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ロザリアンヌは焦って光の精霊を探すのは止める事にした。

光魔法は私にとってはとても便利で万能だったが、やはりどう考えてもゲームに強制参加させられる危険と天秤にかけたら不便もまた人生と割り切る事ができた。


それに考えてみたらウィンドーカッターを45万ギリで手に入れるとして、ギニーピッグの買取が200ギリだから、2250体倒せば良いだけで、一回のダンジョンアタックで15体だから150周すれば良い計算だ。


スライムを5000体倒した事から考えたら半分の労力、1日頑張って5周すれば30日で手に入るんだと結構簡単に割り切ると心も軽くなった。


今日はいつものリュックの他に、薬草用の肩掛けバッグと毒消し草用の肩掛けバッグを両肩に斜め掛けにして準備万端整えた。


昨日はリュック一つだったので中身がごちゃごちゃになってしまい、あまり沢山入れる事もできなかった事から自分なりに考えて改善したつもりだった。


「おはようございます」


いつもの様に登録記録窓口でマリーさんに挨拶をして、探検者カードを提示し入ダン手続きをする。


「おはようロザリー、今日は入念な準備の様ね」


「リュックだけだと荷物がかさばってしまうので、少し考えてみました」


「それは良い考えだと思うけど大丈夫?動き辛くなったりしない?」


ロザリアンヌはマリーに指摘されて少し不安になるが「やってみて不便だったらまた考えます」そう元気に答えて入ダン手続きを済ませダンジョンへと向かう。


ひたすらスライム狩りをしていた時は思う程レベルは上がらなかったが、第1階階層ボス部屋の周回と第2階めてからロザリアンヌのレベルもまた上がり始めていた。


「経験値3倍の効果は本当に凄いわね」


ロザリアンヌは第1階層のボス部屋で手に入れた経験値3倍の指輪を見詰めながら呟く。

そのお陰か素材採取のための屈み姿勢のままの移動も何の苦もなく素早く動けるようになっていて、ギニーピッグの討伐も攻撃を仕掛けてくる隙も与えず素早くできる様になっていた。


(この分なら6周できる様になるかも)


ロザリアンヌはそんな計算をしていた。

マリーが心配していた動き辛さなどはまったく感じる事も無く5回の周回を終え、3度目の買取を終わらせたところで時間を見ると、昼にはまだ少し時間があった。


(アンナさんの所へ寄って行こうかな)


ロザリアンヌは魔導書店に他にどんな魔導書が置いてあるのかも知りたかったし、属性魔法の事ももう少し詳しく聞いてみようと商業地区へと足を進めた。


正直に言ってしまえば、ロザリアンヌはアンナにまた会ってもっと話がしたいと思っていた。

優しくされたからというのもあるが、何か不思議な魅力を感じさせる雰囲気がアンナにはあった。


「こんにちは」


ロザリアンヌは遠慮がちに扉を開くと、店の奥に向かって声を掛けた。


「その声はロザリーね、いらっしゃい」


店の奥から急ぐように姿を見せたアンナは、ロザリアンヌを笑顔で出迎えてくれた。


「今日もお客じゃ無いんですけど、店にある魔導書を色々見せて貰っても良いですか」


「構わないわよ。用が無くてもいつでも顔を見せて頂戴。今日は私も時間があるから一緒にお茶でもどう?」


相変わらずの気安く明るいアンナの対応に、ロザリアンヌは嬉しさが込み上げてくる。


「嬉しいです」


ロザリアンヌはこうしてアンナとの距離を縮め、時間があるとアンナを訪ね一緒にお茶をする様になっていた。

そして一緒に色んな話をする内に魔導書はアンナが作っている事を知り、中にはアンナが開発した魔法もあるという話に驚いた。


「魔導書を作成するインクも手作りなのよ」


「そうなんですか。魔導書って手書きだったんですね」


「手書きの他に方法があるかしら」


「それも魔法でしているのかと・・・」


魔導書を読む事で自分の中にその知識が入り魔法を覚えられるというふんわりとした説明に、ロザリアンヌはそこにも魔法や魔力が干渉していると思っていたので、何となく不思議な力=魔法という考えでいたのだった。


なので当然魔導書も魔法で作られた物かと勘違いしていた。


「インクにもっと力を籠められれば、威力の高い魔法を作り出す事も可能なのよね」


アンナは溜息を吐く様に言うのだった。


「インクに力ですか?」


「そう例えば属性の力を籠めるとかね」


「そんな事ができるんですか?」


「火属性の魔導書を作成するのに火の精霊の力が込められたインクを使えば、当然威力も上がると思わない?」


「思います!」


「でも精霊に力を借りるのはとても難しい事よね、そこで少しでも魔力が籠った水を使う様にしているのよね私は。そこでロザリーにお願いがあるんだけど聞いて貰えない?お願いを聞いてくれたら安い魔法で悪いけど魔導書を一つプレゼントするわ」


ロザリアンヌはアンナの思ってもいない提案に心が躍る。

安い魔導書と言うのがどんな物かは後で確かめるとして、ロザリアンヌは一つ魔法を手に入れられるのだ。

勿論お願いの内容にもよるが、ロザリアンヌに無理な事をアンナが言う訳が無いと信じていた。


「返事はどんなお願いなのかを聞いてからでも良いですか?それに安い魔法っていうのも気になります」


ロザリアンヌが素直にアンナに問う様に聞く。


「当然よね。でも安心して、頼みたいのは東の森にある泉の水を朝露の残るうちに汲んで来て欲しいの。今まで自分で行っていたのだけれど、最近母の具合が悪くて朝のその時間は手が離せないのよ。どうかしら?」


東の森とはその名前の通りこのメイアンの街の東に広がる森林地帯だ。

この世界はダンジョン以外では魔物は出没しないので、東の森も奥深くまで入らなければ狂暴な獣も出没しない比較的安全な場所だった。


ロザリアンヌはまだ一度も行った事の無い場所ではあったが、子供達が遊びに行くという話は聞いていたので無理な願いでは無いと思われた。


ただ朝露が残る時間と言うのが問題だろう。

森の泉まで移動にどれくらいの時間が掛かるのか、そして何時くらいまでに行けば良いのか、確認しなくてはならない事はまだまだある様に思えた。


「もっと詳しく聞いても良いですか?」


ロザリアンヌはアンナにさらに詳しく色々と聞き、あれこれと確認してから心を決める。


「困っているのなら手助けはしたいです、明日行ってみますが失敗したらごめんなさい」


ロザリアンヌは万が一朝露の時間に間に合わなかった時の事を考え前もって謝っておく。


「受けてくれるのね、とっても嬉しいわ。大丈夫失敗だったとしてもお礼はするわ、だからあまり気負わずにお願いね」


ロザリアンヌはアンナから専用の水筒を受け取り、明日の準備のために錬金術店へと帰るのだった。



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― 新着の感想 ―
中学生が50万円の本を作る世界ですか...... 速攻で供給過多になりそうなものだけど
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