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レヴィアスが何を調べているのか知らないが、ロザリアンヌはレヴィアスが夜中密かに出かけているのに気が付いた。
それにレヴィアスは祖母であるソフィアからも色々学んでいるらしい。
長くダンジョンに籠っていた年月を取り戻そうとしているのかと思い、ロザリアンヌは敢えて何も言わなかった。
しかしレヴィアスの事だからきっと大丈夫だろうとは思いながらも、何か無理をしている様な気がして仕方なかった。
そんな中ロザリアンヌはキラルとレヴィアスを連れ、オスカー・ユリア・オリヴィエと高難易度ダンジョンの攻略を順調に進めていた。
初めのうちユーリ達4人はロザリアンヌ達の蹂躙劇に戸惑い色々と言っていたが、連携をする気は無い自分の身を護る事に徹して欲しいと伝えると大人しくなった。
それでなくても足場の悪いダンジョン内では、実際にそれだけしかできない彼らは従うしかないと考えた様だった。
そしてアンナはジュリオに同行し使節団の一員となって暫く離れていたマークスと、また頻繁に会う様になっているらしかった。
なのでロザリアンヌはこれからは気軽にダンジョンに誘えないと考え始めていた。
何となくロザリアンヌとアンナの進む道が違い始めているのを感じ少し寂しくはあったが、ロザリアンヌはアンナのこれからの幸せを見守る事にした。
そんな中Sランクダンジョン踏破のニュースが世間を騒がせた。
長年Sランクダンジョンに挑んでいた探検家パーティーがとうとう踏破を果たしたのだった。
もっとも彼等にはちゃんと実力もあった訳で、レヴィアスの張った無限ループの様な罠や闇に閉じ込められる様な罠が無くなれば踏破も難しくは無かったのだろう。
街を上げてのお祭り騒ぎの中、探検家達が≪Sランクダンジョンの踏破を果たせたのもマジックポーチのお陰です≫と発言した事から、図らずも師匠の錬金術店が脚光を浴びる事になった。
探検者達にはマジックポーチの製作者がロザリアンヌだと知られていたが、この騒ぎのせいで今まで知らなかった人達にも広く知られる事になった。
「何か面倒くさい事が起きなければ良いけど」
一時期襲われる事が多かった事を思い出し、ロザリアンヌは密かに胸に抱えた不安を思わず口にしていた。
そして探検家達がSランクダンジョンの踏破を果たした事で、ユーリが諦めたかと思えばまったくそんな事は無かった。
逆にこれで学生達のSランクダンジョン踏破も受け入れて貰い易くなったと喜んでいた。
「Sランクダンジョンに挑める様になったら、すぐに泊まり込みでの攻略を始めよう」
「私にも予定というのものがあって、やりたい事があるんですよ」
「踏破を果たした暁にはその後卒業まで自由にして良いぞ」
「えっとそれは登校しなくても良いと言う事ですか?」
「おまえにはもう既にこの学校で教えられる事など無いだろう?」
ユーリがとても魅惑的な条件を出して来たが、その後にまたどんな難題を吹っ掛けられるのかと考えてロザリアンヌはそのままを鵜呑みにはしなかった。
以前は錬金術課への就職を打診されていたと思う。今は口にもしてないが、きっとその話も諦めてはいないだろう。
だとしたらさっさと踏破を果たし卒業を確約させて、自分の道をしっかりと確定させる事が重要だとロザリアンヌは考え始めていた。
「私の名前を出さないと言う約束を守り、卒業を確約して貰えるなら私は問題ありません」
「ああ、約束は必ずまもろう」
大きく頷くユーリに誓約書でも書かせようかと考えたが、卒業まで後半年の事だと思い直した。
それにロザリアンヌはそこまでの腹黒さをユーリには感じていなかった。
今までなんだかんだと無理は言われてきたが、無理強いをされた事は無いと思う。
それに結果的にはロザリアンヌの身になり知識になっているのは確かだった。
ユーリはきっと頭は良いのだろうが、貴族のお坊ちゃまと言う事から知識や常識が偏っているのだとロザリアンヌは思っていた。
初めはゲーム内の攻略対象者の一人という目で見ていたけれど、今はちゃんと一教師として接しているつもりだ。
だからユーリがロザリアンヌの不利になる事はしないと信じたかった。
「お願いします」
ロザリアンヌはお辞儀をして退出すると、また泊まり込み攻略の為の準備を始めるのだった。




