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ユーリの助手の様な手伝いから突然解放された。
それにあれからSランクダンジョン踏破の話をしてこなくなったので少し不気味に思い構えていたが、ユーリがオスカー・ユリア・オリヴィエの3人を伴って午後の実習時間にダンジョンに入っている模様。
ロザリアンヌが言った≪彼女達が高難易度ダンジョンに挑めるようになったら≫を実現させる事にした様だ。
お陰でロザリアンヌもアンナとAランクダンジョンの攻略を進められる様になったが、登録記録窓口で度々出会う事になった。
何だか面倒で厄介だった。
「今はどの階層を攻略しているんだ?」
「Aランクダンジョンの27階層です」
「「「「・・・・・・」」」」
それ以降出会っても進捗状況を聞かれる事は無くなったが「私達もいよいよEランクダンジョンに挑む事になった」とか「そのドレス可愛い~私も同じのが欲しいわ」「そんな恰好でダンジョンに入るなんてなめてんのか」「えっ?れっきとした防具だと」「自分で作ったの?」「「「「・・・」」」」等々、顔を合わせる度にわざわざ絡まれるのが面倒だった。
しかし彼女達も頑張っている様なのでロザリアンヌも負けずとアンナ達と闇の精霊を目指した。
以前の様に午後の自主練時間はまるまるダンジョン攻略に使える様になったので、かなり順調に攻略は進んだ。
「ロザリー、Sランクダンジョンのフィールドはかなり広いらしいぞ」
「魔晶石転移ができないから泊まり込み攻略だぞ」
ロザリアンヌがいずれはSランクダンジョンの踏破を目指していると知った探検者達が、相変わらず情報提供で応援してくれた。
その情報なら知ってるよとも言えず「ありがとうございます。助かります」とお礼を返す。
しかしそうだよな転移ができないとSランクダンジョンの攻略は本当に不便だよなと考える。
Sランクダンジョンは踏破されていないので階層も区分されてはおらず、転移の魔晶石も設置されていないそのままのダンジョンだった。
(魔晶石の転移ってどういう仕組みなんだろう?)
ダンジョン入り口に設置された魔晶石に探検者カードを翳しダンジョン内に転移し、帰りはダンジョン奥に設置された魔晶石に触れるか緊急避難用に持たされているスクロールを使いそこに現れた魔法陣で戻って来る。
(どう考えても時空魔法関連の転移魔法だよね?って事は私にもできるんじゃないだろうか?)
ロザリアンヌは暇ができるとあれこれと考えていた。
そしてある日、あれっ、あの緊急避難用のスクロールの魔法陣を応用できるんじゃないのと思いつく。
自分でも呆れる位一番簡単な事に思いが至らなかった事が恥ずかしくなる。
あれは多分強制退去とは言え転移魔法だろうとスクロールを開き魔法陣をマジマジと観察した後ノートに書き写す。
そしてロザリアンヌは魔法陣の解析を繰り返し、純粋な転移魔法の魔導書を作りそして覚えた。
しかしこの転移魔法は思った以上に扱い辛かった。
短い距離なら何の問題も無いのだが、任意の場所に移動する事はできなかった。
これでは瞬間移動の方が便利だと思いながら、よくよく考えてその為の魔晶石かと思い至る。
ダンジョン入り口の魔晶石を観察してみると、思った通り2つの魔法陣が刻まれていた。
多分転移魔法の他に何処へ移動するかの情報を魔法陣にして書き込んであるのだろう。
魔石ではなく魔晶石が使われていると言う事は、きっとそれだけ多くの魔力を必要とするのだろう。
多分、きっと、だろう、と推測ばかりだったが、ロザリアンヌは実験してみる事にした。
魔晶石なら高難易度ダンジョンで魔物がドロップするので、十分すぎる程手に入れていた。
魔晶石に転移の魔法陣とロザリアンヌの部屋の座標と、場所というか高さを書きこみ転移魔晶石を作る。
これで別の場所からこの魔晶石を使いロザリアンヌの部屋に転移できれば成功だ。
「その実験は僕がやるよ」
何やらキラルが力強くロザリアンヌの手を握りしめてきた。
「どうしたの急に?」
「万が一事故があっても精霊の僕ならどうにかなるから任せて」
キラルに言われロザリアンヌは初めて転移での事故を考え顔を青くする。
今までダンジョンで普通に転移していたので、事故が起こり得るなんて微塵も考えていなかった。
「お願い」
ロザリアンヌは素直に転移魔晶石をキラルに渡した。
「じゃあ僕はアンナの所でコレを使ってみるからロザリーは部屋で待ってて」
キラルはあっという間に部屋から駆け出して行った。
ロザリアンヌは事故が起きない様に祈りながらしばらく待っていると無事何事も無くキラルが転移して来た。
「やったー」「成功だね」ロザリアンヌとキラルは思わず抱き合って転移の成功を喜ぶのだった。




