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私は強くてニューゲーム~レア素材を求めて仲間たちと最強錬金旅はじめます~  作者: 橘可憐
4章 天下統一しちゃいますか?! 1部 後宮潜入編

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ガレージのような小さく狭い店舗が並ぶ中にその店があった。

陳列棚(?)に無造作に山積みなった服、壁に飾られた服、天井からぶら下げられている服、とにかくその狭い空間にこれでもかと言う数の服がぎっしりと納められている。


「ちょっとちょっと、変わった服を着てるじゃないか。良かったら見せてくれないかい」


店の主だと思われる年配の女性に声を掛けられ、腕を捕まれたテンダーが店内へと引きずり込まれた。


「えっ、あのぉ、な、なんなんですかぁ~」


言葉の通じないテンダーは店主の強引さに戸惑っているようだった。


「テンダー、そちらのお姉さんに似合いそうな服を見繕って貰いなさいよ」


「良いのかい? 任せておくれ」


「私達の服も欲しいのですが」


「どれでも好きな物を選んだら良いよ」


(えっ、この中から?!)


店主に適当に選んで貰おうと目論んでいたのに、自分で発掘しろと言われロザリアンヌは愕然とする。


ロザリアンヌは前世で百貨店のワゴンセールに参戦した事があるが、殆ど惨敗だった記憶しか残っていない。

熱意激しい購買者達に対抗心を燃やし意欲を持って参戦したが、狙っていた物をゲットするどころか商品を手にする事もできずに終わった。


その記憶があるせいか、山積みにされた商品から何かを発掘する行為には始める前から負けたような気になってしまう。

というか、これだけあるとどう選んで良いかも分からないし、面倒くさいという意識の方が強くなって行く。


(やっぱり自分で錬成すれば良かったかも・・・)


ロザリアンヌが内心で溜息を吐いているとキラルが壁に掛かった服を指差した。


「ロザリーはあれにしなよ」


見ると赤を基調とした物語に出てくる天女が着ているような上品で高級そうな服が飾られていた。


「いやぁ、さすがにあれは違うと思うよ」


どう見ても一般平民が着るような服には見えないソレを着て街中を歩く勇気はさすがに無い。

ゴスロリドレスは良くても、お姫様ドレスを着て街を歩けないのと同じ理由だ。


「さすがお目が高い。あれはさる貴妃様がお召しになっていた物で、なかなか市井に出回る事はないんですよ。今がお買い得。一番のおすすめ品です」


「お買い得って・・・」


(そんな物が本当に出回って良いの? もしかして偽物? というか本物だったら逆にもっとヤバいんじゃ無いの?)


ロザリアンヌだってさすがに後宮の貴妃様の物が市井出回る事の意味は察せられる。

側室の中でも高い地位にある方を貴妃と呼んだ筈。そんな方に縁のある物がこんな場所にある訳がない。

もしこれが偽物なら店主がそれを口にしている時点で犯罪になるだろうし、もし本物だとしたら貴妃様という地位にありながら余程困窮しているかもしくは良くない環境に置かれていると考えられる。

何にしてもこの街にもとても面倒くさい問題が起こっているのだろう。


「ロザリー様。いかがです?」


着替えが終わったテンダーが店の奥から現れる。


「テンダーって女性だったの?!」


静々とした雰囲気で言葉遣いまでお淑やかになったテンダーは、どこからどう見てもとても美しい女性に仕上がっていた。


「えっ、これは女性の服でしたか!」


ロザリアンヌの驚きの言葉にテンダーと店主が同時に反応する。


「女じゃ無かったのかい! 驚いたねぇ。私はてっきり・・・。まぁ似合ってるんだから構わないんじゃ無いかねぇ。それにしても惜しいねぇ。この器量なら後宮にも入れそうなものを」


店主の目が何やら怪しげに輝いている。


「すみませんが普通の服を四人分見繕ってください。安物でも構いませんので」


「折角なのに勿体ないねぇ」


テンダーを見詰めたまま諦めきれないという様子を見せる店主にロザリアンヌは少しだけイラッとする。

しかしこの辺で服屋は他に見当たらなかったし、これ以上時間を無駄にしたくも無かった。


「お礼にテンダーが着ていた服を譲っても構いませんよ」


「それは本当かい?! ああ、任せておくれ」


店主はコロッと態度を変えて、山積みにされた服の中からあれこれと引っ張り出し始め、ロザリアンヌ達に投げて寄こした。


「そこで着替えるのが嫌ならその辺の影で着替えな」


着替え室は無いようで、店主は山積みにされた服の影、店の隅の方を指差した。


「私はこのままで良いですよね。ロザリー様!」


テンダーは今着ている服を余程気に入ったようで、折角店主が新たに選んでくれた地味めの服を手にしたまま首を振った。


「テンダーがそれでいいなら別に構わないけど、本当に良いの? それ女性用の服だよ」


「服に女性用も男性用もありません! こんなに素敵な服を着られる幸せを私は今噛み締めているんです!!」


「そ、そうね」


ロザリアンヌはテンダーの威力に負け何も言えなくなる。


(もしかして私が作った執事見習いの服に不満があったのかな?)


気づくとキラルとレヴィアスは既に着替えを済ませ、すっかり市井に馴染んでいた。

なので、ロザリアンヌも慌てて着替えを済ませると店主がもみ手をしながら寄ってくる。


「着ていた服全部そのまま売ってくれるなら服の代金は請求しないよ」


「いやいやいや、さすがにそれはないでしょう。見れば分かるようにあの服はかなり高価なんですよ」


ロザリアンヌはここに来て重大な事に気がついた。この大陸というかこの国のお金をまったく持ち合わせていない。服を選んで貰ったはいいが、支払うお金が無い。

それにロザリアンヌが安易に譲ると発言したせいで、店主は何かを勘違いしていると思われた。


「ロザリー、その服が何で作られているか素材から説明した方が良いのではないか?」


ずっと黙っていたレヴィアスが何故か前に出た。店主と交渉をしてくれる気になったらしい。


「足下を見たつもりだろうが代金ならテンダーの着ていた服一着だけでも十分すぎるくらいに足りているだろう。あまり欲をかくと私も黙ってはいられなくなる」


交渉と言うより殆ど脅しだった。


「も、申し訳ありませんでした!」


すっかり態度を変え頭を下げた店主とレヴィアスは今度は本当に交渉を始める。


「ロザリー、本当に売ってしまって構わないのか?」


「大丈夫。装備としての機能はインナーの方に付けてあるからそれはただの服よ。それにいくらでも複製できるし」


「店主はこの金額でと言っているがどうする?」


レヴィアスは何を考えてロザリアンヌに聞いたのか店主との交渉結果をわざわざ知らせる。それがどれだけの価値なのかまったく分からないのに。


「えっとぉ・・・」


「でしたらもう少し色を付けさせていただきます」


ロザリアンヌが渋っているとでも思ったのか、店主はさらに金額を上げてくれた。


「うむ・・・」


レヴィアスが顎に手を当て考え込む素振りを見せるので、ロザリアンヌも敢えて何も言わずにいるとキラルが「すぐに売る必要も無いんじゃないの」と言い出す。


「わ、分かりました。これ以上は本当に絶対に無理ですから!」


店主が慌てて最終金額を提示する。レヴィアスはそれに頷き交渉が無事成立となり、ロザリアンヌ達は食べ歩くには十分すぎるお金を手に入れたのだった。



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