつかな?

 まぁそれは置いといてもここでこの子を殺すのは面白くないなぁ。せっかくだしフェリクス君とか明日まとめて相手したいしなぁ。


「本当に殺せると思ってるのかい?」

「ッチ、なめやがって!!」


 女の子が突きつけていたナイフが、私の首に押し込まれそうになった瞬間、女の子のがら空きだった腹を蹴飛ばして距離を取った。


「っとやりすぎたかな?」


 どうやら壁にぶつかった時に、当たり所が悪かったのか頭から血を流していた。でもそれでも女の子は立ち上がってナイフを構えた。


「おぉいいねぇ。その目だよその目」


 再び女の子が私に突撃をしようと姿勢を低くした。でもこれ以上戦うのは明日の楽しみが無くなってしまう。だから私は扉の方を指差して少し揺さぶりをかけてみた。


「私が死んだら、すぐにあの子達はロルフに殺されちゃうよ?」


 すると案外あの子供に情があるのか、今にも襲い掛かりそうになっていた女の子はそれ以上詰めようとはせず止まっていた。

 やはりフェリクス君を逃がすために計画したのかな。いやぁそれならついてるなぁ。


「明日の昼まで見逃してあげるから、ナイフおろしてくれない?」

「・・・・断ったら?」

「それは君が一番分かってるんじゃない?」


 そう私が言うと素直にナイフを下ろしてくれた。まぁフェリクス君を守るなら、ここでそれしか取れる選択ないだろうしね。


「それで、あたしはここで殺されるって訳?」

「いやぁ?明日も頑張ってもらうよ」


 なんでわざわざ楽しみを減らす事をしないといけないのか分からない。あ、でも敵討ちって感じでフェリクス君達が立ち向かってくるのもよさそう。

 ん~いやまぁでもこの女の子ともちゃんと戦いたいしなぁ。ここは苦しい選択だけど今は我慢かな。


「ま、そう言う事だから帰りな」


 私はやっぱり楽しみは取っておくタイプだったらしく、今は我慢して悔しそうな女の子を部屋の外に出した。それになにやら、この女の子と同期の金髪の男の子も何かしているっぽいしね。彼らの計画通り進めさせてあげようじゃないか。


「いやぁ楽しみが多すぎて今日寝れるか不安だなぁ」


 私は静かになった部屋で剣を再び研ぎだした。



 そんなそれぞれが違う想いを抱いて、少しだけ欠けた月の浮かぶ夜が過ぎていった。


 




 

 

 


 


 

 

 

 



 

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