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私は強くてニューゲーム~レア素材を求めて仲間たちと最強錬金旅はじめます~  作者: 橘可憐
3章 雪と夜の国

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「ロザリー様~、びっくりですよ。あの芋、何と生でも食べられたんですよぉ」


テンダーが大騒ぎしながらやって来た。

最近は魔導艇の中にみんなそれぞれ自分の定位置みたいなものがすっかり決まり、ロザリアンヌは案外隅っこに居るのが心地よかった。


魔導艇の隅っこでマジックポーチの中身を整理しながら錬金術の新しいレシピを考えたり、魔法の練習がてらポーションやデバフ玉を作ったり、たまにはダラダラして過ごしたりしていた。

そしてレヴィアスは操縦席、キラルとテンダーはキッチンに居ることが多い。


「生で? 食べたの?」


「サクサクとした食感でかなり美味しいですよ。ロザリー様もいかがです」


テンダーの話から推測するに、生でも食べられるのだとしたら神々が愛する芋はジャガイモとかサツマイモではなく長芋や大和芋の類いだったのだろうか?

でもそうなるとあの芋でお酒は造れるのだろうか?


ロザリアンヌはテンダーが差し出す生の神々が愛する芋を受け取り恐る恐る囓ってみる。

シャクシャクとした食感が意外に心地よく、噛むたびに口に広がる仄かな甘みと香りも悪くない。


「うん、サラダにしても美味しそうね」


「ですよねぇ~」


この神々が愛する芋は今のところどんな料理に使っても美味しいのに、生でも食べられるとなると最強の食材なんじゃないだろうか?


飢えで苦しんでいる時に料理をしようなんて余裕がある人なんてそうは居ないだろう。

ロザリアンヌにはマジックポーチの中に十分な蓄えがあるから困る事などそうそうないだろうが、この大陸には料理をする余裕もなく飢えている人が実際に居たのだ。

この神々が愛する芋はきっとそんな人々の事を考えて作られた食材なんじゃないだろうかとロザリアンヌは考えていた。


「それにしてもよく生で食べる気になったわね」


「だって見るからに美味しそうじゃないですか。私達エルフの森には生でも食べられる芋の方が多かったですよ」


ロザリアンヌには前世の記憶がある分きっと常識に囚われ過ぎているところがあるのかも知れない。それも自分が知っている少ない知識がまるですべて正しいかのように。


見た目がジャガイモだったから生では食べられないと決めつけていたが、この世界での常識はまた少し違うのだとつくづくと実感していた。


考えてみればバナナが色も形も違う果物をドロップしたり、ムール貝からアワビがドロップしたり、枝豆からチーズがドロップしている時点で常識なんてどこかへ吹き飛んでいた。


もっと言えばこの大陸のダンジョンではバナナや枝豆に手足があって闊歩していて、ゆるキャラのような守り神が存在する時点で常識外の不思議ワールド全開だった。

ロザリアンヌは次のダンジョンでどんな不思議に出会えるのかと少し楽しみになっている。


「良い気分転換になったわ。ありがとう」


テンダーにそんな気が回るとは思えないが、実際上手い考えが浮かばずに行き詰まっていたところだったので気分転換にはなった。


封印の祠で唯一倒せないと実感したやたらと大きな亀をも倒せる何かをずっと考えているのだが、コレと言った案がまったく浮かばない。


物理もダメ魔法もダメであの時は匂いで目覚めてくれて戦闘もなく終わったから良いが、またいつ物理も魔法も通じない敵に出会うか分からない。

その時の為にも早いところ何か適切な対策を考えなければならないという焦りばかりが強くなっていた。


危ない液体爆弾や核爆弾など強力な兵器にもなる物の作り方など知らないが、この世界を穢し痛めるような物は作りたくない。


ロザリアンヌの行き詰まりの原因は実はずっと同じところを堂々巡りしているその思考なのだが、その事にロザリアンヌ自身まったく気づいていない。

普段閃きだけを頼りにしているところがあるので、肝心の閃きがないとまったく先へ進めなかった。


「なんだか良い匂いね」


気づくと美味しそうな匂いがロザリアンヌのところへも届き始めていた。さっき中途半端に芋を囓ったせいで、なんだかいい感じにお腹も空いている。


(あれっ、あの亀って匂いが通じたって事はもしかして・・・)


ロザリアンヌは突然の閃きに頭が冴え渡るようだった。次から次へと今まで思いつきもしなかった考えが浮かんでくる。


強力な結界で攻撃が通じないなら結界を無効化できる魔法を考えれば良いし、結界でなく通じないのだとしたら視覚や聴覚に攻撃を仕掛け脳にダメージを与えれば良いのではないか。


(確か前世で見たテレビドラマで音波で物を破壊していたのを見た事がある。アレを武器化できれば・・・)


ロザリアンヌの記憶にはしっかりとあったのに、攻撃手段としての知識にはなっていなかったあれこれが思い浮かんでくる。


そこからのロザリアンヌは早かった。止まらなかった。

そして次々と試行錯誤を繰り返してできあがったのは拡声器型の銃だった。


「ジャ~ン! 拡声器型音波銃よ!!」


ロザリアンヌは片腕を腰に置き作り上げた拡声器型音波銃を大きく掲げる。しかし誰も注目してはいなかったが・・・。


超強力閃光玉も作ってみたが、まず自分たちにも被害が及ぶだろう事を考え秘蔵した。


「次のダンジョンで性能を試さなくてはね」


まさか仲間に向けて試す訳にはいかないので、ロザリアンヌは次のダンジョンが見つかるのを心待ちにしたのだった。



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