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新学期が始まりロザリアンヌは同級生達と少しは親交を持とうと考えていたが、今までの態度もあったしキラル人気が凄くて急には上手くいかなかった。
そしてキラルを一緒に登校させて良いという条件の一つにユーリの手伝いをするというのがあったが、これが思っていた以上に面倒臭かった。
書類の整理や参考資料を集めるという作業で魔道具に関しての知識だけでなく、細々とした分担や役割なども学ばせているように感じた。
そのせいで魔法学校が休みの日でもなければダンジョン攻略ができず、なかなか思う様に進まなくなっていた。
何て言うか、どれもこれも予定の通りに物事は進まないという実例の日々だった。
「世の中って考えていた様には行かないものだよね」
「どうしたの急に?」
少々疲れていたロザリアンヌは珍しく学校帰りにアンナの所へ寄り、お茶をしながら愚痴をこぼしていた。
「学年が変わったらもう少しのんびり学校生活を楽しめると思っていたんだ」
本科3年生に無事進級したロザリアンヌだったが、キラル人気で女生徒に囲まれる以外は結局何一つ変わらない忙しい毎日を送っていた。
「私も早く擬人化できる様になりたいの、もっとダンジョンに行こうよ」
「ウィルの要望に応えたいけれどしばらくはこの調子かな。でも夏季休暇に入ったら頑張るからそれまで我慢してくれない?」
「絶対よ!」
「うん、絶対」
ロザリアンヌは急かすウィルを宥める為に約束をした。
「無理は言わないの。ロザリーだって色々大変なのよ」
「大丈夫だよ。私も早く闇の精霊に会いたいと思っているし、夏季休暇の間はアンナにも無理させるかもしれないけどよろしくお願いします」
ロザリアンヌは前もってアンナに夏季休暇中の集中ダンジョン攻略の予定を告げておく。
「こちらこそウィルの我儘を聞いて貰うみたいでごめんね」
そうしてまだだいぶ先の夏季休暇の予定を早々と立てるのだった。
それからどうもキラルの笑顔には浄化の作用があるのか、普通なら妬みや嫉みの様な感情が少し位あってもよさそうなのに、キラルに群がる女生徒達にはそんな淀んだ気配はまったく無かった。
なので初等科からいきなり本科3年生になったロザリアンヌに負の感情を持って近づいて来る人は皆無だったので、殊の外穏便に学校生活を送れていた。
それに座学も思っていた以上に簡単だったので、今までマッシュの課題に手を抜かずに頑張った甲斐があったと実感していた。
そしていよいよ週2回の騎士学校の生徒との合同授業が始まると、午後の合同実習はサボる事はできなくなり、ロザリアンヌは学校に入ってからほぼ初めての他の生徒との実習授業に臨んだ。
本来ならその都度教師の指示でパーティーを組むのだが、ロザリアンヌはユーリの要望で固定でパーティーを組む相手を決められていた。
他の生徒達は大体5人から8人でパーティーを組むのだが、ロザリアンヌが組まされたパーティーはロザリアンヌを含め騎士学校生2人魔法学校生2人の4人パーティーだった。
「オスカーだ、噂は聞いている、これからよろしく」
オスカー・アンドレッドは騎士学校首席で剣の天才と名高い生徒だった。
「ユリアよ、よろしくね」
ユリア・モリアティーは戦闘センスが抜群と噂の女性剣士だった。
「私の事は知っているかも知れないけど、オリヴィエよ、よろしくね」
オリヴィエ・ダンジューは魔法学校首席で3属性を操れる天才と名高い生徒だった。
みんなロザリアンヌより年上と言う自覚からか、貴族としての振舞なのか、礼儀正しく大人びた態度でロザリアンヌに接していた。
ユーリが何故この生徒達と固定でパーティーを組ませたのか、その意図はまったく分からなかったが、ロザリアンヌとしてもその都度違う生徒と接するよりは楽に感じる位には気が抜けた第一印象だった。
相手は貴族様だと構える必要が無いと思ったのが一番の理由だろう。
「ロザリアンヌです、よろしくお願いします。みんなにはロザリーと呼ばれています」
「後でキラル君も紹介してくれると嬉しいわ」
「私もキラル君の噂を聞いてぜひ会いたいと思っていたの、お願いね」
キラルの噂は騎士学校にまで届いていた様で、オリヴィエだけでなくユリアまで強請ってくるとは、キラル紹介窓口係にでもなった気分のロザリアンヌだった。




