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私は強くてニューゲーム~レア素材を求めて仲間たちと最強錬金旅はじめます~  作者: 橘可憐
3章 雪と夜の国

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ロザリアンヌ達が次に見つけたダンジョンは、夜明け前の空がうっすらと明るんだ荒野フィールドダンジョンだった。

人の手がまるで入っていない荒れた大地が自然のままに広がっていて、ロザリアンヌはその広大さに感動していた。


そして何とこのダンジョンはスパイスの宝庫だった。

唐辛子にニンニクにショウガにコショウなどが採取出来るのとは別に、シナモンにクミンにターメリックにコリアンダー、山椒に花椒に八角にクローブなどは魔物達がドロップした。


通常ドロップとレアドロップの違いなのか、魔物を倒してみないとどんなスパイスが手に入るか分からないので、見かける魔物は漏れなく倒す事にした。

中には食材屋でも手に入りづらいスパイスもあったので、貴重なスパイスを少しでも多く手に入れようと採取も討伐にも夢中になった。


そして出会ったその魔物。まだ皮が剥かれる前のひげも残ったトウモロコシ。そのトウモロコシに手足があってスキップするように歩いていたのだ。まるで鼻歌を歌っているかのようにも見える。


ロザリアンヌはもう驚く事もなく即座に瞬間氷結【フリーズ】を発動させる。


ピキピキピキと音を立てて凍るトウモロコシ。そのまま瞬間氷結【フリーズ】の発動を続けるとすぐにトウモロコシは粉々になって砕け散った。


そしてその場に現れたドロップ品は赤い魔石と今さっき倒したはずのトウモロコシだった。とはいっても手足も目もなかったが。


鑑定すると『神々が愛するパン』とあった。


「パン?!」


どこからどう見てもトウモロコシのそれがパンだとは到底信じられず、ロザリアンヌは鑑定に何か間違いがあったのではないかと思う。


「パンってあのパンですか?」


ロザリアンヌの呟きを拾いテンダーが聞いてくる。


「これを囓ったらパンの味でもするのかしら?」


「取り敢えず皮を剥いてみれば分かるんじゃない」


ロザリアンヌの疑問にキラルが答えた。


「そうね」


ロザリアンヌが思い切って皮を剥いてみると、中身はロザリアンヌの知っているトウモロコシではなくて、フランスパンのような形をした表面はナンを思わせる不思議な食べ物だった。

割ってみるとパンと言われればそうだろうと納得するしかない、フワフワと言うよりもちもちとした食パンのようだった。


「パンだね」


「パンだな」


「パンですね!」


キラルもレヴィアスもテンダーも納得したのか頷いていた。

でも何でというロザリアンヌの疑問は残ったが考えても答えが見つかる訳も無く、これもダンジョンの不思議と無理矢理納得する。


「増やせるかどうかやってみるね」


ロザリアンヌはそうは言ったがここまで来ると失敗するなどとは考えてもいないので、迷うことなくパンの種を錬成する。


錬成された種は何故かトウモロコシの粒みたいだったが、構わずに畑を作りそこに錬成した種を植え植物成長促進剤と水を散布する。


そしてみるみるうちに成長していくとそこは、どこからどう見てもトウモロコシ畑だったが、収穫してみると中身はしっかりとパンだった。


ロザリアンヌはその一つを囓ってみる。


「美味しいよ」


ロザリアンヌが今まで普段食べていたパンとは少し違ったが、モチモチとした食感と独特の風味が特徴的で、料理と合わせるというより寧ろこのままで食べても美味しいと思えるパンだった。


「このパンはディップしたりスープに浸すより何かを挟んで食べた方が美味しいかもね」


「サンドイッチですね!」


「バーガーも悪くないと思うな」


キラルとテンダーは既にこのパンをどう料理するか考えているようだった。


「それじゃここを取り込んで貰えるようにお願いに行きましょう」


ロザリアンヌ達は祭壇を探しながら引き続きダンジョンの探索を続けた。

そして見つけた祭壇に神々が最も愛する酒にキノコに果物に貝にチーズに芋に蜜にパンを捧げ手を合わせる。


「どうかこのパンの畑をこのダンジョンに組み込んでください」


ロザリアンヌが祈っていると姿を現したのは、まん丸い青と言うより水色のまるでゼリーを丸く固めたみたいな神だった。


「大丈夫願いは叶えたよ。でもこんなにいっぱい貰っちゃったら他にも願いを聞かなくちゃね。他に何かある?」


他にも願いを叶えてくれるといきなり言われロザリアンヌは返って戸惑った。他の願いなどまったく考えていなかったからだ。


他に願いがないと言えば嘘になるが、ここでこのゼリー神に叶えて貰う願いとなると個人的な願いをするのには躊躇いがあった。

ロザリアンヌは懸命に考えているとゼリー神は「他に無いの? 無いなら消えるよ」と急かしてくる。


「あっ、それじゃこれからこのダンジョンに入る人達の安全をお願いします」


ロザリアンヌが咄嗟に口にしたのはそんな内容だった。


「安全って死なないようにすれば良いって事?」


「そ、そうです」


深く考えて口にした訳では無かったので、ロザリアンヌはツッコまれたまま思わず肯定する。


「死んじゃったら僕でもどうしようもできないけど、瀕死の重傷になった人はダンジョンの入り口に戻すくらいならしてもいいよ」


「是非それでお願いします」


「分かった。じゃぁ僕はもう行くね~」


ゼリー神は手を振りながら姿を消したので、ロザリアンヌはこれで少しはダンジョン探索者の安全を確保できたと喜んだ。


しかし後になってよくよく考えたらゼリー神自身が探索者に手を出さないようにとお願いすれば良かったと思いついた。

ダンジョンには多分そこまで強い魔物は居なかった。だから探索者が余程の無理をしない限り命を落とすような事はないだろう。


もし死に直面するような事があるとしたらそれは、中ボスを倒し手に入れたドロップ品をお供えしなかった場合に受ける神からの鉄拳だけだ。


(だけどまあそれも気をつければ良いのか)


神達は毎日余程楽しみにしているみたいだから、その辺をペナパルポ達に重々伝えておけば問題ないだろうし、それにあの中ボスを倒せる探検者もそうは居ないだろう。


ロザリアンヌは過ぎた事を思い悩むのは止めて、これで八つのダンジョンを踏破したのだと一区切りついた事に安堵する。

そして最後のダンジョンに挑む準備をする為にも一度要塞監獄へ戻ることを決めたのだった。



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