第二十二話 またあした
ここでの生活が始まってもう一週間は経とうとしていた。最初こそは慣れない環境で寝れなかったりしたけど、なんだかんだこの生活に慣れてきた。
ただ一点の問題を除いて。
「ね!フェリクス!これ見て!!すごいでしょ!!」
「う、うんそうだね。でも、そろそろラース達の方にさ・・」
今僕とルーカスが素振りをしているそ傍で、ライサがラースを放置して僕に魔法を披露していた。
僕がラースに魔法教えるようにライサに言っても。
「だってラース君ずっと怒ってて嫌だしー」
最近はこんな感じで、ライサとラースの対立が深くなってしまっている。今も昼の訓練の時間だけど、ライサがラースに魔法を教えるのを嫌がって、僕の方に来てしまっているのが何よりだし。
それにこうやって僕とライサが話しているだけで、ラースがすごい怒った顔で見てくるしでかなり困った状況だ。だから毎回イリーナに助けを求めるのだが。
「い、イリーナさん?どうにかした方が良くないですか?」
僕がそう言うと、壁にもたれかかっていたイリーナは、こちらに近づいてきてライサの手を引っ張った。
「・・・はぁ、おいライサ。もう十二なんだからわがまま言うなって」
「ラース君ずっと殺すとか怖い事考えてるから嫌!」
「そんなん言ったってなあ・・・・」
結局毎回こうなって結局話が進まない。ラース側からの解決案を探ろうにも、ラースからしたら親の仇連中だから、なんで妥協しないといけないんだって感じだしどうしたものか。
「ね、ねえ」
そんな時隣で素振りをしていたルーカスが肩を叩いて話しかけてきた。
僕はどうしたのかとルーカスに聞き返すと。
「フェリクスから言ったらライサちゃんは、ある程度言う事聞いてくれるんじゃない?」
「・・・それはそうかもしれないけどラースの方はどうするの?」
僕がそう聞くとルーカスは自信ありげな顔で、策があると言ってラースの説得に向かってしまった。
ルーカスが動いた以上僕も静観する訳にはいかないから、イリーナに駄々をこねるライサの元へ歩いた。
「ら、ライサ?ラースは僕の友達だから仲良く出来ない?」
「・・・・・・いや。そもそもラース君が仲よくする気ないじゃん」
「それは・・そうかもだけどさぁ」
やっぱりラース側からも何かしら歩み寄ってくれないとダメそうだなあ。
そう思って説得に向かったルーカスを見ても、まだラースを説得しきれて無さそうだった。
「やっぱさ。ライサって年上じゃん?ラースに大人の余裕を見せてみない?」
「えーーー、そう言われてもぉ」
少し迷ったような素振りを見せたけど、結局ダメそうだった。
それからも色々言い方とかを変えて説得を試みるけど、中々ライサを説得できなかった時。やっとルーカスがラースを連れてきた。
「ほら、ラース」
そう言ってルーカスがラースの背中を押す。
「あー、んっと。すまなかった。俺に魔法教えてくれ」
ラースはその言葉と共になんと頭を下げていた。こんな素直なラースを初めて見たし、まして謝らせれるなんて思ってなかったから、かなり驚いた。
するとライサも少し驚いたのか、意表を突かれた表情になっていた。
「んーーま~そこまで言うなら?教えてあげても良いよ。内心不満なのは分かってるけどね!」
「・・・・・おう。頼む」
またライサが少し煽るような事言ってしまっていたが、ラースもそれに反応を見せつつも我慢してくれたおかげで、何とかこの場は収める事が出来た。
そうしてまたライサに教えられながらラースとエルシアが魔法の練習を始めた。
そんな魔法に苦戦するラースと、エルシアの魔法が綺麗に外に飛んでいくのを見ながら、僕とルーカスと素振りを再開した。
僕は飛んでいく石魔法から視線を戻して、隣のルーカスにどうやってラースを説得したのか気になるので聞いてみた。
「単純に煽っただけだよ。最近は少しは大人しくなったけど、結局はラースだからね」
大概ルーカスもラースに対する評価は低いようだった。だがどうやって煽ったら、あのラースを謝らせれたんだろうか。
「どうやって煽ったの?」
「普通に魔法も使えないなら、盗賊を殺すなんてラースには一生無理だろうねって」
「あーそう言う事」
案外そう言うので乗ってしまうものなのか。まぁまだ八歳の子供だしそんなものか。逆にそんな事考えてるルーカスが賢すぎるぐらいだしな。
「どう?すごいでしょ?」
ルーカスが褒めてほしそうに僕の方を見てきた。
「流石だね。やっぱ頭いいよねルーカスは」
「でしょ~」
ルーカスもここ一週間で、この状況に慣れたのかこうやって笑うことが増えた。言い方はあれだけど、いつまでも引きずっていると、精神衛生上良くないしな。切り替えれる分には良い事だ。
その後は特に喧嘩が起きないで欲しかったが、結局ラースとライサはまた喧嘩してしまっていた。それを他の三人でなんとか仲裁に入りながら訓練を続けていると、気づいたら訓練の終了時刻の夕方になった。
その時間になって僕はラース達が部屋を出ていくのを見送って、イリーナとの稽古の為部屋で座って待機していた。
「綺麗だ」
いつもライサと座っている崖ギリギリの所に僕は座って景色を眺めていた。ここからも夕日は見えないけど、夕日を反射して橙色になっている山々はかなりの絶景だ。
「これが盗賊の拠点じゃなければなぁ」
「じゃあそこの崖から逃げてみたらどうだ?」
いつの間にかイリーナが部屋に戻ってきていたらしく、振り返ると僕の後ろに立っていた。それを見て僕はなんて言い訳しようか焦っていると、特に僕の発言にそれ以上何も言わずイリーナが僕の隣に座ってきた。
「さっきはありがとな。あいつがあーやって自分を出すのが珍しくてな」
「いつもは違うんですか?」
会った時から比較的明るいイメージだったから、イリーナの言うようなイメージがない。やっぱ心が読めると何かしら性格に暗い影響でもあったのだろうか。
そんな事を僕が考えていると、イリーナは右足の皿に頬杖を突いて話し出した。
「元々はあんな感じだったんだけどな。前にお前らみたいなガキの監視役した時にちょっとな」
「・・・詳しく聞いても?」
僕がそう聞くとお前なら心読まれないし良いかと、イリーナは話し出してくれた。
聞いた内容をまとめるとこんな感じだった。
孤児だったライサを連れてきた当初は、僕が見てきたような明るい性格だったらしい。だがそれから数年経った時、初めての監視役の時連れてこられた子供が、ほとんどラースみたいに反発していたらしい。もちろんライサも初めての同年代の子だったから、友達になろうとするが拒絶されてしまったらしい。それに心が読めるのも余計に距離を置かれる原因になって、ほとんど話してもらえなくなったと。
そこからはもうどうにもならなかったらしい。やっと会えた同年代の子達から、相手にされず気持ち悪がられて、子供のライサには過度なストレスになっていた。それでイリーナ以外に心を開かず極端に話すのが苦手になったと。
「で、二回目に連れてきたガキ共ってのがお前らなんだよ。また監視役やってくれるよう、説得するのに骨が折れたさ」
「・・・なんでそこまでライサの能力にこだわるんです?結局暴力で従わせた方が早くないですか?」
ライサの能力は確かに逃亡とか反乱防止に役立つけど、普通に暴力とか洗脳とか、子供相手に従わせる方法なんていくらでもありそうだが。
「最初はそうだったんだけどな。暴力で従わせたり子供にストレスを掛けると、なぜか極端に魔力量が下がる事がほとんどなんだよ」
これは初耳の情報だった。だから誘拐された割に飯が良かったり、タコ部屋じゃなかったりと色々待遇が良かったのか。
するとイリーナは自慢げに笑みを浮かべると僕を見た。
「ちなみにあたしはその頃の唯一の成功作だな」
「イリーナさんも僕らと一緒なんですか?」
僕が恨むべき人ですら、この盗賊という組織の被害者だったのか。これをラースが知ったら悩むだろうか。それに僕自身も今この人に対して、どう感情を向ければいいか分からなりつつある。
「同情すんじゃねぇ。あたしは今は何不自由なく暮らせてるしな」
そう言ってイリーナは笑みを消しひどく淀んだ目を僕に向けてきた。
「これは忘れるな。あたしはお前の両親を殺したんだ。お前の仇であって味方とか仲間とか勘違いすんなよ」
「・・・はい」
それは分かっているつもりだ、ただ感情の問題ってだけだ。それに昨日とかも血まみれになって帰ってくるイリーナを見かけたし、境遇はどうあれそういう奴である事を忘れるつもりはない。
「でもライサの事は、多少は気にかけてやってくれ。お前に頼むのもお門違いなのは分かってるけどな」
さっきまでの表情はどこへやら、柔らかい表情になった。多分この人にとってライサは家族同然の存在なんだろうなってのが伝わる。
「・・・分かりました。でも多少はイリーナさんからも注意してあげてくださいよ。いつまでもラースと喧嘩されたらたまったもんじゃないですし」
僕がそう言うと、はいはいと言った感じで聞いているのか聞いてないのか分からない態度で、イリーナは立ち上がってしまった。
「じゃ、鍛錬するぞ」
その言葉と共に、僕らは木刀を持って向き合った。
ーーーーーーー
「はぁーーーー疲れた」
全身が痛む体を引きずって、何とか夕飯を食べるために食堂の扉を開いた。
「お疲れ様~フェリクス。これ使って」
僕が部屋に入ってくるなり、ライサがタオルのような物を持ってきてくれた。
「ありがとライサ」
「どーいたしまして!」
僕は汗をひとしきり拭くと、いつものようにルーカスの隣に座り夕飯を食べだした。そうしていると、ライサもパンとスープを持って僕の隣に移動してきた。
「私フェリクスが戻ってくるまで食べずに待ってたの!」
「あ、ありがとう・・」
一緒に来たイリーナの方をチラッと見るが、疲れているのか壁にもたれかかったまま目をつぶっているだけだった。
僕がそんなイリーナから、食事をしようと食卓に視線を戻すと、ラースが少し不満気な表情でこちらを見ていた。
「どうしたのラース?」
「・・・・いやなんでも」
まぁ大方ライサと話すだけでもラースにとっては嫌なんだろう。やっぱイリーナとラース両方の要求のバランスを取るの難しそうだな。
そう色々頭の痛い悩みが増えたと思っていると、ライサに肩をポンポンと叩かれた。
「考え事してないでご飯食べよ?」
「あ、うん。そうだね食べよっか」
この日の晩御飯もライサにずっと話しかけられていたから、食べ終わるのがかなり遅くなってしまった。途中途中ラースの視線が痛かったが、何とか喧嘩にはならなくてよかった。
そうこうして夕飯も食べ終わり、もう寝る時間になった頃、僕はまた訓練室の前にいた。ここ一週間毎日ここに通っているから、この時間に起きているのにも慣れてきた。
そうして僕はノックをせずそのままドアを開けた。
「おじゃまします」
「お!まってたよー!」
いつものように危なかっしい所に座るライサの隣に腰を下ろす。今日は何の話をしようか、そんな事を考えているとライサの方から話し出した。
「今日なんて味方してくれなかったのー?あれ絶対ラース君が悪いじゃん」
「うーん、それはごめんね。でも少しはラースの気持ちも考えてあげれない?」
僕なりにラースとライサが仲直りしてくれればと思っての発言だったが、それがライサの何かに触れてしまったようだった。
「気持ちって何!?私心の声聞こえるんだよ??全部気持ち聞こえるからラース君が嫌って話してるの!!分かる!??」
そんな唐突に怒りをあらわにしたライサに僕は面を食らって上手く言葉を返すことが出来なかった。なんとかそんな中でも落ち着かせようとするが、ライサの怒りは収まらなかった。
「え、あ、えっと、一回落ち着いて・・・・」
「だってさ!教えても感謝しないし、それどころか嫌いだの死ねだの思ってるんだよ??仲よくする方が無理じゃん!!」
まずい、ライサの怒りがどうも収まりそうになかった。良かれと思ったことが裏目に出てしまった。今ラースの肩を持つとまずい事になりそうだけど、どうするべきだろうか・・・・。
「フェリクスもフェリクスだよ!私がこんなに言ってるのにすぐ考え事してさ!!!」
僕はとにかくライサが落ち着ける様、必死に言葉を吐き出した。
「と、とにかく落ち着いて。まず僕はライサの味方だからね。それにだからこそ友達のラースと仲良くしてとまでは言わないけど、喧嘩はしないで欲しいなって思ってるの」
僕は早口にならないよう落ち着いて、出来るだけ低姿勢に、ライサを刺激しないようちゃんと目を見てそう言った。イリーナの話的にライサのメンタルも不安定気味だろうし、より慎重に言葉を選ばないといけない。
「なんで私ばっかり言うの!?!?ラース君の方にも言ってよ!!なんで私ばっかり怒られないといけないの!!!」
「ラースにも同じように言うからさ。ライサは分かってくれる?」
僕はとりあえずこんな崖際で暴れたらまずいと思い、宥めつつライサの肩を掴んだ。
「じゃあ次喧嘩した時フェリクスは味方してくれるの!?」
「味方するよ!するからさ!ラースの事もちょっとでいいから分かってくれる?」
ここで味方すると断言しないと、ライサの過去的に危なそうと考えて味方すると言った。だがこれはラース側と後々喧嘩が起こった時、拗れそうだから何かしら対策を打たないとな・・・・。
「・・・・・ラース君の事って?」
少しは落ち着いてくれたようで、ライサが話を聞く姿勢を持ってくれた。
「ラースも大事な両親がここの人たちに殺されちゃったばっかりなの。だからそう簡単にイリーナさんとかライサの事受け入れるの難しいの」
それを聞いてライサが少し考え込んでしまった。まぁでもさっきみたいに怒りが前面に来ていないから、多少は落ち着いて考えてくれてると思いたいのだが。
そうしているとライサが口を開いた。
「じゃあラース君がひどい事思わなくなったら、私もちゃんとする」
「分かった。ありがとうねライサ」
僕はなんとなくライサの頭を撫でた。これまで人に褒められる時頭を撫でられてきたからか、つい手が動いてしまっていた。
「・・・うん。フェリクスの事信じてるから」
でも撫でてもライサが嫌がるどころか喜んでいたようで良かった。
まぁそれはともあれこれでライサの方は、ひとまず落ち着いたから良かった。次はラースを説得しないとだから、寝る前に戻らないといけないな。
「じゃあラースにも言ってくるから、今日はもう帰るね?」
僕は撫でる手を離して立ち上がる。
「じゃあまた明日ね」
僕はそう言って蝋燭を手に持ち扉に向かう。後ろからライサの返事が返ってきた。
「・・・またあした」
その言葉に応える様手を振った。そして僕が部屋を出る時、また何かライサが言いかけたような気がしたが、言葉を引っ込めたのか聞こえなかった。
まぁ明日気になったら聞けばいいかと、僕はラースの元へ急いだ。
そうして部屋に戻ろうとしたら、一週間ぶりにエルシアが広場に座っていた。
そのエルシアにどうしたのか聞いてみると。
「さっきまでルーカスと兄さんの仲裁してたから」
「あーそう言う事・・・」
エルシアはエルシアで兄貴をなだめるので苦労していたらしい。ルーカスも意地っ張りな所あるから、昼の事で、また言い合いになっていたのが想像に容易い。
「今からラースにライサの事話そうと思ってるけど、大丈夫だと思う?」
「・・・・うーん。ちょっとどうだろう」
タイミングが悪いか・・・。
でも今日じゃないと明日またラースが暴言を思ったら、またライサと喧嘩になってしまうしなぁ。
「エルシア、手伝ってくれない?そろそろ、どうにかしないとダメじゃない?」
「・・・・まぁそうだね。分かった手伝うよ」
エルシアも魔法の訓練で大分疲れているだろうに、手伝ってくれて感謝しかない。
そうして僕がラースに言おうとしている事をエルシアと共有してから、部屋に入った。
「・・・・・っとこれは」
部屋に入るとルーカスは隅っこで泣いてるし、ラースも毛布で包まってしまっていた。とりあえず泣いているルーカスを落ち着かせてから、ラースに毛布越しに話しかける。
「ラース。ちょっと話良い?」
「・・・・・なんだよ」
「ライサの事なんだけど・・・」
そう言うとラースは飛び起きてまた怒りだしてしまった。
「お前もどうせ俺が悪いって言うんだろ!!」
「違う!違うから!!一回座って!!ね!!!」
僕はラースに負けじと声量を張り上げて、どうにかラースを落ち着かせに行く。かなり強引だったけど、ラースを落ち着かせて座らせることができた。
「ライサから話聞いたんだけどさ。死ねとか嫌いとか思ってるのは本当?」
ラースが暴れないよう肩を掴んで、正面から目を見て僕は話した。
「・・・・本当だよ。あいつらのせいで父さんも母さんも・・・・」
やっぱりそう言う事だよな。こればっかりは仕方ない所もあるけど、このまま喧嘩させ続けると何が起こるか分からないし、どうにか納得してもらうしかないな。
僕は一つのカードを切った。
「ライサもさ誘拐された子なんだってさ。僕らと同じでさ」
「・・・え?」
イリーナから聞いた話をまとめて、僕の推測を入れた話だけどおおむね本当の事は言っているはず。ライサからしたら言ってほしくないかもだけど、これならラースも共感しやすいだろうし。
「だからイリーナは当然かもだけど、ライサを恨むのは違うんじゃないかなって。そう僕は思うんだけど、どう?」
イリーナは直接殺しているけど、ライサに関しては僕らが攫われたことには何も関係ないしな。これでラース分かってくれたらいいのだが・・・・。
「私もライサちゃんの事良い子だと思うよ。あれだけ暴言言ってた兄さんに、ちゃんと魔法教えてくれてたし」
迷っているようだったラースに対して、エルシアが援護射撃を入れてくれた。
そのおかげかラースが不貞腐れながらも口を開いてくれた。
「・・・・分かったよ。俺も気を付ける」
「ありがとうね。ラース」
僕はさっきと同じようにラースの頭を撫でた。
だが、ラースは恥ずかしがてすぐに僕の手を振り払ってしまったが。
「じゃあ俺明日ちゃんと謝るわ!」
ラースが改めて立ち上がってそう宣言した。ラースのこういう切り替えの良い所は美徳だな。そう思い褒めてみるが。
「お!偉い!流石ラース!!」
「・・・・お前煽ってるだろ」
ちょっと調子乗りすぎたらしい。八歳の子供相手ならこれぐらいおべっかでもいいかと思ったけど、そうでもなかったらしい。
「ま、まあそう言う事で!皆寝よっか!」
僕は話を逸らすためにそう言って、蝋燭をフッと消した。
「あ!おい!早いって!」
そんなラースの声が聞こえたが、僕はもう今日は終わりと遮るように大声で言った。
「じゃあまた明日ね!!」
ルーカスとエルシアが返事してくれたのを聞き届けて、僕はそのまま毛布に包まった。最後にボソッとラースも返事してくれていたようで少し可愛かった。
ひどく疲れた体を横にして、もうこれで解決だと良いのだが、そう思って僕は眠りに落ちた。




