282
本日は『私は強くてニューゲーム~レア素材を求めて仲間たちと最強錬金旅はじめます~ 』の発売日です
すでにご予約いただいた方には心から感謝申しあげます
そしてまだの方はよろしければお手に取っていただけると幸いです
『ロザリー、まさかこの男に私達が精霊だとバラす気か?』
『えっ、何で?』
『何でって、今この男に私達四人と言ったがまだ女体化していないが良いのか』
「あっ・・・」
ロザリアンヌは考えが先走りすぎてうっかりしていた事を指摘され顔を青くする。
「私が頼まれているのは見目麗しい侍女となり得る女性でして、男や子供を後宮に入り込ませるのは少々難しいかと・・・」
案の定偉そうな男にやんわりと断られる。さっきまで呆然としていたのに、商売の話と踏んだのか急に正気を取り戻す辺りこの男はそこそこに優秀なのだろうか。
「今から別の女性を二人連れてくるから彼と私と併せて四人って事よ」
「しかし男なのですよね? 女性でないと無理です」
「大丈夫よ、全力で誤魔化すから」
「いやいや、かの方が望まれているのは世継ぎとなる男の子なのですよ。子を産めない男などいくら誤魔化そうとも絶対に無理です」
「貴妃様が元気になれば問題ないんですよね。私達はその貴妃様を助けに行くと言ってるのよ」
「そんな事が簡単にできるとでも?」
「ええ。毒を盛られているのなら回復させる手段を持っているし、病気も治す事ができるわ。簡単よ。何ならこれから健康を維持させる事も可能よ」
ロザリアンヌは自信満々に胸を張る。回復手段となり得る魔法もあるが、今回はポーションを活用しようと考えていた。
そしてこの街に錬金術を広めポーションを広める良い機会になるとも思っていた。
それに何なら結界や毒耐性などのデバフ耐性を持ったアクセサリーを広めるのもアリかなとも考えていた。
「商人としてはそのような戯れ言を信じる訳には参りません。貴妃様には散々手を尽くしているのですよ。今まで後宮の高名な医師にも無理だった事を簡単にできるとは思えない」
「分かったわ。じゃぁ私が持っている病気を回復させる秘薬を見せるわ。もしそれがちゃんと効果を発揮したら私達を後宮に入れてくれると約束して。私は本当に貴妃様を助けたいのよ」
偉そうな男はしばらくロザリアンヌを値踏みするように見ていた。
「言っておくがお前に選択肢があると思うのか」
レヴィアスは偉そうな男を縛る影のロープをまたもや締め上げた。
「い、痛い痛い痛い」
「レヴィアス解いてあげて!」
ロザリアンヌの強い要望にレヴィアスは仕方なさそうに影のロープを解き元に戻す。
偉そうな男の皮膚は影のロープのトゲが食い込んだ場所が穴が開くように傷つき血が流れ出している。
ロザリアンヌはマジックポーチからポーションを取り出しその傷に中身をかけると、ポーションをかけた所からみるみるうちに傷が塞がり治っていく。
「・・・し、信じられない」
「これは怪我を治すポーションよ。これの他にも毒を取り除くポーションや体力を回復させるポーションもあるのよ。私達の国では当たり前にある薬みたいなものよ」
思った通りこの国にはまだ錬金術は知られていないようだ。その分薬草学が発達しているのだろう。
それにこの大陸で最初にみた戦争は魔法やテイマーが主体だったが、この国の近くで起こっていた戦争は魔法を使っている形跡が無かった。
多分同じ大陸にありながら場所や国によって文化も知識も色々なのだろう。本当に不思議な話だ。
「・・・」
「約束よ。私達を後宮に入れてくれるわよね」
「その薬を売ってくれるのなら考えても良いだろう」
「考えるだけじゃダメよ。後宮に入れてくれたら売ってもいいわ」
偉そうな男は一瞬だけ渋い顔をしたのをロザリアンヌは見逃さなかった。
多分誤魔化せると思ったのだろうが、そんな言葉の綾みたいな展開は物語の定番過ぎて返って分かりやすいのだ。
(商人が考えを顔に出すなんてまだまだだね)
ロザリアンヌは何故か勝ったような気になっていた。
「私は依頼を受けただけなので決めるのはかの方だ。かの方に急かされているので明日にでも連れて行く事はできるが、その先は約束できない」
「それでいいわ。もし後宮に入れたらこのポーションはあなたに売ると約束するわ」
「絶対に他の店には卸さないと約束してくれるのだな。それにどのくらい用意できるのかも知りたい」
「そうね、取り敢えず百本ずつでいいかしら。それならばすぐに用意できるわ」
最近は魔法の熟練度稼ぎと錬成の練習がてら作ったポーションは、転送ボックスを使いすぐにソフィアの錬金術店に送ってしまうので持ち合わせはあまりなかった。なのですぐに作れる量となるとその程度になってしまう。
それにあんまり大量に用意できると知られると今度は別の厄介事になりそうな気もしていた。まぁいずれレヴィアスの商会がこの大陸にも進出してくれば、そんな問題などどうにでもなるのだろうが。
「本当だな」
「私は一度口にした約束は破らないわよ」
ロザリアンヌは言霊を信じていた。前世でも散々思った事だが、一度口にした事には多少なりとも何かが宿ると思っている。
自分を奮い立たせる為の言葉なら問題ないだろうが、誰かに投げかけた何気ない言葉でも相手に期待させるような言葉は気をつけて使うべきだと。
聞いた方が少なからず期待したらそれが叶わなかった時その思いは恨みになるだろう。そんなつもりは無かったとか冗談を本気にしたなんていざこざは嫌というほど知っている。
だからロザリアンヌは少なくとも一度口にした約束は破るべきではないと考えていた。
「まぁ信じるとしよう。明朝連れて行くから用意しておくといいだろう」
「分かったわ。明朝またここへ来ればいいのかしら」
「そうだな裏門で待っている」
ロザリアンヌ達はこうして偉そうな男と約束をすると全員で堂々と屋敷の外へ出る。そして角を曲がるとすぐに認識阻害を使い念のために気配を消すのだった。
これが更新される頃私はお上りさんとなって都内観光をしている予定です
何しろ私の人生の一大イベントですから
書籍が書店に並んでいるのを是非ともこの目で見たいです!
地元にある書店に並ばないのはとても残念ですが、ついでに都内で美味しいものを食べる予定
もし都内の書店で不審な女を見かけても温かい目で見守ってください




