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私は強くてニューゲーム~レア素材を求めて仲間たちと最強錬金旅はじめます~  作者: 橘可憐
1章 プリンセス・ロザリアンロード

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『そこでいったい何をしている』


いきなり頭の中に響いた声に驚いて辺りを見回すロザリアンヌ。

しっかり認識阻害を掛けているので、誰かに見つかる事などあり得ない筈。

これから教会に忍び込もうと考えていた後ろめたさもあり、ロザリアンヌは心臓が飛び出しそうな程ドキドキしていた。


『私だ』


肩に手を置かれ振り向くと、うっすらと霞が掛かった様に見えるレヴィアスの姿があった。


「レヴィアス!」


『静かにしろ、誰かに見破られたら認識阻害が解かれるだろうが』


叱る様なレヴィアスの言葉に、ロザリアンヌは慌てて両手で口を抑えた。

そう言えば精霊とは念話が通じるのだと、今になって思い出していた。


『私の姿が見えるの?』


『当然だ。他人の認識阻害をも見破ってこそのこの能力だ。おまえにもできる筈だ、やってみろ』


突然やってみろと言われても、ロザリアンヌにはできる気がしなかった。


『えっと、もう既にレヴィアスの姿は見えてるよ?』


『あそこに王家の諜報員が居る、見破ってみろ』


 レヴィアスが指した先を見るが、ロザリアンヌには諜報員の姿などまるで見えなかった。


『見えないよ』


レヴィアスは何故か少しだけ顔を顰め、鼻を鳴らす様に息を吐いた。


『見えて当然と思い込め。目に魔力を流してみろ』


ロザリアンヌは言われた通り、見えて当然見えて当然と念じるように目に魔力を流してみる。

すると霞が掛かった様に存在の薄い人影が、教会の入り口付近に現れた。

とは言っても、レヴィアスよりは存在がはっきり見えるのはきっと認識阻害の深さの問題なのだろう。


『見えました。忍者装束の様な全身真っ黒な人ですね』


『忍者装束?』


この世界に忍者は居ない模様。忍者に憧れていたロザリアンヌは何となくがっかりした。


それにしても、もしロザリアンヌがあの忍者装束に気付かず教会の入り口を目指したらどうなっていたか、想像するだけで恐ろしい。


忍者装束は入り口の開け放たれた扉に隠れるように潜みいまだに動こうとしていない。

きっとロザリアンヌも同じ様に行動しただろう。

そしてあの場で忍者装束にぶつかった後はお互いの認識阻害が解かれ、きっと二人で慌てる事になる。


そんな状況で先に忍者装束にここで何をしていると問われたら、ロザリアンヌはしどろもどろになりきちんと答えられる自信が無い。

その上ロザリアンヌが認識阻害を使える事が王家にもバレ、あらぬ疑いが掛けられる事になったかも知れない。

そう、大賢者様の様に。


そして今は逃げ込めるダンジョンも無くなり、身を隠す場所も無いまま師匠やアンナといった人達に心配だけでなく迷惑を掛ける事になるだろう。

考えれば考える程に恐ろしい事態の想像に、身体が震えだすロザリアンヌだった。


『私の事を助けてくれたんだね。ありがとうレヴィアス』


『当然だ。おまえの魔力は今はまだ私にも必要だ』


話し方はぶっきらぼうだけれど、心はそうじゃ無いのは目を見ればちゃんと伝わってくる。

黒くはっきりとした瞳は時に見透かされている様で怖くもあるが、今は深く温かく優しい眼差しをしていた。

お陰でロザリアンヌの気持ちも落ち着いて行く。


『所でキラルは一緒じゃ無いの?』


レヴィアスの後を追った筈のキラルの姿が見えない事に、ロザリアンヌは少し心配になる。


『キラルには女達を見張らせている。それよりキラルには重要な役目がある、おまえも見届けると良いだろう』


そう言うとレヴィアスは、ロザリアンヌを案内する様に悠然と歩き始めた。

諜報員の目の前だというのに、あまりにも堂々と教会の入り口を潜るレヴィアスの姿に、ロザリアンヌは思わず笑いそうになり慌てて後を追った。


スキルで覚えた認識阻害は匂いや足音や息遣いといったものでバレる危険があったが、レヴィアスの闇魔法で覚えた認識阻害はすべてを隠してくれていた。


だからロザリアンヌが駆け出した足音さえも搔き消してくれる優れ物だった。きっと足跡さえも消してしまうのだろう。

もっとも浮遊を使えばそんな問題も無いのだが・・・


だからさっきレヴィアスのいきなりの登場に驚いて声を上げてしまったが、あの声だって当然掻き消されていたと思う。

それでもレヴィアスは意識の問題として教える為に、ロザリアンヌに敢えて言ったのだろう。

レヴィアスがこうして体験させる事でロザリアンヌに学ばせようとしている心遣いが嬉しかった。


教会内を進むレヴィアスは閉まっている扉も当然の様に開けて入り、人が居る通路も構わずにズンズン進んで行く。

そのあまりにも堂々とした様子に、見ているロザリアンヌの方が不安になる。


しかし見えない者が開けた扉を不思議に思い、そして恐怖を覚える様子にはロザリアンヌの方が申し訳なくなってしまう。

(場所が教会だし、当然幽霊を想像するよね。ごめんね)

ロザリアンヌは謝りながら恐怖で慄く人の脇を通り抜けて行く。


そうしてたどり着いた部屋にキラルの姿を確認すると、キラルは嬉しそうに駆け寄ってくる。


『ロザリーも来たの?』


『教会に連れて行かれたって聞いたからね』


聖女候補達は監禁される様に狭い部屋に押し込められていた。

扉には覗き窓の様な鉄格子の嵌った小さな窓があり、厳重に鍵も掛けられている。

教会にこんな部屋がなぜ必要なのか、ロザリアンヌは不思議に思う。


そして中を覗くと聖女候補と一緒に付いて来ていたのはアンジェリカちゃんだった。

毅然とした態度の聖女候補とは違い、アンジェリカちゃんはシクシクシクシクと泣いていた。


『彼女達を助け出せる?』


ロザリアンヌは厳重に鍵がかかった扉を開けられるものかとレヴィアスに聞いていた。


『ここから出すだけでは助けた事にはならない。そこはキラルに頑張って貰おう』


そう言えばさっきレヴィアスはキラルには重要な役割があると言っていた。

レヴィアスがキラルにいったい何をさせる気なのかと、疑問に思いながらも何一つ思い浮かばない。


それに聖女候補達をココから出すだけでは助けた事にならないって、それってどういう意味だろう。

ここから助け出して教会を糾弾するとか、警備隊に身を守って貰うのじゃダメなの?

そう言えば、聖女候補が自ら付いて来たって事に何か関係があるの?


ロザリアンヌは湧き上がる疑問の答えを探して、レヴィアスの次の行動を静かに待つ事にした。



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