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私は強くてニューゲーム~レア素材を求めて仲間たちと最強錬金旅はじめます~  作者: 橘可憐
1章 プリンセス・ロザリアンロード

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フィオリーナはあれからずっとモヤモヤとしたものを心に抱えていた。

そう、飛び級試験のあったあの日から。


ロザリアンヌには入学当初から目立って浮いた所があり何故か目が離せなかった。

クラスが違うから別に気にする事も無いのに、目に入るととてもイライラして仕方なかった。


私がお父様の言い付け通りクラヴィス様のお役に立とうと頑張っているというのに、彼女は何の努力もせずにクラヴィス様に気に掛けて貰っていた。


私は幼い頃からお父様の言う通りなんだってやって来た。

行儀作法だって勉強だって、いつだって誰にも負けない位頑張った。

なのにそんな私よりそのロザリアンヌの方が必要だと言うの?

クラヴィス様にとって私は聖女候補という肩書でしか無いの?


ロザリアンヌは折角クラヴィス様がお仲間に入れてくださると言っているのに、あろう事か申し出を断るなんて信じられない。

理解させてやろうとお説教をしてみたが、ロザリアンヌは何処吹く風で私の事など相手にもしない。

本当に自分には考えもつかない事ばかりするロザリアンヌに腹が立って仕方なかった。


何故クラヴィス様のお役に立つ事を嬉しく思わないの?

何故いつも一人で居て平気なの?

何故みんな彼女の事を特別扱いするの?

考えれば考える程理解できず、イライラばかりが募って行った。


お父様は聖女のジョブを一日も早く得てクラヴィス様のお役に立てと煩く言う。

お父様が買ってくださった光魔法の魔導書で覚えた魔法も、毎日鍛錬してはいるがなかなか熟練度が上がらずにいる。


こんなに頑張っているのにどうして魔法の威力が上がらないのか、どうして新しい魔法を覚えないのか私なりに悩んでいるというのに、お父様は新たな魔法を覚えさせようと躍起になっている。

聖女として光魔法をどれくらい使えるかも重要らしい。


覚えたって使えないと何度説明しても、私が至らないとただ叱るばかり。

もうどうして良いのか分からずにいると、夢を見た。

ダンジョンで何やら奇妙なぷよぷよとした魔物を、私が使える唯一の攻撃魔法で倒している夢だった。

ひたすらひたすら魔力が続く限り魔法を放っている自分の姿をただ見ていた。


目覚めてとても不思議な気分だった。

いったいどうしてあんな夢を見たのか、しばらく考えてもしかしたら何かの啓示かと思えた。


しかし何かの啓示だったとしてそれはいったい何のため?

授業でダンジョンに入るのはまだずっと先の話の筈なので、今すぐに何かがある訳じゃ無いだろう。

それにクラヴィス様だって自ら望んでダンジョンに入ろうなど考えてもいない。


あの夢は私に一人でダンジョンに入れとでも言っているのだろうか?

フィオリーナは頭を振ってそんな訳ないと否定する。


きっと疲れているからあんな馬鹿げた夢を見たのだと自分を納得させた。

しかしそれからも同じ夢を何度も見る。決まってお父様に叱られた日に限ってだった。


もしかしたら、あの夢は私にダンジョンに行けと言っているの?

フィオリーナがそんな疑問を抱き始めていた時だった。


「大きなお世話かも知れないけれど、レベルを上げてステータスが上がったら使える魔法も増えると思うよ」


憎らしいと思っていたロザリアンヌが自分に答えをくれた様だった。

全身を雷に打たれた様な衝撃が走った。


そう言えばロザリアンヌは以前から一人でダンジョンに通っていると誰かが言っていた。

彼女が特別に他の人と違って見えるのはそのせいなの?

彼女は彼女で自分とは違う努力をしていたと言う事なのだろうか。

フィオリーナは自分の中の何かが少しだけ崩れて心の色を変えた様な気がした。


「あ、ありがとう」


逃げる様に立ち去る事しかできなかったが、フィオリーナは不思議と悔しい思いなど微塵も感じなかった。


走りながら今のままで何も変わらないなら、夢の通りにしてみようとフィオリーナは既に決めていた。

それでもし別に何も変わらなかったとしても、結果が出ない事を繰り返しイライラしているよりはマシだろうと思えた。


飛び級試験は散々だったが、何処か気分は清々しかった。

飛び級試験だって考えてみれば自分の意志では無く、お父様に言われクラヴィス様も受けるというから従っただけだ。


それに最近ではイライラを抱えていたせいで勉強だって捗ってはおらず、自分でも飛び級試験に受かるとは思えなかった。

自分は努力して頑張っている気になっていたが、何かを間違えていたのかも知れない。

フィオリーナは試験が終わるやいなやダンジョン課に出向き探検者登録をした。


そして夢の導きのままにスライムと言われる魔物を倒して廻った。

気分的には何度も何度も時間が許す限りだったが、その前に魔力が簡単に尽きてしまった・・・


魔力が尽きたと言っても空になった訳では無く、魔法が発動出来なくなったというだけだが、それでも身体が重く感じ家に帰り着くまでの道のりをとても遠く感じた。

しかしフィオリーナの気持ちはどこかスッキリしていた。

何故ならレベルが上がり何となく自分のステータスが上がった実感が少しばかりあったからだ。


ロザリアンヌの言う事が正しかったなら、このままステータスを上げ続ければいつかは覚えた光魔法を使える様になるかも知れない。

僅かながらでも希望の光が見えた気がして、フィオリーナは久しぶりに気持ちが明るくなっていた。


しかしそれと同時に、何か分からないモヤモヤしたものを感じ始めていた。


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