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全ての想いを君に  作者: ねこのけ
第二章
22/149

第二十一話 お話ししようよ


 ライサとの会話で疲れ果てて、泥のように眠った日の次の朝。誰かに揺らされる感覚でだんだんと意識が覚めてきた。


「・・きて・・・おきて・・・起きて!!」

「・・・・ん、うん・・分かったから・・・」

 

 まだ寝たい気持ちが九割だけど、何とか体を起こして瞼を開ける。小さな採光用の穴から見える空は相変わらず暗い紺色だった。

 そんな空を見て起き上がったままボーっとしていると、僕を起こしてくれた声がまた聞こえてきた。


「兄さんたちはもうご飯行ったよ」

「うん分かった。わざわざありがとう」


 蝋燭も無くて誰に起こされているか分からなかったけど、どうやら声からしてエルシアが起こしてくれたらしい。確か前にもこんな事あったようなと、僕は思いだしながら立ち上がった。

 そうしてエルシアを待たせるわけにはいかないので、すぐに毛布を畳んで出ようとしたら、外側から部屋の扉が開いた。


「おはよ~起きてる~?」


 開かれた扉の先には、蝋燭を持ち元気そうに笑っているライサが立っていた。


「あ!エルシアちゃんもおはよう!」

「お、おはようございます」


 エルシアもライサのテンションに押されているようだった。


「で!フェリクス!おはよう!」

「う、うん、おはよう」

「じゃあご飯いこっかー!」


 嵐のようにやってきたと思ったら、すぐに僕とエルシアの手を楽しそうに引いて朝食に連れて行ってしまった。

 まぁこういう所を見ると、昨日はライサの事少し怖く感じたけど、やっぱり同年代の友達が欲しかっただけなんだなと思う。だがやはり仲良くするには僕らの立場は複雑すぎる。

 

 そうやって僕らはそのまま連れられて、食堂に入ると既にラース達は食べ始めていたようった。朝日が既に部屋に入り始めてることからも、ラース達が早いってよりは僕が寝坊したって事らしい。


「あ、おはようフェリクス」

「ルーカスおはよう」


 ルーカスとの挨拶を済ませて部屋に入ろうとした時、ラースと目が合った。だがラースの視線は、ライサと手をつないでる僕らの手に視線が行っていた。


「おいエルシアこっち来い」


 やっぱりライサの事は嫌いなようで、エルシアの手を引っ張って自分の隣に座らせてしまった。

 僕も扉の前で立ちっぱなしにいるわけにはいかないので、そのままルーカスの隣に座った。すると僕の隣に続くようにライサも座って朝食を食べだした。


「ここの朝食いつもこれなんだよねぇ~」

「へぇそうなんですか」


 まぁ元々ご飯に期待してなかったから、僕としては普通のパンとスープの食事が出るだけでもありがたいんだけどな。

 そんな話をしていると、食事に混ざらず立ったまま待機していたイリーナが、ライサの頭を掴んだ。


「不満があるなら、お前だけでも犬の飯にするぞ」

「本当はそんな事思ってないくせに~」

 

 そう言ってライサがお返しと、イリーナの割れた腹筋を突っついていた。


「だぁから!心読むなっての!恥ずかしいだろ!!」


 なんかこういう楽しそうな光景を見せられると、何とも言えない気持ちなる。自分の親を殺した恨むべき相手が、こうやって人並みに笑って人と話しているのを見ると、恨むに恨み切れない。悪人なら変に良い人な一面を出さずに、悪人らしくあってくれた方が良いのに。


「ん?どうしたの?また考え事して」


 ふとライサの視線が僕を向いた。そうかそうだった心の声自体は聞こえているんだった。

 そして僕はなんとか誤魔化すように。


「い、いや仲がいいな~って」

「違うわ!あたしは仕方なくこいつとはなあ!」


 そう反論しようとするイリーナの言葉にかぶせるように、またライサがからかうような表情で。


「心の声聞こえてるよ~?」

「こいつはぁ!!」


 そんな二人がじゃれているのを何とも言えない感情で見ていると、突然ダンッ!!という音が聞こえた。

 その音に一瞬部屋全体が静かになった。僕はゆっくりその音のした方を振り返ると、ラースが両手をテーブルの上に叩きつけて立っていた。


「・・・・俺食べ終わったんで訓練行ってきます」


 それだけ言って乱暴に扉を閉めて出て行ってしまった。エルシアもルーカスもどうしたらいいのか分からないと言った表情で、固まってしまっていたようだった。


「ま、まぁあれだ。早くお前らも食べて訓練行くぞ!」


 イリーナがそれだけ言って皆黙々と朝食を食べていたが、ライサが僕に話しかけ続けるから部屋が静かになることはなかった。やはり僕らの立場にとって彼女らは厄介な物らしかった。


ーーーーーー


 そして昼間。

 昨日と同じように訓練室で、僕とルーカスが端っこで剣術をして、ラースとエルシアがライサに魔法を教わっていた。で、これも同じようにイリーナはただ壁にもたれかかって見守っているだけだった。


「ライサちゃんと何かあったの?朝ずっと話してたけど」


 一緒に木刀を振っていたルーカスが、朝の事が気になったのかライサ達の方を見ながら聞いてきた。


「んー昨日夜たまたま話して仲良くなったからかな」


 ここで変にライサの機嫌を損ねるような事言って、ルーカスの心読まれたらたまったもんじゃないしな。ルーカス相手には、経緯はどうあれ仲よくしてるって言わないと。


「思ったんだけどライサちゃんって、もしかしたら僕たちと一緒なのかもね」

「・・・かもね」


 ルーカスの言う通りライサも、僕らと同じように誘拐された側なのは想像に容易い。ましてやあんな能力があるんだ、盗賊じゃなくても欲しがる人は多いだろう。そういう環境の中育ったから、昨日みたいな少し強引な交友関係の作り方をしようとしたのかもしれない。


 そんな事を話していると、ラースが魔法を使えたようで少しはしゃぐ声が聞こえた。


「ぼ、僕も頑張らないと。フェリクス達と違って魔法使えないんだから!」


 ルーカスがそんなラースを見て、改めて気合を入れるように言っていた。

 

 でもそんなルーカスについて僕はずっと疑問だったことがある。

 それはなぜルーカスまでも誘拐されているのかという事だ。イリーナの言い方的には、少年兵を作りたいのだろうが、わざわざ魔法の使えないルーカスをここに置いておく意味がない。さっさと売り飛ばすのが、イリーナ達的には得なはずだ。


「もしかして」


 ・・・・・・僕らに対する人質とかだろうか。

 ふとそんな可能性が頭によぎったが考えても仕方ない。そう切り替えて僕もルーカスに負けないように剣を振った。


 それから昼飯を取った後。イリーナがライサに僕以外の三人を連れて行くように指示をして、訓練室には、僕とイリーナだけになった。


「お前あたしの事恨んでるって言ったよな?」


 イリーナが落ちていた木刀を拾い、入り口を塞ぐように立って僕に質問を投げかけてきた。

 そして僕はその質問にゆっくりと頷くと、満足そうに笑って腕を伸ばしながら言葉をつづけた。


「じゃあ、あたしに剣当てれたらあたしを殺す権利をやる。その代わりあたしが勝ったら、一つ言う事を聞いてもらう」


 この女の意図が分からなかった。イリーナからしたら、リスクが大きすぎるこの提案。それに対応する言う事を聞けっていう要求が、どんな物か想像もできない。


「まぁまぁそんな警戒すんなって。お前とは穏便に行きたいから、こういうやり方してんだよ。普通に強制してもいいんだぜ?」


 まぁそれはそうか。わざわざこんな面倒くさい事しなくても、子供相手なんだから強制するなんて簡単だしな。本当にこいつの言う通り、わざわざ僕が納得しやすい形で命令したいってことなんだろう。

 そう考え僕は不穏に感じつつもこの提案を受けることにした。


「じゃあ分かりました。怪我したら治癒魔法かけてくださいね」

「おいおい、やる前からそんな事考えてたら勝てるもんも勝てないぜ~?」


 木刀を肩にトントンしながら、イリーナがそんな煽るような事を言ってきた。まぁこいつは盗賊だし、そんな事気にしても意味ないかと諦め、僕も木刀を構えた。


「お、流石に多少形は教わってるっぽいな」


 そりゃ一年父さんに教わっていたんだから、多少は戦えるようになったと思いたい。


「じゃあ行くぜ!」


 そう言うと同時にイリーナが一気に接近してきて木刀を大きく振り上げた。


「・・・・ッチ」


 大振りで隙だらけの攻撃だった。だからと言って、大人の剣を振るスピード相手にカウンターなど出来るはずなく、僕は横跳びをして振り下ろされる木刀を何とか避けた。


「ほら次ィ!!!」


 僕が避けて態勢が崩れたところに追撃の木刀が迫ってきていた。

 その迫る木刀を僕は避けることを諦め、ピンポイントで石魔法を飛ばして何とか木刀を弾いた。


「ッチ、痛ッてぇな。手がジンジンしやがる」


 それでイリーナが怯んだ隙に僕は、なんとか形を戻して向き合った。その時さっき飛ばした石魔法のお陰で、イリーナの木刀にはひびが入っているのが見えた。

 

 これなら木刀同士がぶつかれば、そのまま折れてイリーナに一本入れれるかもしれないと、イリーナに気づかれる前に僕は突っ込んだ。


「避けてばっかじゃつまんねぇしな!かかって来いよ!」


 僕は持てる力を込めて、目の前の女に振り下ろそうとした。

 だが振り上げた木刀は、一瞬で僕の手から離れてしまった。どうやら僕の感知する前にイリーナの木刀が先に入ってしまったらしい。


「ま、所詮まだガキの力じゃムリだな」


 僕が振り下ろす瞬間イリーナの木刀に弾かれてしまっていたようで、木刀は僕と反対側に転がっていた。


「じゃ、言う事聞いてもらうぞ」


 そうイリーナが弾かれた木刀を拾いながら、約束の確認をしてきた。僕としても破れる訳がないので、その約束の内容を渋々聞くしかなかった。


「これからこの時間にここに来い。稽古つけてやる」

「・・・・・・は?」


 僕の心を読めないから、情報を吐けとかそういう事を言われるかと思っていたが、予想の斜め上な要求で驚いた。それぐらいならこんな事しなくても良かっただろうに・・・。


「それとある程度までお前が強くなったら剣返してやるよ」

「・・・剣?」

「お前が持ってたショートソードと大事に抱えてたナイフだよ」


 まさかそれが返ってくる可能性があるなんて思わなかった。馬車に乗った時には取り上げられてたから、すっかり売られたか捨てられてしまったかと思ってた。

 僕がそんな提案に嬉しさか驚きからか、いや自分に都合が良すぎて恐怖から固まっていると、イリーナが催促するように言ってきた。


「で、どうすんだ?」

「・・・・・やりますよやりますから、ちゃんと約束守ってくださいよ」

「あいあい分かってるよ」


 この人も大概不思議な人だな。今回の事と言い、行動原理が全く分からなくて相手しずらい。


「じゃあ夕飯食うから行くぞ」


 そう言ってイリーナが扉を開けた。

 僕も木刀を隅に片付けて、イリーナに付いて食堂へ向かった。


ーーーーーー


 そして僕は夕飯を終えるとまた訓練室の前に来た。ここに来てから起きている時は、ほとんどをこの部屋にいる気がする。

 そうして僕は意を決して恐る恐る扉をノックしようとすると、先に部屋の中から声が聞こえた。


「入っていいよ~」


 僕はその声に従い、ノックの為に挙げた右腕をそのままドアノブに掛けた。


「待ってたよ~」


 昨日と同じように部屋からせり出したの所で、昨日とは違った笑みでライサが座っていた。


「ほらここ座って、またお話ししよ?」

「・・・分かった」


 相変わらず危ない場所に座っているもんだと思った。下をチラッと見ても夜なせいか、渓谷の底が全く見えない。


「そんな怖がらなくても良いよ~。どうせ私が魔法で助けてあげるから~」

「魔法使えるの?」

「うん!私水を操るのが得意でね!ほら!」


 そう言ってライサは、空中にきれいな球体の水を作り出した。ちょうど僕からはちょうど月の光が乱反射して幻想的だった。


「すごいね」

「でしょ~!?イリーナは出来て当たり前って言うんだけど、やっぱそうだよね!」


 僕に褒められたのがそんなに嬉しいのか、かなりはしゃいでるようだった。こういう子供っぽい所を見ると昨日の事は、やっぱり勘違いだったんじゃないかと思ってしまう。


 そんな事を考えていると、ライサが唐突に僕のほっぺをツンと突いてきた。


「ど、どうしたの?」

「また考え事してる〜」


 ライサの顔を見るとあきらか不満そうな顔をしていた。普通の会話でも考え事される事自体嫌なんだろうか。でも少し考えるだけで、毎回この流れされるのは嫌なのでなんとか妥協点を探ってみることにした。


「ご、ごめんって。でも多少考え事はするの仕方なく無い?」


 僕がそう言うと、ライサは僕のほっぺに指を立てたまま、少し考え込んでから口を開いた。


「ん〜じゃあちょっとだけね。あんまりされると嫌だからねっ!」

「あ、ありがとう」


 ライサは案外すんなりと分かってくれたようで、やっと指をほっぺから離してくれた。まぁこれからはあんまり頭の中で考えないよう気をつけよう。


「で、今日はなんの話してくれるの?」

「ん?あーそうだなぁ」


 何を話そうかと色々思案してみるが。僕にそこまで童話に関するレパートリーがあるわけでも無い。だからまだ覚えている方の有名な白雪姫の話をしてみることにした。


 そうして今回も変わらず、昔見た時の記憶を引っ張り出しながらなんとか説明しきった。途中何回か思い出そうと止まってしまったけど、ライサは楽しそうに聞いてくれてたようだった。

 

 そうやってちょうど話し終わって締めた頃。


「なんで白雪姫はキスをすると目覚めたの?」

「ん?あーそれは・・・・」


 それってなんか理由あったっけ。確かに言われてみるとなんで目覚めたんだろう?愛の力とかそういうのだっけ?思い出せないしそれっぽい理由を考えてみるか・・・・・。


「んーっと、多分王子様は魔法使いで、だから毒を消せたんじゃないかな」

「へぇ~そうなんだ~」


 ライサがうんうんと納得してくれていたようだった。僕が今作った適当な推測だけど、納得してくれたなら良かった。

 そんなライサがこちらに向きなおして笑顔で言った。


「やっぱ、フェリクスと話すの楽しいよ!」

「あ、ありがとう?」


 僕はただ童話を話しただけだけど、それでもライサは喜んでくれているようだった。


「いつも人のお話聞いてても、先にオチが分かっちゃってつまんないんだよね!でもフェリクスだとワクワクしながら聞いていられるの!!」

「・・・・あーそう言う事。ありがとね」


 確かにそうだな。心が読めるとそういう弊害も出てしまうのか。

 まぁこの子も子供なんだし僕が話し相手になる事で、そういう孤独とかから離れられるならそれでいいか。最初は少し怖く感じたけど、それもこの子を心が読めるから少し不器用なだけなんだろうしな。それにこの子相手に強く当たれるほど、僕の心は強く無いようだった。


 そんな話をしている内に時間が経って僕も眠くなったので、そろそろ僕は帰ることにした。


「じゃあまた明日も来るよ」


 僕はそう言って立ち上がろうとした。するとライサに右手が引っ張られ体勢が崩れかけた。


「まだ早いよ」


 そう言って引っ張るライサの顔は、さっきまでの笑顔と違い表情の無い真顔だった。


「あ、明日も早いしさ。ねっ?」


 僕は何とか、右手を引っ張る手を振り払って立とうとするけど。ライサが喋り続けて僕の右手を離そうとしてくれなかった。


「いいじゃん。私からイリーナ姐に明日遅れるって言っとくよ」

「い、いやいいよ。ちゃんと鍛えたいしさ」


 僕は何とか言って帰ろうとするが、ライサはそれを許してくれそうに無かった。

 さっきはこの子が不器用なだけって思ってたけど、やっぱりこの異常な僕に対する拘りがある。これはこの子の為にも、どうにかしないといけないかもしれない。


「今何考えてるの?もしかして私がめんどくさいとか考えてる?」


 更にライサの僕の手を引っ張る力が強くなっていく。それと共にライサの茶色の瞳がだんだんと近づいてきた。


「ねえ、何かあるなら口に出してよ。私分かんないよ」

「きょ、今日はさ!もう疲れてるからもうお話しできないかも~なんて。あっ!もちろん訓練で疲れたって意味ね!」


 僕もまた消えかけたライサに対する恐怖心が戻ってきたが、なんとか怒らせないように説得を試みた。

 

 と、その試みが通じたのか、急に僕の右手が自由になった。


「まぁいいよ。そこまで言うなら。でも明日も絶対来てね?」

「う、うん。分かったよ」


 僕は上がりまくった心拍数を抑えようとしながら訓練室から出た。出る間際までこっちを見てるもんだから、ずっと僕は手を振って笑顔を絶やさないようにしていた。

 最後の最後にどっと疲れてしまった。やっぱりあの子と関わるのは付かれる。


「・・・・・・はぁ」


 蝋燭を片手にコツコツと通路を進みながら、僕はため息をついていた。

 ライサの境遇的にも味方になってあげたいのは山々だけど、毎回少し垣間見える執着が少し怖く感じてしまう。

 それでどうしたものかと考えていると、気づいたら広場の所に戻ってきたようだった。


「あ、こんな時間にどうしたの?」


 広場のちょうど月明りが入ってくる所にエルシアが座っていた。改めて見てもこの子の銀髪は良く光を反射して綺麗に思う。

 そう少し黙りこくってしまった僕にエルシアが心配そうに。


「ん?私変なこと言った?」

「い、いや何でもないよ。僕はただ涼みに行っただけ。エルシアは?」


 僕は何とか取り繕って、エルシアと少し離れたところに座った。


「私はちょっと寝れなくて」

「あ~そう言う事」


 やっぱ皆何かしら悩みを抱えてるんだなと思った。多分ラースと同じように盗賊たちに思う所があるんだろう。

 そう思っていると、エルシアの方から質問をしてきた。


「そっちにとってはさ。クラウスさんとニーナさんってどんな存在?」

「ん?まぁ大切な両親かな」


 だが僕の返答はエルシア的には求めてたものじゃなかったらしく、首を横に振った。


「そうじゃなくて、親とか関係なく人としてどんな存在?」

「人としてか・・・」


 僕を見るエルシアは真剣そのものの表情だった。僕の答えに何を求めているのか分からないけど、僕は正直に答えることにした。


「もし親じゃなかったとしても信頼できる人達だと思うよ。僕は今でもあの二人の子供でよかったとも得るしね」

「・・・・そう」


 僕自身今の回答でよかったのかは分からないけど、エルシアはそれで満足したようで立ち上がった。


「じゃ、私寝るね。変なこと聞いてごめん」

「大丈夫だよ。僕も眠いし寝るよ」


 僕も蝋燭を持って、エルシアと一緒に寝室の扉を開いた。

 

 そうして明日も頑張らないとなと思い毛布を手に取ると、隣で寝ているラースからかなり大きいいびきが聞こえてきた。


「もしかして外にいたのってこれが原因?」

「・・・・うん」


 僕とエルシアは極力ラースから離れて、何とかその日は眠りについたのだった。



 


 





 

 

 

 

 


 

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