53
誤字報告いつもありがとうございます。
結果から言うとキラルはロザリアンヌと一緒に新学期から登校しても良い事になった。
勿論授業中は静かにするのは当然の事だが、許可を出す為にはと色々と条件を付けられた。
そのどれもこれもロザリアンヌにしたらたいした問題でも無かったので受け入れた。
思っていた以上に簡単に許可を貰えた事にロザリアンヌはホッと息を吐く。
「次は探検者登録か」
キラルがずっと擬人化したままだと言う事は、ダンジョンを一緒に攻略する為には探検者登録が必要になる。
「でも」とロザリアンヌは肝心の事に気付きハッとする。
キラルが探検者登録したらキラルが攻略できるのは薬草ダンジョンだけって事になる。
そうしたらこれから先の最高難易度ダンジョンに挑むにしても、キラルは一緒には行けないって事だ。
今までずっとキラルと一緒にダンジョン攻略をして来たロザリアンヌとしては、それはとても不安な事で、このまま先に進むのを諦めた方が良いのかとさえ思ってしまう。
「大丈夫だよ、ダンジョンに入る時は認識阻害を使うかロザリーの身体に戻れば良いんだから」
「認識阻害使えるの?」
「僕を誰だと思ってるの?そのくらいの事はできるよ」
「じゃぁ学校でもそうしてくれれば良いじゃない」
「嫌だよ疲れるし。それに何より僕が楽しくないじゃん」
ロザリアンヌはキラルが擬人化した事で我儘になった様な気がすると思い悩む。
しかしその分何だか遠慮が無くなったというか、性格がはっきりしてきたようにも感じていた。
「私の身体に戻った場合はどうなの?」
「身体から出る度に服を着直す事になるけど面倒じゃない?」
(だよねぇ~)
ロザリアンヌはその気持ちはかなり良く分かるので、言葉にはしなかったが激しく同意してしまった。
「それでさぁ、僕はこれからロザリーを守る為にも前衛を務めようと思うんだ。だから僕にも何か武器を作ってよ」
今まで同様魔法を使って蹂躙劇を展開する物だと勝手に思い込んでいたロザリアンヌは、キラルの提案にとても驚いた。
「武器を使って攻撃するの?」
何とも間の抜けた質問を返してしまい、ロザリアンヌは少し恥ずかしくなる。
「魔法は少し控えるよ」
静かに何の表情も無く答えるキラルにロザリアンヌはハッとする。
(そうか、擬人化で力を使っているからあまり魔力は使えないのかも知れない)
キラルははっきりとは説明しなかったが、ロザリアンヌは勝手にそう解釈して納得する。
「分かった、これからはキラルに前衛を任せるわ。私は折角覚えた魔法なのに使っていないものがいっぱいあるし、いざって言う時に素早く使える様に魔法の研鑽に励むよ」
アンナの魔導書で覚えた魔法やキラルの成長によって覚えた魔法など結構あったが、実際使った事のある魔法は数少なかった。
それに研鑽を積めばさらに上級の魔法を覚える事もあるというし、これからは魔法主体で行こうと決めた。
そうなると武器かとロザリアンヌは腕を組み考える。
そしてしばらく考えてロザリアンヌはピコピコハンマーを卒業する事にした。
「ねえキラル、このピコピコハンマーを使ってみる気はある?キラルにその気があるならもう少し改良してからキラルに譲るよ」
ピコピコハンマーを手放すのも仕舞い込むのも躊躇われたロザリアンヌは、キラルに使ってくれないかと提案してみる。
実際Aランクダンジョン攻略でも十分に通用しているのだから、キラルに譲っても問題無いと思える。
それに少し改良してみようと考えていた所だったので丁度良い。
「えっ、良いの。本当に?」
キラルは思った以上に喜んで見せるので、ロザリアンヌはピコピコハンマーをキラルに譲る事をあっさりと決めた。
「キラルが使ってくれるなら私も嬉しいわ」
ロザリアンヌの本心だった。
「それから前衛を任せるにはもう少ししっかりした防具も必要ね」
ダンジョンで手に入れた貴重な素材をかなりストックしてあるロザリアンヌは、早速あれこれと構想を練る。
(あの魔力の通りの良い上質な糸を使って布を錬成し何か作るか。どうせなら錬成する時に状態異常の耐性や結界を練り込んでみたらどうだろう?あっ、その前にまずはデザインの問題があるか)
「ねえロザリーってば!」
一人考えに耽るロザリアンヌに業を煮やしたキラルが耳元で大声を出した。
「あぁ、ごめんごめん、今キラルの装備について考えてたのよ」
「そんな所だろうとは思ったけど、考えるのは帰ってからにしようよ」
ロザリアンヌは辺りを見回して反省する。
さすがに賑やかな大通りで立ち止まり考えに耽るのは不審者でしか無かった。
キラルの探検者登録は取り敢えず保留にして、ロザリアンヌは急ぎ錬金術店へと足を向けた。
「あっ、その前にアンナには今日のダンジョン攻略は休みにして貰おう」
ダンジョン攻略を急がなくても良くなった事で、ロザリアンヌもかなり自由にできる様になっていた。
今まではキラルの様子から、一刻も早く闇の精霊に会った方が良いのかと急いでいた。
しかしキラルは擬人化する為に急いでいたのだと分かり、急ぐのを止める事にしていた。
今日はこれからピコピコハンマーの改良や、キラルの装備品作りに時間を費やそうと決め、かなり久しぶりにダンジョン攻略を休む事にしたのだった。




