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薬草ダンジョンの第2階層を2度周回すると、ロザリアンヌのリュックはギニーピッグのドロップした肉で一杯になった。
仕方なく買取窓口へと行き、薬草と毒消し草を避けてドロップした肉30個を1つ200ギリで買い取って貰った。
合計6000ギリだ。
1ギリがだいたい日本円換算でそのまま1円なのでとても分かり易かった。
薬草などの採取にも時間を取られたが、大体ダンジョン1アタックに1時間弱かかった様だが、昼にはまだまだ時間があった。
いつもなら昼までダンジョンを周回し、家へ戻って昼食後は錬金術の練習をする予定になっている。
しかし今日はこのまま魔導書店に寄って魔導書の値段を確認する事にした。
ゲームの中では精霊の助けもあり、浄化や光属性の回復魔法の他に結界や攻撃魔法等の光魔法がレベルか熟練度に準じて覚えて行けた。
なので魔導書などまったく必要としなかったが、今回は魔導書で覚えるしかないだろう。
ロザリアンヌは商業地区へと戻り、魔導書店を探す。
この商業地区には武器屋・防具屋・アクセサリー店・魔導書店・錬金術店といった探検者相手の店の他にもレストランやカフェといった飲食店に洋品店に靴屋・雑貨屋・食材店などいろんな店があった。
商業地区の中央通りには曜日によっては市も立つが、今日は開設されてはいなかった。
その他に探検者相手にお酒を出す店や賭博場などは政府管轄地域の探検者ブースに併設されていて、治安の事もあり政府が管理している。
どちらにしてもロザリアンヌにはまったく関係ない店だ。
ロザリアンヌは自分の錬金術店から少しだけ離れた場所に目的の魔導書店を見つけた。
この街に越してきてからだいぶ過ぎているのに、今まで錬金術店とダンジョンの往復ばかりであまりこの街の中を出歩いた事が無かった。
探してみるとお使いで良く行くお馴染みの店以外は何も知らない事に気が付いた。
「こんにちは」
ロザリアンヌは静かに店の扉を開けて、中を覗く様にして挨拶をした。
「いらっしゃいませ~」
返って来た挨拶は思いの外元気で、奥から姿を現したのは中学生位(?)の少女だった。
腰のあたりまでありそうな赤く長い髪を三つ編みで纏め、エプロンをしている所を見ると店の手伝いだろうか?
「すみません今日はお客じゃなくて、魔導書っていくら位するのか知りたくて来ました」
ロザリアンヌは申し訳なくて少しおどおどとして話すと、店の子は「構いませんよ、魔導書ですね」と案内してくれた。
店の棚には色んな属性の魔導書がずらりと並べられていた。
「うちも全部は揃えて無いんですよ、でも初級魔法ならば火・水・土・風と無属性の五属性は揃ってます。お値段は人気によって違うのですが何をお望みですか」
ロザリアンヌは親切に説明してくれる店の子になんと答えようかと少し迷う。
魔法が使える様になればと考えていただけだったので、属性で何をと聞かれるとそこまでは考えていなかったのだ。
「あの、ダンジョン攻略をするのに使える攻撃魔法が欲しいのですが、人気の魔法ってありますか?」
ロザリアンヌは自分で考えるより聞いた方が早いかと思い素直に聞いてみた。
「探検者に人気なのは、ファイヤーアローが人気で50万ギリよ。次がウィンドカッターが45万ギリ。ファイヤーボールとアクアカッターとストーンバレットが40万ギリって所ね。無属性は何故か人気が無いのよね。でも私は値段よりあなたが使う為の使い勝手を考えた方が良いと思うのよ。簡単に言ったら好みの問題なんだけどね」
そういう風に説明されると、ロザリアンヌも確かにそうだと考えさせられた。
ゲーム内では光魔法しか使った事が無かったので、何でも良いかと簡単に考えていたけれど、これから自分で使う魔法なんだからやっぱりじっくり考えた方が良さそうだ。
「分かり易い説明ありがとうございました。お金が貯まるまでに良く考えてからまた来ます」
ロザリアンヌは丁寧にお辞儀をすると、店を後にしようと振り向いた所で声を掛けられた。
「ちょっと待って、あなたの名前を聞いても良いかしら」
「ロザリアンヌって言います。この先の錬金術店で見習いをしてます。みんなにはロザリーって呼ばれてます」
ロザリアンヌが自己紹介をすると店の子はさらに笑顔になり
「ソフィアさんのところのお孫さんね。私はアンナよ、大抵はこの店で店番をしているわ。これからもよろしくね」
そう言って何故か頭を撫でられた。
中身は大人なロザリアンヌだけれど、どう見ても少女の彼女のその行為に何故か嫌な気はしなかった。
「はい、また来ます」
ロザリアンヌは頭を撫でられた照れくささを隠す様に元気に答える。
「別に用が無くてもいつ来てくれても良いのよ」
アンナはウインクをすると店の出口まで一緒に歩き、しばらくロザリアンヌを手を振って見送ってくれた。
ロザリアンヌは何だかそれがとても嬉しくて、スキップをする様に錬金術店へと帰って行くのだった。




