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初めて会った時は中学生位にしか見えなかったアンナが、いつの間にか普通に成人している位には成長していた。
そんなロザリアンヌも幼さが抜け少女と言うか乙女と呼べる領域に入っていた。
精霊をその身に宿したら肉体の成長が著しく低下すると言う話は何だったのだと言う疑問をキラルにぶつけると、老化速度が低下して総じて長命になると言う意味であって、見た目は精霊の成長度合いに影響される事が多いそうだ。
要するにウィルの成長度合いがアンナの見た目年齢に影響を及ぼし幼く見せていたが、最近はウィルも成長したためにアンナの姿も成長したのだと言う。
そういうロザリアンヌはと言うとキラルの成長が著しく早く、その上ロザリアンヌの精神年齢にキラルが引っ張られている影響もあるのだろうと言う話だった。
キラルの説明にロザリアンヌは何故か複雑な心境だった。
人生経験で言うと40年以上を過ごしているとは言え、ロザリアンヌとしての人生はまだ14年なので、このまま見た目が精神年齢に引っ張られておばさん化されるのにはちょっと抵抗がある。
そんな事を考えていると、キラルは大丈夫よと補足してくれる。
大抵の場合20歳代の見た目で長く落ち着くそうだ。
それは精霊の成長した姿が人間と比べてその位の見た目だからだ。
何にしても乙女心としては、実年齢より老けて見えるのはやっぱり複雑な心境だった。
前世の私が中学生の頃は少しでも大人っぽく見せたいと思った事もあったが、ロザリアンヌは幼さだろうが若さだろうがその時々の人生をそのまま楽しみたいと考えている。
と、そんな事を言いながらも、若さが永遠だったらそれはそれで嬉しいとも考えていて、本心では永遠の少女に憧れていたりもする。
何にしてもこれ以上見た目年齢が上がるのはちょっと避けたいところではあった。
乙女心は複雑なのです!
そしてこのままじゃ魔法学校の同級生達に混じっても、一人だけさらに浮いてしまうと感じていた。
いや、しかし、実際その見た目が無くても浮きまくっていて、関わるなオーラ全開にしているのだから今さら関係ないかと思い直す。
どうせ来年には本科3年生に飛び級する予定でいる事を考えれば、そこに混じって一人幼く見えるよりはマシかと考える事にする。
そしてロザリアンヌの年齢からEランクダンジョン攻略に難色を示していたマリーが漸くOKを出してくれた。
探検者達の応援が一番大きかったのだが、魔法学校からの探検許可もあり、その見た目からも反対材料が無くなってしまったのだ、いくらマリーが心配だと言っても誰にも止める事などできなくなっていた。
ロザリアンヌは既にやる気も気合も満タンだった。
それにダンジョン攻略をしているのが何気に一番安全だと気が付いた。
国が管理するダンジョン内では誰かに襲われる心配も無いし、ダンジョンの周りには探検者というロザリアンヌの味方になってくれる沢山の目があった。
だからこんな場所で襲ってくる輩は居ないだろうと思われた。
「ふ、ふ、ふ~、今日からEランクダンジョンの攻略を始めるわよ!」
ここからは大型魔物や中型魔物も入り乱れて複数で出る事が多く、パーティーで攻略を始める探検者もかなり増えるのだ。
だからマリーもソロでダンジョンに入ろうとするロザリアンヌを心配していたのだった。
しかし最近のロザリアンヌは錬金術で攻撃アイテムである目つぶし爆弾や嗅覚を刺激する煙球を作っていた。
広範囲魔法も使えるロザリアンヌだったが、近接攻撃派と言うよりお気に入りのピコピコハンマーでの攻撃にいまだに拘っていた。
初めて自分で作った自分専用の使い慣れた武器という事もあるが、考え抜いて拘って苦労して作り上げたという思いがあってなかなか手放せずにいたのだ。
それに攻撃力2倍の付与効果を短剣から移し替えてしまった事もあり、他に新たに武器を作ったらその付与効果欲しさにピコピコハンマーを潰すかダンジョンボスの周回をまたしなくてはならなくなる。
そう思うともっと長く大事に使いたいと思っていた。
それに今の所認識阻害に空間探知に気配探知があるので、攻略に困る事など無くこれで充分だろうとも考えていた。
そしてこのEランクダンジョンからは階層ボスが階層ごとではなく5層おきになる。
それはここから一気に階層が増えていくからだ。
Hランクが5層、Gランクが7層、Fランクが10層だったが、Eランクダンジョンは全20層とダンジョンランクが上がるごとに階層も多くなって行く。
いまだに踏破されていない最高難易度ランクのダンジョンはいったい何階層あるのだろう。
ゲームの中では時間が足りなくてCランクダンジョンまでしか攻略していないので、そこから先のダンジョン攻略も今から楽しみだった。
ロザリアンヌの入学前当初の計画では、本科に上がる時にはCランクダンジョンまで攻略を終わらせる予定だった。
しかし来年本科3年生に飛び級し2年で魔法学校卒業となるともう既に何を目的にした予定だったか見失っていた。
が、しかし、15歳で魔法学校卒業する時にはきっとレベルも99になっている事だろう。
そう、魔法学校卒業とともにロザリアンヌの本領が発揮されるのは間違いないと信じ、今は面倒くさいあれもこれもすべて忘れ、今日も変わらずにダンジョンに入るロザリアンヌだった。




