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アンナの足元対策が概ね解決したお陰で、Bランクダンジョンの攻略もかなり楽に早くなった。
今までアンナの移動速度に合わせていたロザリアンヌも、そしてキラルもウィルもアンナもダンジョン内をまるでソロで攻略しているかの様にかなり自由に動き回り、グループとなって襲い来る魔物達を比較的簡単に思うまま蹂躙してまわった。
ドロップ品の回収もアンナとロザリアンヌで手分けしてできたのも、ダンジョン攻略を思った以上に楽にさせていた。
キラルもウィルもデバフ攻撃にはかなりの耐性があったし、アンナもロザリアンヌが作って渡した防御結界のブローチを付けていた。
それに回復魔法もそれぞれ持っていたので、たとえ攻撃を受けても今の所何の問題も無かった。
大抵の場合魔物が接近する前にそれぞれの魔法で倒してしまえるので、まったくと言って怖いもの無しだった。
お陰で50層もあったBランクダンジョンの攻略も、冬季休暇が終わる前に余裕で終わらせる事ができた。
思えばBランクダンジョンの攻略を始めた当初はかなりグダグダでいつ終わるか不安さえ抱えていたが、アンナとウィルが加わり気分的にもずいぶん楽に攻略出来た事が本当に有難かった。
勿論階層ボスやダンジョンボスはアンナとは別行動で一人で先に攻略して、隠し宝箱の回収はきっちり終わらせている。
そして驚いた事にここで手に入れたスキルは≪耐性無効貫通≫と言うものだった。
「もしかしてコレってかなり凄いんじゃない?」
デバフや属性魔法に耐性のある魔物にも普通に攻撃が効く上に貫通させてしまうなんて、魔物からしてみたらかなり恐ろしい事なんじゃないか?
「もしかしなくても私の攻撃はこれで無敵状態?」
ロザリアンヌはピコピコハンマーを握りしめそんな事を呟いていた。
しかし逆に考えたらここから先は耐性を持った魔物が多くなると言う事か?
そうなるとキラルやウィルやアンナにはかなり厳しくなって行くという事だろうか?
ロザリアンヌはこれから挑み始めるAランクダンジョンの事を考えていた。
マリーや探検者達から貰った情報では砂漠や荒野といった枯れたフィールドが多く、地中に潜み罠を仕掛けてくる魔物も多くなるという話だった。
キラルやウィルは空中移動なのであまり関係ないだろうが、ロザリアンヌの浮遊はそう高い場所を移動する訳では無く、アンナに至ってはぽわんぽわんジャンプだ。
もしかしなくてもこれから先はもっと慎重にしなければいけないだろう。
これは一度情報を確認しながらアンナとも話し合う必要があるなとロザリアンヌは考えた。
そしてアンナの協力を得てせっかくここまで順調に進めてきたが、アンナの安全を考えたらソロでの活動に戻った方が良いのかも知れないと思い始めていた。
「ダンジョンの攻略が難しくなって行くのは当然よ。でもロザリーが気配探知で魔物の場所を教えてくれれば別に問題はないわよね。寧ろ水辺より足場を気にしなくて良い私なら大丈夫だと思うわ」
アンナに相談を持ち掛けてみたが、あっけらかんとした返事にロザリアンヌは一気に身体中の力が抜けた様だった。
ロザリアンヌにしてみればかなり気合を入れ覚悟を決めて話し合いに臨んだのだ、こんなに簡単に返事を聞けるなんて思ってもいなかった。
「それに地中に潜む魔物は大型だけど群れないって話じゃない。だとしたらそんなに危険じゃないと思うのよ。みんなでフルボッコにしちゃいましょう」
アンナはニコリとした笑顔を作って何やら恐ろしい事を口にしていた。
しかしアンナの言葉から、さすがにソロで簡単に倒せる相手だとは思っていないらしい事に気付き、慎重に考えアンナを心配しているロザリアンヌを気遣い、敢えてそんな反応を見せているのだろうと気が付いた。
そしてここから先のダンジョン攻略も一緒に付き合うつもりだというアンナの決意を聞き、一人で変に遠慮して悩んだ事を少し反省していた。
ロザリアンヌはアンナを信じていた筈なのに頼りにしていなかったというか、アンナの事を自分より弱い相手として下に見ていた自分に気が付いてしまった。
実際にロザリアンヌが強いのはキラルを宿し、ダンジョンの隠し宝箱から手に入れたスキルや色んな効果のお陰なのに、まるで自分一人で強くなった様な勘違いをしていた。
それにアンナが居なかったらここまで多くの魔法も覚えられる事は無かった。
あまり魔法を多用してはいないが、アンナの魔導書と協力があってのあれやこれやだった。
そもそもアンナがキラルと出会わせてくれなかったら、ロザリアンヌもここまで順調にダンジョン攻略はできていなかったかもしれない。
それに自分の持つスキルや装飾品はアンナか別にいるかも知れない主人公の物だったのに、ロザリアンヌに前世の記憶があったから先に貰ってしまったものだ。
もしかしたら隠し部屋の宝箱が復活するかも知れないと考え、実際にそれとなくアンナに確かめさせたが、隠し宝箱が復活した様子は無かった。
なのでロザリアンヌが手に入れた宝の数々は、間違いなくこのダンジョンでは一点物のスキルや特殊効果付きの装飾品だった。
強くてニューゲームで行くわよなんて気持ちで始めたけれど、だからと言って誰かを見下して良いものではないだろう。
仲間と協力するのには上下関係なんてけしてあっていいものじゃない。
信じあい信頼し合い助け合う心が大事なのだとロザリアンヌは改めて考える。
実際に少しばかり周りの人達より強くなったとはいえ、自分は特別だと増長し傲慢になる前に気付けて良かったとロザリアンヌは心から思う。
ここで間違えずに済んで良かったと、ロザリアンヌは改めてアンナに感謝をするのだった。




