42
マッシュからは相変わらず頼みもしないのにあれこれと課題が出された。
ロザリアンヌの他にも飛び級を狙う生徒はいるらしく、ロザリアンヌだけに課題を出すのは不公平だとちょっとした騒ぎになった。
それを知りロザリアンヌは課題を辞退しようと考えたが、それならばと学校側が希望者には希望者に合わせた課題を出す様になっていた。
なので課題は続けて大人しく受け取り、逆らう事無く言われるままに進めていた。
とは言っても、早く終わらせればそれだけ追加される事になるので、休憩時間の時間潰し程度に収め敢えて課題をする時間は取らずにいた。
気配探知を覚えた事で聴力が良くなったらしく、今までヒソヒソだった声がはっきりと何を言っているのか聞き取れるようになっていた。
お陰で逆にヒソヒソ話を聞き取らない為の集中力が必要になったのは、良かったのか悪かったのか・・・
人の噂話が耳に入る様になると、気にしない様にしていた事も何故か気になるもので、外に出たがる様になったキラルには比較的自由にさせ、密かに情報収集もお願いしていた。
この先キラルの事が騒ぎになったとして、その結果ロザリアンヌが光の精霊を宿している事がバレても良いと腹を括る事にした。
光の精霊をその身に宿した事がバレるより、寧ろ陰でどんな陰謀が渦巻いているのか知る方が今のロザリアンヌには重要に感じられた。
今さら聖女候補になる気などさらさらないし、それにステータスを確認すると既にジョブは錬金術師見習いではなく錬金術師になっていた。
確か本科に上がる時か遅くとも卒業時までに正式にジョブ認定される予定だったのに、どういう訳か既に錬金術師として認定されていた。
ステータスかスキルの熟練度が影響しているのか、それとも国か学校側が手を回したとも考えられた。
どちらにしてもロザリアンヌにしてみれば有難い誤算だった。
これでロザリアンヌも大手を振って錬金術師として活躍する事も可能になったと密かにほくそ笑んでいた。
例えばこれから先学校を辞める事になったとしても、早々に錬金術師として活動できるのだから、ロザリアンヌにしてみれば一つの安心材料を手に入れた様なものだった。
そしてキラルのレベルが上がったのか、物理攻撃も魔法攻撃も防御できる多重結界と言うかなり強固な結界魔法を覚えた。
なのでもう一つ安心材料を手に入れるべく、自分専用の装飾品として結界魔法盛り盛りのブローチを作る事にした。
ロザリアンヌが錬金で作った探検者達用の防御力UPのバングルは、空気中から魔力を自然吸収し発動する形なので、常時発動型とはいえその能力はイマイチ弱かった。
しかし魔石に魔導書の作成で学んだ魔法陣技術を取り入れ、自分の魔力を注入する事で常時発動させる形にしたところ、効果もかなり高くなった。
そしてそれだけでなくロザリアンヌの魔力に反応するロザリアンヌ専用の物も作る事ができた。
その結果を受け、これ幸いと魔石には多重結界魔法を書き込みかなり高い防御力UPを付けた他に、毒と麻痺と睡眠無効の効果を付与したブローチを作り上げた。
魔石に書き込んだ多重結界とブローチに付与した効果は別物扱いなのか、4つの効果を付与したロザリアンヌ専用のブローチだ。
もしこのブローチを他の誰かに盗まれたとしても、ロザリアンヌの魔力が魔石から無くなった時点でただのブローチに成り下がってしまうので盗まれた時の対策にはなっている。
それから戦闘中に落としてしまう心配を避けるために、魔力を練り込んだ強固な糸を錬金しそれを使って縫い付ける事でその心配も払拭させた。
これで魔石が魔力切れを起こさない限り、例え不意打ちを受けたとしてもロザリアンヌの身はかなり強固に護られる事になった。
これから先のダンジョン攻略は勿論のこと、万が一ロザリアンヌを襲おうと考える輩にも太刀打ちできる様になったという事だ。
こうしてロザリアンヌは錬金術師として独り立ちする為にも、ダンジョン攻略を進める準備を着々と始めていた。
いずれはまだ踏破されていない最上級ダンジョン踏破も視野に入れていた。
そしてダンジョン踏破を視野に入れた事で、ロザリアンヌは色んな事が気になり始めていた。
ゲームでの知識しか持たないロザリアンヌはこの国以外と言うより、この街以外の事を殆ど知らなかった。
そもそもこの地にダンジョンを集めた大賢者はいったいどんな人で他にどんな力を持っていたのか。
多分時空魔法を使って出入り口をこの地に集め定着させたのだろうが、今のロザリアンヌにそれができるかと聞かれるとできるとは思えなかった。
それにこの大陸の大きさもはっきりとは知らないが、ゲームの設定上ではこの大陸にはこの国しか存在していない。
となると、この世界に他にどんな大陸があるのか、他の国はいったいどんな国なのか。
狭い範囲の中で生活を繰り返していたロザリアンヌは、ここへ来て今まで興味も無くスルーしていた疑問の答えを探す事にした。
マッシュに出される課題は魔法関連の物や魔道具関係の物が多かった。
それはきっとこの国の方針から来るもので、魔法学校で習うものなのだろう。
ロザリアンヌはマッシュの課題の他にも大賢者の功績に関する物や、自国の歴史だけでなく世界史や地理に関する物など広く知識を広げる事にした。
しかし図書館ではロザリアンヌが探す本はなかなか見つけられず、仕方なく童話の様な古書を読み漁っていた。
ロザリアンヌの知りたいという欲求は尽きる事が無く、この国以外の錬金術はどうなのかも気になり始めていた。
そしてロザリアンヌのそんな興味がまるでこの世界を動かし始めたかのように、魔石を動力とした大型船が開発された。
そして時を置かず他の大陸から帆船を何隻か連ねた使節団がこの国に到着したのだった。




