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ピコピコハンマーの改良というより作り替えは完璧と言うべきだろう。
高性能で高品質の素材を使い作り替えた事により、ピコッっという響きも重厚になった様でもある。
片面がデバフ攻撃、もう片方で魔法攻撃&打撃の性能はそのままでより強化され、さらに柄の頭から斬撃を飛ばせる様にした事で攻撃の幅もかなり広がった。
当然攻撃力2倍の性能もそのままだ。
色も素材の色をそのままに、柄の部分はレアメタルの漆を塗ったかのような重厚感、ハンマー部分は厚く強固な魔物の皮のブラウンとが相まって、見るからに高性能でお高そうな物にできあがった。
「真・ピコピコハンマーよ!!」
ロザリアンヌは、できあがったピコピコハンマーを思わず天に掲げて叫んでいた。
「凄い、何だかとっても強そうだよ」
ロザリアンヌが錬金術をする間キラルは、興味深げに大人しく少し離れた場所からその様子を眺めていた。
「素材も魔法もかなり強化したんだから当然よ」
ロザリアンヌは時間が掛かるから、錬成中はキラルの好きにして良いと言ったのだが「僕は見ていたいの」と譲らず、かと言ってロザリアンヌの邪魔になる様な事もせず、何が面白いのか見守る様にずっと部屋に居たのだった。
初めこそちょっと意識してこそばゆかったが、次第に不思議と安心する様な温かさを覚え気にならなくなった。
取り敢えずできあがったピコピコハンマーをキラルに渡し、続いて防具の練成に入る。
まずは蜘蛛の魔物がドロップしたかなり高品質の糸を使って布を錬成する。
錬成中にロザリアンヌの魔力を多く練り込む事で防御力のかなり高い布になった。
勿論各種耐性を付ける事で全状態異常耐性も付いている。
全状態異常無効にできなかったのは、石化と呪いに対する素材が回復素材でしか手に入らなかったからだ。
しかしそれでも防具を作るのには十分な、強くしなやかで肌触りの良い布を作る事ができて、ロザリアンヌは満足だった。
できあがった布でキラルには私立小学校の制服の様なシャツにブレザーそして半ズボンという、かなり定番の様な防具一式を作る。
何だか貴族のお坊ちゃまって感じ?
(うん、キラルに絶対に似合いそう)
できあがったキラル用の防具を手に思わずロザリアンヌはニヤケてしまう。
次にロザリアンヌが錬成するのはゴスロリ風のドレス。
どうしてゴスロリかって?
それは生前の私がずっと着てみたいと憧れていたからだよ!
自分が着ても似合う筈がないと諦め二次元の世界を愛でて楽しんだり、コスプレイヤーさん達を羨ましく愛でてましたが何か?
実際に着る勇気が無かった私だったが、ロザリアンヌがこの世界で着るのは許されると思う。
それに普段は制服姿の事が多いので、たまにはイメージチェンジも必要だろう。
と、できあがったゴスロリドレスを見詰めながら自分に言い訳をするロザリアンヌだった。
「そうだ!アンナにも同じ様なものを作ってしまおう」
ロザリアンヌは仲間がいれば怖くないとばかりにアンナの防具も作る。
元々アンナの分の防具を作る気ではいたが、アンナにデザインを相談してからにしようと考えていた。
しかしここはもうロザリアンヌの羞恥心を誤魔化す為にも同じ様なデザインで作ってしまう。
勿論アンナの温かく優しい雰囲気を強調する為に、赤い髪色に合わせブラウンでメイド服にも似た甘ロリ風。
本当はピンクにしたかったが、ピンクはアンナに拒まれる様な気がしてさすがに止めた。
アンナに拒まれたからと言ってロザリアンヌが着るのにも、さすがにちょっとピンクは可愛すぎる気がして抵抗があった。
次に当然ブーツも作った。
時空魔法でヘイストという身体の動きを迅速にする魔法を覚えたので、ブーツに効果として付与した。
これで移動も速く楽になるだろうとロザリアンヌは確信する。
「防具はこんな所か」
ロザリアンヌは取り敢えず一通りの防具を作り一息入れた。
それから次にダンジョンで手に入れた付与効果を移し替え纏めた装飾品も作り直す。
魔力量100%UPと魔法威力2倍とMP消費半減が付いた銀の腕輪を素材を変えてもっとお洒落なミスリルの腕輪に作り替えた。
そしてC・D・Eランクダンジョンで手に入れたHP自動回復とMP自動回復と回復量UPの能力を移し替え、結界魔法の魔法陣を刻んだ魔石を嵌め込んだブローチ。
これは防具であるゴスロリドレスに合わせたリボンに取り付けられる様に雫型のデザインにした。
(我ながらお洒落なデザインにできたな)
ロザリアンヌは密かに一人満足していた。
そしてドロップ率UPとBランクダンジョンで手に入れたレアドロップ率UPはアンクレットに纏めた。
こうしてみるとダンジョンでかなり有能な効果の付与された装飾品を色々と手に入れていたんだと改めて驚いた。
これが複製できたならアンナにもキラルにも渡せるのにと本気で悩むロザリアンヌだった。
まったく同じものを複製・・・・・・
できるかも知れない?・・・
いや、できると信じてやるまでだ!
ロザリアンヌは試しに、不要となった今まで着けていたブローチで複製を実行する。
同じ素材を揃え魔力を流し込みながら、性能もそのままに同じものができる様にイメージする。
・・・・・・
・・・
「できちゃったよ・・・」
ロザリアンヌはさっきまでの緊張が解け全身の力が抜け椅子の上でへたり込んだ。
自分でもこんなに簡単にできるとは思っていなかった。
そしてこれは錬金術に革命を起こしたんじゃないかと思いながら、キラルとアンナの分の腕輪とブローチとアンクレットを複製するのだった。




