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私が【プリンセス・ロザリアンロード】を真面目にプレイしていた時は、攻略対象者の為に毎日好みの物や手作りのお菓子をプレゼントするのに時間を費やしていた。
それはもう毎日毎日時間を掛けてお菓子を作ったり、白いハンカチに細かい刺繍を施したり、それは男を落とす為の血が滲む様な私の努力と言って良いだろう。
しかし結局のところそんな地道な活動に時間を費やすより、ダンジョンで自分のステータスを上げる事に時間を費やす方が攻略は簡単だと言う事にある日気が付いた。
バッドエンディング拾いでやる事も無くダンジョンに一人でひたすら籠っていたら、なんでか勝手に好感度アップイベントが起きた。
出会いイベントしか起こしていなかったのに何で?状態。
気付いたら私のステータスが攻略対象者が好感を抱く一定数値を超えていた、というオチだった。
きちんと攻略サイトを覗いていればもっと早くに気付けたかもしれない事実に、私は今までの努力を返せとコントローラーを投げつけたくなった。
しかしそれも男に媚びるより自分を磨けと言う教訓なのだと素直に受け取り、それからはひたすらステータスアップに時間を費やしたのも今となっては懐かしい記憶だ。
そして今にして考えると攻略対象者はみんな肩書だけの男達で、私にステータスを求めるくせにじゃぁ自分達はどうなの?としか言えないお粗末なステータスだった。
ゲームだったからそこまで深く追及せずに攻略していたが、現実となって考えると何故か腹立たしさが湧いてくるのは不思議だ。
しかし今回現実となったこの世界で自分のステータスを上げるのは、まずは錬金術師として成功する為であって攻略対象者を落とす為ではない。
あくまでも錬金術で使える魔力量を増やしたいという思いからだ。
そして当然祖母に教わって、錬金術師としての修行も始めている。
祖母のお古の機材を譲り受け、初歩的な下級ポーションや錬金術に必要とされる中和剤などを日々制作してもいた。
錬金術で何かを制作するには、その素材とレシピも必要だったが当然練成の為の魔力も必要とされた。
より質の良い物を作ろうと思ったら、高品質の素材と共に多くの魔力を必要とした。
故にロザリアンヌはステータスを上げる為、錬金術で使う素材を集める為に日々ダンジョンへと通っていた。
いずれは最高難易度のダンジョンに挑み最高品質の素材を集め、私のゲーム知識にある錬金術の集大成である賢者の石やエリクシルも作りたいと思っている。
その為にも日々研鑽あるのみと、ロザリアンヌは今日もダンジョンへと足を運ぶ。
「おはようございます」
ロザリアンヌは今日も窓口に座るマリーに挨拶をしながら探検者カードを渡す。
「おはよう、今日も元気ね」
「はい、それで今日から2層の攻略を始めたいのですが大丈夫でしょうか」
マリーは入ダン手続きをしながら内容を確認すると「大丈夫そうよ。でもくれぐれも気を付けてね」と返事をくれた。
ロザリアンヌは安心してニッコリと微笑むとマリーが差し出した探検者カードを受け取り、いつもの薬草ダンジョンの第2層ダンジョン入り口へと向かった。
この階層は薬草の他に毒消し草が採取できて、ギニーピッグと言う体長50㎝ほどもあるネズミが現れるダンジョンだった。
そしてこのギニーピッグの肉は豚肉より美味しいという評判もあり、肉目当てに入る探検者も居るので、ロザリアンヌが今まで入っていた1層よりは人気があった。
それでも並ぶ事無くダンジョンに入れるのは、ソロで挑む探検者が多いためだろう。
転移して入った先の広さは一度に入る人数に連動していて、元々の広さを分割させている構造上大人数パーティばかりが入ると分割数も少なくなり、ソロでの攻略者が多いと分割数も多くなる。
なのでEランクダンジョンまではソロで入る人の方が断然多く、入ダン待ちの列を作っている事はまず無かった。
ダンジョン内で薬草と毒消し草を採取していると、草陰にガサゴソと動く気配がある。
ロザリアンヌは攻撃力2倍の短剣を手に構え、そっとその気配に近づき一気に短剣を突き刺す様に振るう。
さすが攻撃力2倍だけあって、一撃で難なく倒せたことにロザリアンヌは安心して、肺に溜まっていた息を一気に吐き出した。
「動きもそれ程速くないから大丈夫そうね」
スライム相手にはあまり心配も緊張もしていなかったが、さすがに向こうからも攻撃してくる魔物となると、現実で戦うには少々緊張していたのは事実だった。
「早く魔法を覚えたいな」
今一番のロザリアンヌの願いはまさに魔法を使える様になる事だった。
魔法を使える様になるためにはまず魔導書を手に入れる必要があった。
例外として火・水・風・土・氷・雷・木・光・闇などの属性精霊に愛されるという条件下でも魔法は使える様になる。
その一例がゲーム内で光の精霊に愛された主人公だった。
才能があれば鍛錬次第で自力で覚える事も可能とはされているが、ロザリアンヌはその鍛錬に時間を費やすのなら、ダンジョンに入りステータスを上げながらお金を稼ぎ、魔導書を手に入れようと考えていた。
幸いな事にここのギニーピッグの肉はそこそこの値段で買って貰えるし、最近ロザリアンヌが作る下級ポーションも店に並べられる様になっていて、ささやかとは言え利益の分け前を祖母から貰っていた。
そしてこれから毒消しポーションも作れる様になればさらに収入も増えると思うので、下級の魔導書なら手に入れるのも容易いだろうと考えていた。
今日はこのままダンジョン周回をして、ギニーピッグの肉を売った状況を見てから、魔導書の値段も調べてみるかと予定を考えるロザリアンヌだった。
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