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これから暫くは1日2話UPできるよう頑張ります。
魔法の箒を改良しようにもまったくもって良い案が浮かばなかった。
それに例えば箒を絨毯にしようがボード型に変えようが、きっとアンナの≪私には無理≫という反応は変わらないのだろうと思えた。
「何かないかなぁ・・・」
アンナが抵抗なく使ってくれそうで、足場の悪い場所の移動に便利な物。
そうは考えてみてもなかなか良い案が浮かばず、ロザリアンヌは諦めてアンナにダンジョン攻略に付き合って貰っているお礼に先に武器を作る事にした。
アンナは武器を持たず杖さえも使わずに魔法を放っているのだ。
(アンナの武器かぁ~)
やっぱり魔法メインのアンナの武器と言えば杖だろうなと考えていてふと頭に浮かぶイメージ画像があった。
とあるRPGゲームのヒロインのレア武器として攻略本に載っていた画像だった。
そして同時に連動してメリー〇ピンズが傘を片手に風に乗って舞い降りてくるシーンも思い浮かんだ。
「傘って武器にもなるし便利だよね」
ロザリアンヌは凄い事を思い付いた様な気がして、そこからは夢中になって色々考えながら試行錯誤した。
傘を開いてハンドル付近に取り付けた魔石に描かれた魔法陣に魔力を流すと、傘の露先から風が地上に向けて吹き出し、その力で傘がふわりと浮き傘を持った身体ごと3m程舞い上がった。
その後は開いた傘の浮力を利用してゆっくりと地上に降り立つ事ができる。
さらに石突から魔法が放たれる様にする事で当然杖としても使えた。
さらにさらに傘に結界を施す事で傘自体も強化され、畳んだ状態だと打撃武器としても使えた。
「もうこれは完璧なんじゃない?」
武器としても最高の仕上がりだと思えた。
ロザリアンヌは今度こそはと気合を入れてアンナを訪ね、早速説明しながら実演して見せた。
「凄いじゃない!」
アンナは本当に嬉しそうに叫ぶように言ってくれた。
「そうでしょう~」
ロザリアンヌが待ち望んだアンナの反応を見る事ができて、ロザリアンヌはかなり満足だった。
実際にアンナが使っているのを見ていると、ふわりと身体が浮き上がりフワフワと降り立つというよりも、ぽわんぽわんと長閑にジャンプしているように見えた。
アンナに言わせるとジャンプの高さも飛距離も降り立つ場所も自分の意志で思い通りにできる様で、思った以上に使い勝手が良いとご機嫌だった。
ロザリアンヌは漸くアンナに喜んで貰える物が作れたととても嬉しくなった。
やはり誰かに喜んで貰えるって本当に嬉しい事だとロザリアンヌは感じていた。
「遠慮なく使わせて貰うわね」
アンナはそうは言ってくれたが、ロザリアンヌにはひとつだけ心配な事があった。
それはロザリアンヌの感性によるデザイン問題だった。
自分が可愛いと思うものが他人にも受け入れて貰えるかまったく自信が無かった。
「アンナがデザインしてくれるなら色柄や形を変える事も可能だよ」
念のためにロザリアンヌが確認すると「そんな必要ないわ、この色もとても気に入ってるから大丈夫よ」とアンナは傘を畳みながら本当に気に入ってくれた様子を見せていた。
何となくアンナの事を自分なりにイメージして、色は柔らかく優しいミルクティーブラウンで縁にレースをあしらった簡素なデザインだった。
お洒落なデザインとして色々な形は思い浮かんではいたが、結局実用性の方を重視して形は定番に近い物だった。
ロザリアンヌにはこれ以上のお洒落な色柄を考えるのも無理だったが、アンナには気に入って貰えた事に心から安心した。
「じゃぁ早速行きましょうか」
アンナはダンジョンへ行くにはいつもより大分早い時間にも拘らず、実際にダンジョンで使ってみたい衝動を止められずにいる様で、ロザリアンヌを急かして来た。
「大丈夫ですか?」
ロザリアンヌは何を心配して大丈夫かと聞いたのか自分でも分からなかったが、アンナに引き摺られる様にしてダンジョンへと向かった。
ダンジョン内では、ぬかるんだ場所や水辺を歩かなくて良くなったアンナはとてもご機嫌だった。
ぽわんぽわんとジャンプで移動する姿が優雅そうに見えるのは良いが、武器として作った筈なのに武器としてはまったく活用されず、相変わらずアンナは傘を片手にもう一方の手から魔法を放っていた。
傘を開いたままでずっと持っているのだからそれも仕方ない事だとロザリアンヌは納得し、使い方はアンナの自由だと思い「まぁ良いか」と小さく呟いた。
武器として作った筈の傘が浮遊道具として活躍しているのは事実なので、また別の使いやすい杖を作ろうかとアンナに提案してみたが、杖を持ってしまったら傘が扱いづらくなるじゃないと一蹴された。
「大丈夫よ、足場が安定した場所ではちゃんと武器として使わせて貰うわ」
そんな事を言いながら楽しそうにぽわんぽわんとジャンプ移動を楽しむアンナを見て、自分用の傘も作ろうかと考えるロザリアンヌだった。




