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8.殺し屋ヴェスパー

翌朝、俺は殺し屋ヴェスパーに会うため、事務所を訪れていた。


ガチャっ


「トニーさん。

 ヴェスパーに会いに来た。」


「おう、了解。」


すると、トニーは立ち上がり、ヴェスパーのもとへ案内を始めた。


すると、大きな本棚の前で立ち止まり、本を一冊取り出した。


その本を開くと、中にスイッチが。


トニーがそのスイッチを押すと、本棚がゴゴゴゴと横にスライドし、奥に道が見えた。


「す、すげえ・・・。」


「実はね、ここから裏のビルに通じているんだ。

 ヴェスパーはこの奥にいるよ。

 さあ、こっちこっち。」


そうして、俺たちは本棚の先の渡り廊下を通り、アパート裏のビルに入った。


すると、開けた部屋の奥のいかにも高級そうな椅子に腰かける一人の女性が。


赤茶色のロングヘアに黒い服装。巨乳ときた。


さながら、海賊の女船長のようだ。


その女が口を開いた。


「よお、お前さんが新入りかい?

 あたしがヴェスパーだ。

 ははは。ずいぶんなひょろガリじゃないか。

 あのシュガーを一瞬でのしたんだ、どんな屈強な男かと思ったらねえ。

 まあ、ひょろガリ頭脳派の殺し屋も嫌いじゃないけどね。」


妖艶な声、見た目。


やばい、俺の性癖にぶっ刺さっている・・・。


そんなことを考えていると、リラが俺の心を読んだのか、俺の頭をバシっと叩いた。


「俺、ジェイクです。

 お世話になります。

 こっちはリ・・・。」


俺がリラの紹介をしようとしたら、リラが割って入った。


「どうも、ジェイクの『愛人』のリラです。」


なんだ? リラは少し不機嫌そうだ。


俺がヴェスパーに鼻の下を伸ばしたから、焼きもちでも焼いたのだろうか。


「ほう、そうか。愛人がいるのか。

 お前、なかなか隅に置けんやつだな。」


ヴェスパーが続ける。


「それで、お前たちはこの殺し屋ヴェスパーの一団に入団したわけだが・・・。

 その理由を問おう。

 なぜわが一団に入団を志願した?」


「簡単に言えば、世直しのためだ。

 俺は、悪事を働いているにもかかわらずのうのうと生きている人間が許せない。

 そいつらの情報を得て、そいつらを殺すために俺はここに来た。」


「ふん。正義のヒーローか?

 まあ悪くないな。

 殺しのリストに挙がる人物はだいたい誰かに恨まれるような卑劣なやつらばかり。

 うちに入ったなら、お前の目的も十分果たせることだろう。」


「さっそく、なにか殺しの案件をもらえないか?」


「その前にだ、シュガーの件の報酬をやる。」


ヴェスパーはそう言うと、金の入った袋をドンと机に置いた。


「100万グラナだ。」


こんなにもらえるのか!


俺のアパートの部屋の家賃にして1年と数か月分の大金だ。


「あ、ありがたく頂戴します。」


こんな大金、もらったことがない。


「そこそこの大金だ。

 まあ、まずは風俗で童貞でも捨ててこい。

 はははは。」


なっ、なぜ俺が童貞であることを知っている!?


ヴェスパーも能力者か!?


って、人を童貞かどうか判定する能力なんてあるはずないか・・・。


「ど、童貞じゃねーし!」


「そうか? お前、あたしの胸の谷間ばっか見て。

 その態度からして100パーセント童貞だと思ったんだがなあ・・・。

 あたしの勘も鈍っちまったかな?」


バシっ!


リラに頭を叩かれた・・・。


「はあ。

 ど、童貞ですよ!

 俺は俺の大切なものを守っているだけです!

 童貞の何が悪い!」


「ははは。

 童貞はそんなに大切か?

 処女ならわかるが、童貞は大切でもないだろう。

 なんなら、あたしが捨てさせてやろうか?」


突然のお誘いに俺は顔が真っ赤になる。


こんな美人で童貞を捨てられるなら本望・・・。


バシっ!


またしてもリラに叩かれた・・・。


「おっと、お前には愛人がいたのだったな。

 これは野暮なことを言った。」


すると、ヴェスパーは顔色を変え、話を戻した。


「さて、お前にピッタリの案件がある。これだ。」


ヴェスパーは俺に殺しの資料を手渡した。


「こいつはお前が通う大学の学長、バルタザールだ。

 裏では様々な犯罪を犯している。

 すべて挙げてはキリがないが、主に賄賂の受け取りに走っているな。」


「なに!俺の大学だと!?

 国内有数の超名門校の学長がそんなクズだったとは・・・。」


「どこの学長もだいたい学費の私的流用くらいはしているな。

 だが、バルタザールはその桁が違う。」


ヴェスパーは続ける。


「それにだ、こいつはその犯罪で得た金を株式だの不動産だのの購入に充てている。

 おそらくだが、子孫に資産を譲ることが目的だろう。

 こいつを殺しただけじゃあ、その資産は子供たちに分配されてしまうな。

 つまり何が言いたいかというとだ。

 こいつを殺しただけでは、こいつのかすめ取った財産は差し押さえられん。

 これでは、お前の言う正義がなされないではないか?」


たしかにそうだ。


犯罪で得た金はしっかりと返してもらってから殺さねば、犯罪に利用された被害者が報われん。


どうしたものか・・・。


俺はしばらく考え、答えを出した。


「では、こいつの犯罪を白日の下にさらし、裁判で罰を下せばよいのではないでしょうか?」


ヴェスパーは笑みを浮かべて答える。


「まだまだ甘いな、ジェイク。

 大学学長ともなれば、こいつに賄賂を渡すのは政界や大企業の重鎮だ。

 学長の罪を白日の下にさらそうとしたところで、メディアは学長の罪をもみ消すさ。

 そういうものなんだよ、この世界はな。

 支配する側に都合のいい世界になるのは当然の摂理だろう?」


なるほど、大物ともなると、正義の鉄槌を下すのも一苦労だな。


ただ殺すだけでは丸く収まらない。


「わかったよ、ヴェスパー。」


「一応言っておくが、任務としては、バルタザールを殺してくれさえすればいい。

 やつの財産が残ろうが知ったことではないからな。

 では頼んだぞ、ジェイク。」


そうして俺は事務所を後にした。



「なあリラ。

 バルタザールの罪を精算してから殺す方法、なにか思いつかないか?」


神ならすぐ思いつくのだろうか?


「拷問のときに脅せばいいではないか?

 資産をすべて返せば生かしておいてやる、といった具合に。」


「しかし、それでは一度拷問部屋から解放せねばならない。

 そのすきに国外逃亡などされたら任務も失敗だぞ。」


うーん、神なのにやっぱり全知全能ではないか・・・。


すると、リラがムッとした顔になり、俺の頭をぐりぐりした。


「悪かったな!全知全能ではなくて!

 しかしなあ、裁判も拷問もダメか。

 どうしたものか・・・。」


俺はひらめく。


「そうだ、ある程度証拠を集め、暴露系インフルエンサーにタレ込めば世間に認知され、学長の立場も危うくなるのではないか?」


「それはいいかもしれん。

 裁判所がだめならば民間の断罪者に頼むのがよかろう。」


そうして、俺たちは学長の悪事の証拠集めに走った。



=== 作者あとがき ===


次回、バルタザールの悪行!


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