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ピコピコハンマーに攻撃力2倍の付与効果の移し替えは既に成功していたので、移し替え自体は心配していなかった。
しかし一つのアクセサリーに幾つ迄効果を付与できるかが不安だった。
Gランクダンジョンの隠し宝箱で手に入れた3つのペンダントの効果を、すべて一緒にできるか緊張しながら練成して行く。
そしてやってみると効果を3つとも付与できたので、一つの装飾品に最低でも3つは付与できる事を確認できた。
毒耐性・麻痺耐性・睡眠耐性が付与されたペンダントを手に、これで石化耐性を付与出来たら全状態異常耐性になるのだろうかと新たな疑問を持ったので、石化耐性を手に入れたらまた挑戦してみようと考えていた。
それから毒耐性ペンダントと麻痺耐性ペンダントを錬成付与で効果を移した時に、効果の無くなったペンダントは残るものだと思っていたが、本当に不思議なのだが何故か統合され一つのペンダントになっていた。
それも大きさも形も変わる事が無かったので、物量と言うか体積と言うか質量的に考えて何がどうなったのかどうしても納得がいかなかった。
しかし考えても分からなかったので、これも錬金術の不思議として結果だけを飲み込んでおいた。
そして毒耐性と麻痺耐性の乗ったペンダントに睡眠耐性を移し替える時、試しにデザインに関しても変えられるかもしれないとイメージしてみると、結果は見事に成功だった。
しかし変えられたのは形だけで、使われていない素材の物に変える事はできなかったのは当然と言えば当然だろう。
でもこれでもう一つ疑問が湧いた。
今度は3つの耐性効果が付与されたペンダントから、一つの耐性効果だけを移し替えたら元のペンダントはどうなるのだろう?
新しく移し替えた装飾品に統合されてしまい、残りの2つの耐性効果は失う事になるのだろうか?
新たな疑問をはっきり否定する事もできず、折角の効果を失うのが怖くはあったが、実験をしないという選択肢は無く、ロザリアンヌは新たにブローチを作り麻痺耐性だけを移し替えてみた。
やり方はいたって簡単、錬成付与の際に新しく作るブローチの素材と効果の付与されているペンダントを一緒に錬金開始。
完了までの間に頭に浮かぶ付与効果の中から、移し替えたい効果だけを選んでブローチのデザインをイメージしながら作成すれば良い。
そして出来上がったブローチは見事に麻痺耐性が移し替えられていたが、思った通り毒耐性と睡眠耐性の効果が残っていたペンダントは消えていた。
結果、複数の効果が付与された中から一つを抜き取ると、その他の付与効果は消される事が実証された。
移し替えは簡単に出来るが、複数の効果の中から一つを選ぶとなったら他は捨てる事になるのだとすると、効果の移し替えは良く考え厳選しなくてはとロザリアンヌは思うのだった。
そうしてロザリアンヌは魔力量100%UPが付与された銀の腕輪に、イヤーカフからMP消費半減の効果を移し替えた。
そしてこの後この腕輪には、Fランクダンジョンのダンジョンボス部屋で手に入る魔法威力2倍の効果を移し替える予定だ。
そうすれば魔法に関しての効果が纏められた装飾品が出来上がり、スッキリシンプルになるだろうと考えている。
それから、経験値3倍とドロップ率UPを一緒にしようかと思ったが、レベルがMAXになったら必要が無くなる経験値3倍とは言え、自分では作れない貴重な効果を失いたくはない。
もしかしたらドロップ率UPの効果だけをまた移し替えたくなるかもしれないと考えて止めておく事にした。
そして次に自分でも作れるだろうと各状態異常耐性効果を付与したアクセサリー作りに挑戦した。
状態異常耐性効果を付ける為にそれぞれの治療効果のある素材を使用してみると、思った通りに耐性効果を付ける事ができた。
こんなに簡単だったのだと納得しながら、次に治療効果のある素材を使うのではなく、デバフを付けた時に使った素材を使用したらどうなるのかを考えた。
例えば魔物が放った猛毒を相殺する感じにできたら、耐性じゃなくて無効にできるんじゃないかと。
デバフ効果を付与したアクセサリーを自身で身に付け、自分にではなく相手に跳ね返す為に結界として使用すれば相殺できるかもしれないと思い付いた。
簡単な攻撃から身を護る下級結界魔法はロザリアンヌも既に使える様になっていた。
錬金調合の時に結界魔法とともに猛毒キノコや痺れキノコに睡眠キノコを状態異常無効をイメージして一緒に使ってみた。
思っていたより簡単にあっさりと成功した。
ついでに毒結界に麻痺結界、睡眠結界の魔法も覚えられた。
お陰で装飾品に毒・麻痺・睡眠に関しての無効効果を簡単に付与できる様になった。
もしかして自分には錬金術チートでもあるんじゃないかと思う程簡単に作れた事に本当に驚いた。
結果、比較的手に入り易い魔物の皮でバングルを作り、各状態異常無効の効果を付与して店で売り出す事になった。
ついでに結界魔法を付与して防御力UP効果のバングルも作る事にした。
探検者は8割以上が男の人なので、バングルと言うアクセサリーが受け入れられるかと少し心配になったが、腰のベルトにポーチを着けている時点で大丈夫だろうと判断した。
そして店の新たな商品として早速取り扱うと探検者達に忽ち人気になった。
「ロザリーコレ本当に凄いな。毒ガエルの毒を軽く跳ね返してたぞ」
「痺れヘビの攻撃も全然平気だった」
「でも一応気をつけてくださいね。ダンジョンでは絶対に油断は禁物ですからね」
「分かってるって。ロザリーに言われちゃ形無しだな」
探検者達に喜ばれていると知り、ロザリアンヌは夏季休暇の自由研究でも終わらせた気分だった。
ロザリアンヌとしてはかなり充実した錬金術が実証でき、課題も早くに終わらせ、ダンジョン攻略は思った様に進まなかったが、それでもとても有意義な夏季休暇を過ごせたのだった。




